武政 洋一 院長の独自取材記事
しぶいこどもクリニック
(大田区/洗足池駅)
最終更新日:2026/10/15
洗足池駅から徒歩5分、閑静な住宅街の中に「しぶいこどもクリニック」はある。2026年9月に同院を承継し院長に就任した武政洋一先生は、大学病院で小児腎臓を専門に研鑽を積み、医学博士も取得した経歴の持ち主だ。専門性を深めるほど目の前の風邪で困る子どもを診る機会が減ることに葛藤を抱え、開業医の祖父の姿を胸に地域医療の道を志した。承継にあたってはクリニック名もスタッフも変えず、通い慣れた患者が安心できる環境を守っている。「人の温かみがあってこその医療」と語る武政院長は、予約の枠にとらわれず柔軟に患者を受け入れ、子ども一人ひとりの意思を尊重する丁寧な診療が印象的だ。新院長としての思いや診療への姿勢について、じっくり話を聞いた。
(取材日2026年9月18日)
祖父、父の背中を追い、子どもたちのそばへ
医師を志し、小児科を選んだ経緯を教えてください。

父が大学病院の耳鼻咽喉科医、祖父が足立区で耳鼻咽喉科を開業しており、祖父の医院の上の階に住んでいました。学校から帰ると駐輪場にはたくさんの自転車が並び、「今日もおじいちゃん頑張ってるな」と思う日々でしたね。祖父は学校医も務めており、地域に根づいた医療を身近に感じながら育ちました。父にも祖父にも、将来の選択肢を狭めないよう「医者にはなるな」と言われていましたが、高3の最後で理工学部から医学部に志望を変えたんです。人に「ありがとう」と言われている2人の姿がずっと心に残っていたのだと思います。小児科を選んだのは、地域医療を実践する祖父の背中を見て育ったことが大きく、未来を担う子どもたちに寄り添うことで、自分も前向きに仕事に向き合い続けられると感じたからです。
大学病院ではどのような分野に取り組まれていたのですか?
東京慈恵会医科大学の小児科学講座で、小児の腎臓を専門にしていました。夜尿症やネフローゼ症候群といった子どもに多い腎臓の病気に力を入れ、埼玉県立小児医療センターでは論文も執筆し、医学博士を取得しました。小児の腎臓を専門とする医師は地域によっては少なく、強みになると実感しています。祖父から「15年は大学でしっかりいろんな病気を診るべきだ」と言われていて、ちょうどその時期を過ぎた頃に今後の道を考え始めました。専門を突き詰めるほど、目の前で風邪に困っているお子さんを診る機会が減ってしまうのではないかと感じ、祖父のように地元で困っている方にすぐ対応できる環境を作りたいという思いから、ご縁をいただいて2026年9月に当院を承継しました。
洗足池エリアと、クリニックの雰囲気を教えてください。

洗足池エリアはとても落ち着いた住宅街で、高層ビルも少なく開放感があります。池には鯉や鳥がいて、大通りに面していないので交通の観点からも安全ですし、子どもを育てる場所としてとてもいい環境だと感じました。駐車場もあり、ベビーカーをご利用の方やお車でお越しの方にも、足を運んでいただきやすい環境です。当院に対する第一印象は「人の温かみがあるクリニックだな」ということでした。承継にあたっては、クリニック名はそのまま残し、もともといた医師もスタッフも全員継続で一緒に働いてもらっています。電話したときに面識のないスタッフが応対すると、やはり患者さんは不安を感じますよね。小さい頃から通ってくださっている方も多いので、顔なじみのスタッフがいつもいるという「変わらない安心感」を大切にしています。
人の温かみを大切に、地域の子どもに寄り添う診療を
どのような診療をされていますか?

地域に根づいたクリニックですので、健診やワクチンで定期的に通ってくださる方が多く、発熱や咳などの急性疾患も多いですね。特徴的なのは、臨床心理士による小児の発達検査や相談ができる体制があることです。最近は5歳児健診が新たに始まりましたが、3歳児健診の後から小学校入学までの間にお子さんの発達をしっかり評価することはとても大切だと考えています。臨床心理士がいることでデータに基づく評価ができますので、この環境は引き継いでいきたいですね。今後は私の専門である腎臓の知識を生かして、夜尿症や頻尿などにも対応していきます。アレルギーも大学病院で多く経験してきましたので、アトピー性皮膚炎のお薬の塗り方や使用量を丁寧にお伝えしながら診ていきたいと思っています。
お子さんの診療で大切にされていることを教えてください。
自分の中では、医者と患者という関係ではなく、「パパになったような気持ち」で接することを意識しています。子どもはいろいろな大人を見て育っていきますから、教育者や一人の人間として良い影響を与えられるよう、振る舞いに気を配っています。大切にしているのは、お子さんの意思を尊重することです。例えば検査の際にも「これをやると治療ができるけど、痛いよ」と本人に説明して、やるかどうかは本人の意見を優先するようにしています。治療方針についても、自分は選択肢を提示して、お子さんや保護者の方が選んだ方針にできるだけ沿っていきたいと考えています。お薬の効き方や味の好みもお子さんによって違いますので、一人ひとりの情報をしっかり記録して、その子に合った対応ができるよう心がけています。
保護者の方への対応で工夫されていることは?

どの診療でも最後に「他に何か質問や相談したいことはありますか?」と必ず声をかけています。ちょっと不安があったのに言えずに帰ってしまった、ということがないようにしたいんです。保護者の方がお子さんの前では話しにくそうな様子であれば、お子さんに外で待ってもらい、一対一でお話しする場を設けるようにしています。看護師も事務も2人ずつ配置していますので、看護師がお子さんを見ている間に安心してご相談いただける体制です。受診についても、困ったらまずお電話いただければ、予約が埋まっていても柔軟に対応します。「つらいよね、大丈夫、来られそう?」といった声かけを含め、人の温かみがあってこその医療だと思っていますので、人と人とのやりとりは大切にしていきたいですね。
困ったときにまず頼れる、家族と歩むかかりつけ医
地域のかかりつけ医として大切にしたいことを教えてください。

「ひとまずここに来れば大丈夫」と信頼していただけるクリニックでありたいですね。病院での検査が必要であれば紹介しますし、入院の判断が必要ならその判断もします。最初の相談窓口として、お子さんの状態を見極める役割を担っていきたいと考えています。そのために月曜から土曜まで毎日診療にあたっています。担当医が変わると話がずれてしまうこともありますから、いつ来ても同じ医師が対応できるという安定感は大事ですよね。それから、小児科ではありますが、同居しているご家族もなるべく一緒に診るようにしています。例えば親御さんがインフルエンザの場合、お子さんにも感染の可能性がありますので、一緒に来ていただいたほうがスムーズに対応できます。
今後、どのようなクリニックでありたいとお考えですか?
いま診ているお子さんが将来親になったときにも頼っていただけるような、親子2世代、3世代にわたって関わっていけるクリニックをめざしています。そのためにも、医療の知識は常にアップデートしていかなければなりません。診療中に浮かんだ疑問はメモしておいて、休日に新しい論文を調べ直し、新しい知見を日々の診療に還元しています。プライベートでは2人の子どもと公園でキャッチボールやボール蹴りをして過ごすことが多いですね。お互いの顔を直接見ながら「最近どう?」と話せるのが楽しいです。診療でも家庭でも、目の前の相手としっかり向き合うということが、自分にとっては一番大切なことなのだと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。

病気のことだけでなく、発達のこと、日頃のちょっとしたしぐさや子育ての悩みなど、医療の枠を超えたことでも何でも気軽に相談していただきたいと思っています。保護者の方もいろいろな悩みを抱えていることがあると思いますし、それが知らず知らずのうちにお子さんに影響することもありますから、どうか遠慮なく話してください。中学生くらいのお子さんには、一人で診察室に入ってもらうこともあります。風邪で来ただけに見えても、学校のことで悩んでいるかもしれない。親御さんには言いにくいことも安心して話せる場でありたいと思っています。お子さんが大人になったときに「小児科の先生だ」とふと思い出してもらえるような、成長に関わる一人の大人でいられたらうれしいですね。

