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亀谷宜隆 副院長の独自取材記事

亀谷内科クリニック

(川崎市中原区/向河原駅)

最終更新日:2021/10/12

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック main

向河原駅から歩くこと約10分、中丸子の街の中ほどに立つ「亀谷内科クリニック」を訪ねた。大きな窓から明るい光が差す待合室には、かわいらしい手作りの置物や写真立てが並び、まるで家庭のリビングのような温かさに満ちている。同院は、亀谷麒與隆(かめがや・きよたか)院長が、慶應義塾大学病院の客員教授を務めた後、「地元に恩返しを」と1996年に開業。中丸子のホームドクターとして、生活習慣病の予防も視野に入れたトータルサポートを行うクリニックとして、お年寄りから子どもまで、地域に親しまれている。2006年から副院長を務める亀谷宜隆先生にお話を伺った。

(取材日2014年7月14日)

来院者の手作り作品が迎えてくれる、笑顔がテーマのクリニック

開業するにあたって、中丸子を選ばれた理由を教えてください。

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック1

ここは先祖代々何百年も住んできた場所なんです。開業したのは内科医で慶應義塾大学病院の客員教授だった父ですが、都立病院副院長と慶応の教授職を引退後、地元に何か還元したいとの思いから、この場所で診療所を開くことを選んだそうです。当院は、大学病院や医療センターからの紹介の患者さんももちろんいらっしゃいますが、基本的には地元の方たちがちょっと調子が悪い時に来る「町のお医者さん」。私の小さい頃をよく知っているような近所のおじいちゃん、おばあちゃんも来てくださっています。近くにはクオリティーの高い病院や診療所がいくつもあり、内視鏡検査ならここ、精神科ならあそこという風に、連携がしやすいのもこの地域の良いところです。

院内のあちこちに手作りの小物や絵が飾られていて、とても温かな雰囲気ですね。

ありがとうございます。ここにあるのはすべて、患者さん達が御自分の作品を持ち寄ってくださったものなんです。ありがたいことに皆さんが次々と持ってきてくださるので、今ではこんなにたくさんになりました。暗い検査室でコンクリートの壁を見ながら検査を待っていると、緊張してきてしまいますよね。なるべくコンクリートの壁を少なくしたいと思って、そこには軽井沢や富士などのきれいな風景画や鉄道写真など想像の中だけでも旅行気分を味わえるような作品を飾っています。どんな検査でもそうですが、緊張した状態だと消化管など内臓の動きも悪くなるんです。けれど笑ってくれた人で、検査がうまくいかない人はまずいません。院内ではまずニコニコしてもらえる環境づくりを大事にしています。

クリニックの診療の特徴は何でしょう。

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック2

先ほどのニコニコできる環境に加え、患者さんとゆっくりお話すること、でしょうか。診療結果を患者さんにご説明する時には、一番大事なポイントをピックアップして、それをわかりやすくお伝えすることを心がけています。というのも、高血圧、糖尿病、高コレステロールなどに代表される生活習慣病は、体のエネルギー収支に起因する内臓脂肪蓄積の問題であることが多く、何をどれだけ食べてどれだけ体を動かせばいいのか、きちんと知っていただいた患者さんの方がよくなるからです。それでも間に合わない部分は薬で補いますが、最終的には薬をなるべく少なく、または使わずに健康が保てるのがゴール。そこをめざして的確に説明し、わかっていただけることが重要です。 まずお話を聞き、その中からポイントを掴んで的確に診断し、必要があれば各科専門医のネットワークを使って意見を聞きながら、生活習慣、運動や食事の指導もしっかりして、薬を最小限的確に使う。そういう基本通りの地道な医療を行っています。

北海道での無医村巡回医療を原点に、大学病院から開業医に

先生が医師をめざされたきっかけを教えてください。

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック3

小さい頃から面倒見がいい性格だったようで、クラスでの立ち位置は「お世話係」。特に意識して用意していた訳ではないのですが、いつも絆創膏やティシュを持ち歩いているような子どもでした。自然、けがをした友人の手当てをする機会も多く、「将来はお医者さんになってくれるといいな!」と周りから声をかけられるうちに、ついその気に(笑)。もちろん内科医である父の影響もあったと思います。周囲の大人たちからの無言の期待も感じていましたが、それを嫌だとは思わなかったので、向いていたんでしょうね。卵が先か鶏が先かという状態ですが、ごく自然に医師になるという道を選びました。

慶應義塾大学医学部に進まれたわけですが、大学時代はどのような生活でしたか?

授業の出席を取らない大学ですので、好きな研究室に出入りして論文を書かせてもらったり、オーケストラでチェロを弾いたり、腰を痛めるまでの短い期間でしたがラグビーをやったり、ダイビング旅行や様々なスポーツをしたりと、サークル活動にも力を入れました。いろんなことをやってみたい方で、これは今も同じです。専門医として一つの分野を深く掘り下げるだけでなく、その深い理解を活かして実は全身を診られるというのが強みです。また夏休みの恒例の活動で公衆衛生学研究会として行っていた北海道の無医村地帯を回る巡回医療は、今のプライマリケアのベースにもつながっています。例えば、ここで経験した眼底カメラでの検診は、目の血管の状態を外側から直接観察できるので眼科疾患だけでなく動脈硬化や糖尿病などの診断にとても有用ですが、普通の内科ではあまり行われていません。今、内科でありながら眼底まで診られるのは、当時の体験があったからこそ。他にも、五感を使って診る診療手法や家族ぐるみでしっかりお話を聞くことを基盤とするメディカルインタビューの仕方も、ここが原点になっていると思います。

卒業後は、大学病院で専門医としての経験を積まれました。

ええ。そのまま慶應義塾大学病院に勤務し、消化器内科の中でも肝臓の専門医を選びました。1993年に大学を卒業して、3年後の96年には肝臓学会大会のシンポジウムに出るぐらい、ひたすら肝臓と向き合う日々でした。大学院を経て、東京医療センターでも消化器病の中でも肝臓疾患を担当して、おそらく日本の肝臓専業医の中でも年間の診療数が多い医師の1人だったと思います。2000年から博士研究員として米国ボストンのマサチューセッツ総合病院/ハーバード大学医学部に勤務し、6年間肝臓病の研究を進めました。主にC型肝炎動物モデルからの発癌の研究をして、論文がアメリカ肝臓学会AASLDのtravel awardを頂いたり、Hepatology誌の表紙になったこともあります。

大学病院での肝臓専業医から開業医に転向されたきっかけは何でしょうか。

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック4

実は、マサチューセッツ総合病院へ行く前は開業しようとはまったく思っていなかったのです。でも、向こうの教授や同僚たちは、アカデミックなキャリアを積む一方で最終的には自分のオフィスを開きたいという人がほとんどで、しかもプライベートも重視して時間の流れがゆったりとしていました。その影響を受けて、自分のペースと適性とを考えた時に、地域に根ざした総合的な診療−プライマリ・ケアをベースに、患者さんを診ながら、平行して臨床研究も行っていくというスタンスが向いているように思いました。当時すでに父が開業していてせっかくいい拠点もあり、丁度帰国の時期に父が体調を崩していたこともあり、じゃあ2人で一緒にやろうかという話になりました。

病気を正しく理解して、生活習慣病の予防を

米国でのご経験は、どういうふうに生かされているのでしょうか。

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック5

まず診察ですが、最初の段階から雰囲気が違っていて、医師が自分で待合室まで患者さんを呼びに行き、握手を交わして今日はどうだという話をしながら部屋に招いて話をする仕組みでした。その温かい人間関係をとても心地よく感じましたので、当院でも同じように私が待合室まで出て行って、歩くのが難しい人は手を引いて、話をしながら診察室や検査室に招き入れる、というスタンスにしています。患者さんの歩く姿も見られるし、上から下まで五感を使って診察ができますしね。匂いや感触も大事な診察の一部です。もう一つはやはり人間関係です。肝臓・消化器に関しては世界最先端の知識や研究方法を開発している人たちとネットワークが作れました。今はインターネットで自由にディスカッションもできるので、日本だけにとらわれず世界の知識も取り入れた治療ができるし、治療が難しい患者さんと海外医療機関の橋渡しができることもあります。また日本国内にも大学の枠を超えて親しい友人ができました。彼らからさまざまな意見を聞けるのも大きな財産だと思います。

診療の際に特に気にかけていることは?

まずはリラックスして話していただきやすい雰囲気を作ることでしょうか。小さいことでは診察室で座る位置やカルテの説明方法などですね。診療結果の説明の際は、診察室ではパソコン、検査室ではiPadを利用して、ご自身の情報を一緒に見ていただきます。入力も目の前で行い、わからない所はどんどん質問してもらって、その場で説明するようにしています。診察情報管理に使っているのは、経済産業省の公募事業で開発されたオープンソース電子カルテのDolphin というソフトです。フリーウェアつまり無料なので、今はまだプライバシーやセキュリティーの問題で実現していませんが、将来的には患者さんが自宅のパソコンに同じソフトをダウンロードして、情報を共有できるようになるだろうと思っています。そのシステムがいつ実現しても、当クリニックではすぐに患者さんにカルテのデータをお渡しできる準備が出来ています。

ふだんから実践されている健康法などはありますか?

通勤や都内の移動には、できるだけ自転車を使ったり、走ったりしています。アメリカにいた頃は、1年に1kgペースで太ってしまったこともあり(笑)、意識的に体を動かすようになりました。自宅からクリニックまでは約13kmなので、週の半ばは走って通勤しています。どうしても辛くなった時のために、パスモは持っていますが、交通手段を上手く使い分けて体を動かすことは、運動療法の一環として皆さんにもお薦めしています。

今後の展望をお聞かせください。

亀谷宜隆副院長 亀谷内科クリニック6

プライマリ・ケアで重要なのは、異常を早く見つけて治す事だけでなく、病気を未然に防ぐことです。今一番よくお渡ししているのは、食事や運動療法、減塩などに関する生活習慣病のパンフレットです。まずはしっかり理解していただいて、病気になる前に防げたらと思っています。当院では、川崎市指定特定健診やがん検診も受け付けていますが、その結果がんがなければOKで終わらせるのではなく、10年後、20年後の病気も予防することを考えて診療を行っています。現在、市民講座などで、運動療法や食事療法などについて定期的にお話しているのですが、今後さらに生活習慣病を未然に防ぐこのような指導を充実させていきたいですね。そういう活動を通じて、クリニックに来てくれている人はもちろん、そうでない人の健康にも役立ちたいと思っています。

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