坂尻 光春 院長の独自取材記事
野田阪神坂尻歯科
(大阪市福島区/野田駅)
最終更新日:2025/04/04

「野田阪神坂尻歯科」は、その名のとおり阪神本線・野田駅から北東へ3分ほど歩いた、事業所やマンションの立ち並ぶ一角にある。平日は夜19時半まで受けつけ、土曜日の午後も診療を行っており、働き盛りの世代にも受診しやすい。「虫歯や歯周病は生活習慣病でもあるのです」と語る坂尻光春院長は、再発予防のために口の中の清潔と歯磨きの大切さを訴える。特に、手入れの難しい歯と歯の間は専用の歯ブラシを使った歯磨きの仕方を紹介し、診療のたびに歯科衛生士によるブラッシングも行うとのこと。また坂尻院長は、長年の経験から「歯科医師の常識にとらわれない」ことも大事にしている。坂尻院長が心がける「抜かない、入れない」歯科診療とはどういうことなのか、また正しい歯磨きの方法についても詳しく聞いた。
(取材日2018年6月12日)
正しい知識とテクニックを身につけてほしい
駅から近く、歩道に面したアクセスしやすい歯科医院ですね。

実は、以前には高層ビルのクリニックモールで開業していたこともあるのですが、受診される患者さんの年齢層は限られていました。ビル内で働くビジネスパーソンだけ、しかも皆さん60歳になると退職するので、いなくなってしまいます。もう少し幅広い年代、特にご高齢の方の治療がしたいと思っていたこともあり、2006年からはこの場所に移って診療を続けてきました。駅から近いので、お勤め帰りの方も来ていただきやすいように、夜は19時半まで受付していますし、土曜日の午後も平日と同じように診療しています。その代わり、朝は10時からと少し遅めですね。実際に、患者さんは夕方になるほど増えますので、「朝はゆっくり昼はのんびり、暗くなってから気合が入る」といったところでしょうか(笑)。
では、今はどのような患者さんが受診されていますか。
駅から近いのですが、周囲は昔からの住宅やマンションが混在しています。このため患者さんは中高年が中心ですが時にはお子さんも受診されるなど、幅広い年代の方が来られています。以前診療していた場所ではほとんどなかった入れ歯の治療も多く、患者層の違いを感じますね。今後、この周囲ではさらに大型のマンションが建設されるようですので、患者さんの年齢構成はまた変わっていくかもしれません。
治療内容と診療方針をお聞かせください。

さまざまな治療に対応していますが、特に予防には力を入れています。内科疾患で使われることの多い「生活習慣病」という言葉がありますが、虫歯や歯周病も、生活習慣病だと思っています。せっかく治療してもその後のケアが不十分であれば再び悪化して治療、の繰り返しになり、いつまでたっても終わりがありません。きちんと歯を磨いてもらって、虫歯であれば再発がないように、歯周病はできるだけ進行しないようにしてほしいのです。だから患者さんには、なぜ口の中がこのような状態になってしまったのか、言い換えればどうして受診が必要になったのかを理解してもらいます。そして次からはそうならないように、正しい知識とテクニックを身につけていただきたいと願っています。
歯と歯の隙間を清潔に保つテクニックを伝える
正しい知識、とは具体的にはどういうことでしょうか。

歯磨きがきちんとできていない方が、非常に多いと感じています。皆さん「ちゃんと磨いていますよ」と言われますが、歯科医師の目でみると、案外磨けていない。特に、歯と歯の隙間が磨けていません。口の中を清潔に保つことで、虫歯や歯周病をはじめ多くの病気の予防につながります。歯科衛生士という職種がありますが、その重要な仕事の一つに、患者さんの口腔内を清潔に保つことがあります。看護師の創始者であるナイチンゲールが、クリミア戦争でイギリス軍の野戦病院を訪れた際、最初にしたのは院内の掃除だったそうです。彼女は院内を清潔にすることの重要性を知っていたのです。歯科でも「歯科衛生士」という職種があるぐらい、口の中を清潔にするのは重要であることを患者さんに知ってもらって、再び虫歯や歯周病にならないためにはどうすれば良いのか、正しい知識を持っていただきたいのです。
歯磨きのテクニックについて教えてください。
歯と歯の隙間を磨く道具として、歯間ブラシやデンタルフロスがあります。歯茎が腫れている方も、隙間を磨くことでだんだん歯茎が引き締まっていきます。ですが、患者さんはこれらを使う重要性は理解するものの、実際に毎日使って磨くのは手間がかかり、なかなか習慣になりません。そこで、「つまようじ法」という歯ブラシで歯と歯の隙間も磨く予防法を取り入れており、当院では「つまようじ法」専用の歯ブラシを紹介しています。この歯ブラシはブラシの先が細く寄せ気味に植毛されているので、ブラシを歯と歯の隙間に差し込んで磨くことができます。コツは、歯ブラシを隙間に突き刺し、歯の表面を磨くときのような横移動はせず、抜き差しだけを繰り返すことです。
慣れるまではちょっと難しそうです。

患者さんにもよく言われます(笑)。だから当院では、診療のたびに歯科衛生士がこの専用の歯ブラシを使って、患者さんの歯を磨いています。特に大人は、歯磨きの方法について今さら注意されても良い気はしませんよね。また、注意を受けることが苦痛になる方もいて、こちらが熱心に指導すればするほど、患者さんの心が離れてしまうこともあるのです。「治療に行きたいけれど、また歯磨きできてないと叱られるなあ」と足が遠のく原因にもなります。ですから初回は丁寧に説明しますが、次回からはポイントのみお伝えして、歯科衛生士による歯磨きを繰り返し体験してもらって、正しい磨き方を実感してもらいます。
歯科医師の常識にとらわれない診療を心がける
大人の患者さんの心情に配慮した診療をなさっているのですね。

歯ブラシの使い方に限らず、説明はもちろんきちんとさせていただきます。ですが、「説明が治療の無理強いにならないようにする」、そして「歯科の常識にとらわれて話をしない」ことは意識していますね。歯科医師は、歯が抜けていたり欠けていたりすると、本能的に何か入れたり詰めたりしたくなります。私自身も若い頃はそうでした。ですが、実際には「歯が抜けていても奥歯だから噛むのに支障はないし、人からは見えないので気にならないからそのままにしている」という方は結構いらっしゃるのです。大事なのは、患者さんが困っているかどうか。もし健康に不都合がなく、また見た目や生活上でも困っていないのなら、正しいケアで現状を維持するという選択肢もあると思っています。同時に、歯科医師の治療の都合だけで、歯を抜いたり削ったりすることがないように心がけています。患者さんとの長いお付き合いの中で、学ばせてもらったことでしょうね。
ところで、先生はなぜ歯科医師を志したのですか。
身内には、医師も歯科医師もいなかったのですが、高校時代に生物が非常に好きだったのですね。そこで農学部、医学部など自然科学を学ぶ領域に憧れ、あれこれ迷った末に歯学部へ進学しました。大学卒業後、歯科麻酔科を専門にしていたのも、歯科治療に特化しすぎない仕事、医学全般の普遍性に関わる仕事がしたかったからです。ただその後、総合病院で勤務するようになってからは、一般的な歯科治療を中心に取り組んできました。最近ではわれながら納得のいく治療ができることも増えて、やりがいを感じていますね。
最後に、読者へのアドバイスをお願いします。

ぜひ、正しい歯磨きの方法を教えてくれる歯科医院を受診してほしいと思います。率直にいえば、大半の方は歯を正しく磨けていないと感じています。ですが歯磨きは、口の中を清潔に保つ上で非常に大切です。歯磨きという生活習慣が正しくできていれば、虫歯を予防することができますし、歯周病も食い止めることにもつながります。歯科医院が苦手な方こそ、日頃から正しい歯磨きで口の中をきれいにして、歯を削ったり抜いたりする治療を受けなくて良いようにしてほしいと思っています。