米倉 雅之 院長の独自取材記事
よねくらクリニック
(芦屋市/芦屋駅)
最終更新日:2022/02/03

JR神戸線の芦屋駅の改札を出てすぐ、モンテメール西館5階の医療モールに「よねくらクリニック」はある。整形外科・リウマチ科・麻酔科・リハビリテーション科を掲げ、駅前で便利なこともあり、子どもから高齢者まで患者層は幅広いという。「勤務医時代の初期に麻酔科医師として手術麻酔管理や救急医療、ペインクリニックに携わった経験を生かし、患者さんの痛みを軽減し、日常生活レベルをアップさせることが私の仕事です」と語る米倉雅之院長。その人柄はとてもフランクで、飾らない雰囲気が患者をリラックスさせてくれそうだ。骨関節・筋肉など運動器の疾患や外傷を中心に治療を行うほか、高齢者の骨折予防にも注力している米倉院長に、骨粗しょう症や変形性関節症などの疾患や今後の展望などについて聞いた。
(取材日2019年6月6日/再取材日2022年1月17日)
患者を知り診断・治療を行いたいと、麻酔科から転向
クリニックを開業したのはいつですか?

2007年3月にここの医療モールと同時にオープンしました。この医療モールは整形外科・内科・皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・心療内科などがあり、総合病院のような形態をイメージして造られていて、総合受付で受付をし、クリニックに来ていただくようになっています。複数の診療科を同時に受診できるので、とても便利です。
大学を卒業してから開業までの経緯を教えてください。
神戸大学を卒業後、大阪大学麻酔科に入局し関連病院で全身麻酔管理、救急医療・集中治療、ペインクリニックを学びました。その後、整形外科の医師に転身し、大阪大学の関連病院にて一般整形外科・外傷・小児整形外科・スポーツ障害・リウマチなどの分野でさまざまな経験を積ませていただきました。市立芦屋病院で整形外科部長を務めた後、クリニックを開業しました。麻酔科では全身管理を学び、ペインクリニックでは痛みの機序や治療を学びました。整形外科では痛みを訴えてこられる患者さんも多く、これらの経験が診療に生かされていると考えています。医学は日々進歩していますが、自己研鑽を積み、地域の基幹病院と連携を取り、患者さんに必要な医療提供ができればと考えております。
麻酔科から整形外科に転向したのはどうしてですか?

麻酔科でさまざまな手術に関わる中で、それぞれの医師が可能な限り手を尽くしている姿を目の当たりにし、中でも多くの疾患を手がける整形外科に興味が湧いてきたからです。整形外科には体育会系気質の医師が多く、私もスポーツが好きなので合っているのかなとも思いました。麻酔科では手術中の患者さんの安全性を確保し、ペインクリニックでは神経ブロックなどの手法を用いて治療を行います。しかし、患者さんと直接話をして診断を下し、治療方針を立てるということはありません。新たに来られた患者さんを一から診ていきたいという思いから整形外科に興味を持ったというのも転向した理由です。
患者層は幅広いのですか?
中高年の患者さんが多いですが、幼児や小中学生、高校生、大学生、社会人の方もけがや骨折・捻挫などの外傷、スポーツ障害などで結構来られます。開業当時から子どもたちをよく診ていたんですが、15年間診療しているとさまざまな再会があります。開業した頃は5歳くらいで、けがをしてはよく治療に来ていた子が、久しぶりに来たと思ったら高校生ぐらいになってすごく大きくなっていて、びっくりするということもありました。最近も、子どもの時に診ていた子が成人して、仕事先の淡路島から何度も来院してくれたり、海外留学からの帰省の際に来院してくれたりして。受診してくれたうれしさと成長を見て喜びを感じています。
骨粗しょう症治療に注力、高齢者の骨折予防をサポート
診療において心がけていることは何ですか?

基本的には患者さんの抱えている問題をしっかり解決してあげるということですね。運動器疾患の場合は、投薬療法、リハビリテーションなどの理学療法的アプローチのほか、関節内注射や神経ブロック療法などの注射療法を行います。膝が痛いということであれば、治療をして痛みの緩和をめざし、中高生で運動時にけがをしたということであれば、早くスポーツに復帰できるように治療をしアドバイスをしてあげる、など患者さん一人ひとりのニーズに合わせた治療を心がけています。整形外科に来る患者さんはどこかしら痛みを抱えて来られる方がほとんどなので、その痛みをできるだけ早くとってあげるために治療を行うようにしています。
骨折予防についても力を入れていると伺いました。
中高齢者における骨粗しょう症による骨折とは、日常生活レベルにおける転倒による骨折、または、いわゆる「いつの間にか骨折」などです。手関節、肩関節、背骨や大腿骨の付け根などに骨折を生じたりします。これらの骨折ではQOL(生活の質)の低下だけでなく、生命リスクの増大にも直結することがあります。骨粗しょう症においては予防が重要ですので、早期に発見し進行程度に応じた適切な治療方針を立てることが大事です。当院では2年前にDEXA法を用いた骨密度測定を開始しました。従来使用していた超音波などよりも精度、再現性に期待ができ、治療においてたいへん役に立っています。特に中年以降の女性や高齢男性においては、定期的に検査し、注意していく必要があると感じています。
中高年層では変形性関節症の方も多いと思いますが、治療についての考えをお聞かせください。

変形性関節症については、今までならヒアルロン酸注射をして、それでも駄目な場合は人工関節の手術に進むということが一般的です。近い将来、その間のステップとなる治療法の研究が進むことが期待されます。患者さんの中にはやはり手術に抵抗を感じている人も多いので、治療法の選択肢を増やして、適応する患者さんに手術を受けずに楽になっていただけたら、と思っています。
具体的にはどのような方法なのでしょうか?
患者さんの血液を採取して、そこから血小板を多く含んだ血漿を抽出するようなものです。自分の血液中に含まれる血小板の成長因子が持つ組織修復能力を利用した方法ですね。血小板には、成長因子を出して損傷部分を修復する働きがあると考えられています。主に筋・靭帯などの組織修復を促すための治療に応用されることが期待されます。
患者のニーズに対応できる“頼れるクリニック”に
医師をやっていて良かったと思うのはどんな時ですか?

勤務医時代に治療をした子どもさんが「先生みたいなお医者さんになる!」って言ってくれたり、パスポートを取りに行った先の受付で「米倉先生ですよね? 息子が骨折した時に先生に手術してもらったんですよ」って声をかけられたり。「先生に出会ってから『僕も医者になる』って言って、すっごく勉強してました」なんてこともありました。そんな話を聞くと、医師をやっていて良かったなと思いますね。子どもたちがそう言ってくれるというのはうれしいことです。もともと子どもが好きなので、お子さんも気軽に来れる雰囲気づくりをスタッフとともに大切にしています。
休日はどのように過ごしていますか?
学生時代はサッカーやテニスをしていましたが、今は合間を見つけてはテニスをやっています。最近は中高齢のスポーツも盛んで、多くの方と一緒にプレーしています。自分自身でもテニスをすることで健康が保たれていると思います。そのほかに、中学生、高校生時代に少々かじったギターのレッスンを受けています。10年程度続けていると趣味を通じて職種や年齢など問わない仲間ができて、いろいろな人の話を聞くことができ、一時的に仕事を離れて活力を取り戻すことができます。
今後この地域でどのようなクリニックでありたいと考えていますか?

開業当初は、自分のしたい治療、やってきた治療をすると考えていましたが、日時を重ねるにつれ「当院を受診してくれる患者さんの求めに応じた治療を提供しなければ」と考えるようになりました。例えば、患者さんの多くは普段から仕事に追われる毎日で、学生さんも勉強やスポーツ活動などに多忙で、病院を受診する時間は限られてしまいます。自分も大規模病院を受診できるかどうかを考えると、そのような時間はほとんどありません。当院のような駅近でアクセスの良いクリニックが医療を受ける際の入り口となり、ここでできない手術や検査は大きな病院へスムーズに紹介するといった、医療のすみ分けが大事だと思っています。今後も一層力を入れて地域の皆さまの健康維持をお手伝いしていきたいと思います。