高野 正博 院長の独自取材記事
たかの歯科医院
(柏市/柏の葉キャンパス駅)
最終更新日:2025/03/13

つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅から車で8分。「たかの歯科院」は、2008年の開業以来、虫歯・歯周病の根本的な予防に力を入れ、訪問歯科診療なども通じて地域の人々を支えてきた歯科医院だ。院長は、地元出身で、優しい笑顔があふれる高野正博先生。患者・スタッフを問わず、関わる人の幸せにつながる歯科医院でありたいとの願いを込めて、医療法人の名前には、イタリア語で「幸せな人生」を意味する「Vita felice(ヴィータフェリーチェ)」とつけたという。高野院長に、力を入れている取り組みや思いを聞いた。
(取材日2025年2月14日)
虫歯・歯周病予防の基本は習慣の改善
特に予防に力を入れておられると聞きました。

虫歯・歯周病にならないように生活習慣改善のためのアドバイスやサポートを行っています。虫歯や歯周病は、生活習慣病の一種ですからね。もちろん歯磨き指導や、虫歯リスクが高い人には歯にフッ素塗布なども行っていますが、これらは全部、後から足すものです。例えば、糖尿病の予防を考えるなら、まず糖質を控えるでしょう? それと同じで、虫歯・歯周病の予防には、甘い物を取る頻度や食べ方といった習慣の見直しが最も重要だと考えています。良くない習慣がある状態のまま、歯磨きやフッ素塗布を行うことは、いわばアクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるようなものですからね。そんな状況をなるべく減らしたくて、習慣を見直すという本当の意味での予防を考え、そこに力を入れています。
「できる限り治療をしたくない」ともおっしゃっていますね。
そのとおりです。歯は治療を重ねる度にダメージを重ねていくので、できる限り治療はしたくありません。なので、そうなる前に、生活習慣の見直しなどにより予防できることはたくさんあると思うのです。患者さんとお話ししていく中で、何かできることがないのかと常に考えています。また、治療は、マイナスをゼロに近づけるものだと思っています。まだまだ世の中には、「虫歯になったら治せばいい」と考える人もたくさんいます。ですが、足をなくして、義足をつければ元どおりとは言えないのと同じで、一度マイナスになると治療してもゼロには戻りませんよね。一方、予防はゼロを維持することです。地味で、なかなか実感しづらいですが、ゼロを維持するのはすごいことなんですよ。このゼロを維持し続けることのすごさを、多くの方に知ってもらえれば、大切にしてもらえればと思っています。
まずは、治療が必要にならないことが大切なのですね。

はい。ただ、虫歯にならないは最終目標ではありません。歯を大切にするのは、そうしなきゃいけないからではなくて、おいしくご飯を食べるため、おいしい物を食べて幸せを感じるためといった、大切なもののためだと思うんですよ。患者さんに来院理由を聞くと、皆さん「歯を治療したいから」「虫歯にならないように」などと答えますが、その先には大切にしているものがあるはずなんです。僕はその、それぞれが大切にしているものを大事にしていきたいと思っています。大好きですごく食べたい物があるのに食べられない状態なら、どうすれば食べられるかを考えていきたい。当院の仕事は、人生の幸せのお手伝いをすることです。そのイメージを持ちながら働いてほしいと、スタッフにも常に話しています。
関わる人みんなの人生の幸せをサポートしたい
スタッフをまとめていく上で、大切にしていることはありますか?

一番大切にしているのは、安心・安全な場であることでしょうか。人が集まる以上、人間関係のストレスはどうしてもありますが、一人ひとり違う役割を担っている同士。お互いを尊重しながら働いてほしいと、いつも伝えています。また、思いを共有するために、歯科医院として何を大事にしたいのかは、いろいろな場面で繰り返し話していますね。なお、人生の幸せをサポートする場所でありたいというのは、患者さんに対してはもちろん、スタッフに対しても同じです。組織のために頑張るというよりは、自分で考えた人生の目的や目標に向かう中で、当院が必要ならうれしいですね。専門家を呼んで院内でスタッフ向けセミナーを開いたりもするんですが、仕事のためになることより、例えばNISAなどプライベートの充実に役立つものも多いです。当院で働くことが、スタッフの人生の幸せにもつながればいいな、関わる人みんなが幸せになったらいいなという思いです。
現在の診療体制についても教えてください。
歯科医師は、僕と週に3回来てもらっている女性の先生の2人体制です。うちに5年以上来てくれていて、どんな治療も真摯に、一生懸命に行ってくれる先生ですよ。また、管理栄養士さんと一緒に、患者さんの食生活について聞き取りをして、生活習慣改善のためのアドバイスとサポートを行う体制づくりも始めています。
院内の設備やデザインのこだわりについてもお聞きしたいです。

診療室は5つあって、開放感とプライバシーへの配慮を考えてどれも扉がついています。椅子が並んでいて、ついたてだけで区切られているのでは、プライベートな話はしにくかったりしますからね。キッズルームは、親御さんの目が届きやすいように、待合室ではなく診察室の中に設置しました。あと、患者さんとスタッフの動線がなるべくかぶらないように設計しています。スタッフは大変だと思うんですが、患者さんには、スタッフが走り回っているところが見えない分、落ち着きや安心を感じてもらえるかなと。いわゆる、昔ながらの歯科医院の感じではなく、できる限り患者さんに恐怖心やストレスを与えない、安心できる場所、安全な場所でありたいと思ってこのようになりました。
訪問歯科診療を通じて地域医療を支える
院外でも、歯の健康や予防の大切さを広める取り組みをされているそうですね。

歯科医師会の啓発活動に協力したり、セミナー講師やアドバイザーとして、予防の大切さを広めていこうとしている先生のサポートをさせてもらったりしています。患者さん向けのセミナーなども頑張っていたんですが、興味を持って来てくださるのは、既に十分な知識があって行動されている方がほとんどで。私個人だけでは、予防の大切さを知ってほしい方たちに情報を届ける難しさを感じたのがきっかけです。予防の大切さを広げたいけれど、治療費の伝え方、スタッフとの関係性などで悩んでいる先生たちをサポートしています。素晴らしい理念を持って、予防を広める活動をしてくれる先生が増えれば、その分多くの方に情報を伝えられると期待しています。
訪問歯科診療もなさっているのですね。
はい、開業時からずっと続けています。「生まれる前から高齢者になっても、地域の皆さまのお口の健康サポートをする」というのが当院のコンセプトですからね。診療日であれば毎日の昼休みに、そして休診日の木曜も訪問歯科診療に出かけています。エリアは柏市が中心ですが、近接する流山市や松戸市に行くこともありますよ。僕も多職種連携協議会に参加していますし、柏市は在宅医療などの地域医療がとても充実しています。医療・介護のさまざまな職種がスムーズに連携を取れる仕組みがあり、患者さん本人の意思を尊重した医療・介護を実践しようとしていて、すごく幸せな地域だなと思います。歯科は、各科で連携する医科と違って連携に慣れていない人もまだまだ多いのですが、多職種が連携することで、患者さんに対してできることも増えていくのではないでしょうか。そんな経験が共有され、柏市のような連携が取れる地域が広まっていくといいなと思っています。
今後の展望について教えてください。

患者さん一人ひとりの食習慣改善のためのサポートなどを通じて、当院を、単なる歯科医院ではなく、「あそこに行けば、私の幸せのために何が大切か考えてくれる」と思ってもらえるような場所にしていきたいと思います。僕らが行うのは、指導ではなくサポート。習慣を変えるには、自分で気づいて、自分で行動してもらわないといけないので、コーチングスキルがすごく重要になりますね。うちのスタッフみんなコーチングができるようになったとしたら、患者さんとよりいい関わり方ができるのではと。歯科衛生士も管理栄養士も、それぞれの職種でできることを考えて、実現していきたいですね。究極の目標は、健康な人がメンテナンスに通って来てくれて、僕は「最近調子はどうですか?」とあいさつするだけになること。歯科医師が働かない、困っている人がいない世界が一番いいんです。