柿沼 工 院長の独自取材記事
かきぬま整形外科
(名古屋市名東区/一社駅)
最終更新日:2026/06/29
名東区の住宅街に建つ医療複合ビル1階に「かきぬま整形外科」はある。柿沼工(かきぬま・たくみ)院長は、京都大学大学院や海外の大学研究室で、関節リウマチの研究に従事した経験を持ち、総合病院での勤務経験も長いベテランドクターだ。2008年の開業より18年、設備を新しくして理学療法士の数を増やすなど、診療・リハビリテーション体制を徐々に充実させてきた。同院の方針は、患者の話をしっかり聞いて、希望に沿った診療を心がけること。「カルテには症状以外に生活背景の情報も記入するなど、コミュニケーションのきっかけにしています」と終始笑顔で話す、穏やかな雰囲気の柿沼院長。同院の特徴や普段の心がけなどについて聞いた。
(取材日2026年5月29日)
留学や大学院での研究経験も生かし、幅広く診療
先生が医師を志したきっかけを教えてください。

家族や親戚に医療関係者がいたわけではないのですが、父から医師という職業を勧められたことがきっかけです。幼少の頃は飛行機を造ることに憧れがあったので、医学部を選ばなければ、工学部に進んでいたかもしれません。京都大学医学部に進学後は、整形外科に進みたいという気持ちが早くからありました。「エックス線で見て、骨折していたらつなげるための処置をする」という見た目にもわかりやすい点に惹かれたのですが、工学系の物作りが好きなことも、整形外科に通じるものがあったのかもしれません。また、整形外科の病気やけがには治癒が期待できるものが多いことも大きな理由になりました。
海外の大学ではどのような研究をされていたのですか?
病院に勤務してさまざまな疾患を診療するうちに、海外で勉強をしてみたいという思いを抱くようになりました。そこで京都大学大学院入学の数ヵ月前に、リウマチ研究分野での留学生の募集に応募し、運良く入学早々オーストラリアのモナッシュ大学で研究員として学ぶ機会を得ました。具体的な研究内容は、膠原病に関するたんぱく質についてです。2年間の留学生活を終えた後、京都大学大学院にて関節炎の研究に携わりました。博士号を取得し、臨床医に戻りましたが、研究生活で得た知識や考え方が臨床にも非常に役に立っており、医師としての人生において、とても良い経験であったと思います。
その後、開業されたのですね。

大規模病院や地域の中核病院では、経験に比例して肩書がついて、偉くなります。私も医長として若手の指導にあたっていましたが、役職につくことよりも、小回りの利くクリニックで、自分の目が届く範囲で自分のやりたい医療を実践するほうが性に合っていると感じるようになりました。開業するなら高校時代を過ごした名古屋にしようと、関西の大規模病院を辞めて名古屋に戻り、一旦クリニックで勤務医として働き始めました。そのクリニックのあった場所が、ここです。クリニックが移転することになり、場所を引き継いで私が2008年に開業しました。今では理学療法士が増えたこともあり、リハビリにいっそう力を注いでいます。またエックス線機器を先進のものに更新し、細部まできちんと観察できるようになりました。
患者の希望の把握に努めるとともに、リハビリにも注力
どのような患者さんが来ますか?

近隣の方々を中心に、お子さんからご高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが来ています。小さいお子さんでは転倒などによるけが、小学生から中高生では部活やスポーツ活動などによる外傷、疲労骨折、慢性的な痛みが多いでしょうか。中高年や高齢の方では、肩や膝、腰の痛みなどが目立ちます。中高年の女性の場合は、骨粗しょう症やリウマチの方も増えてきます。骨粗しょう症は骨密度検査や血液検査、尿検査など簡単な検査でわかりますので、早めに治療に入り、将来の骨折リスクを減らすことをめざすのが大切です。リウマチは手に症状が出ることが多いのですが、これも早期の治療介入により、変形や痛みを抑えることが期待できます。薬や治療法は新しくなっていますので、気になることがあれば早めの受診をお勧めします。
リハビリにも注力されていると伺いました。
はい、非常勤も含めて理学療法士が増え、運動療法をしっかり行える体制が整いました。さりげなく対話をしつつ、硬くなった筋肉をほぐしたり関節の動きを良くしたりすることを目的とした処置を行います。スポーツによるけがや痛みの症状がある方には、競技への復帰をめざすだけでなく、再発予防のための動作確認やフォーム指導も行っています。理学療法士には野球経験者やボクシング経験者がいるので、その経験から話をすることも可能です。高齢の方には日常生活動作の指導、術後の方には歩行訓練など、患者さんに合わせて無理なく行っています。リハビリはぜひ続けて通っていただきたいですね。
クリニックの診療方針をお聞かせください。

まず患者さんがどのような治療を望んで受診されたのかを把握するように努めています。手術が必要な場合はもちろん病院を紹介しますが、他に選択肢がある場合に手術を強く勧めることはありません。医学的知識をお伝えしながら、患者さんの希望に沿った治療を進めていくことが大切だと考えています。中にはなかなか意思を伝えられない患者さんもおられますが、できるだけその意思をくみ取れるよう、こちらから話しかけたりもしています。とはいえ診療時間には限りがあります。メモ程度で構いませんので、受診前に、病歴や家族歴、現在の症状や困っていること、どのようなことを目標にされているかなどをまとめていただけると効率的に情報が得られ、診断の判断材料にもなり、助かります。高齢の方の場合は、付き添いのご家族の話が参考になることもありますので、ご家族からの話も大切にしています。
地域貢献の姿勢をこれからも大切にしていきたい
先生が普段心がけていることはありますか?

診療時、電子カルテではどうしてもモニターを見てしまいがちになりますが、話をするときは必ず患者さんの正面を向くように心がけています。また、勤務医時代の上司の方針でもあったのですが、患者さんの家族構成を知ることにも重点を置いています。家族歴や生活環境、患者さんの希望を知る上でも、家族構成を把握することは重要です。例えば「お孫さんは大きくなりましたか」と尋ねることはコミュニケーションのきっかけにもなりますし、お孫さんを抱っこすることに腰痛や膝痛の原因があるかもしれませんので、重要な情報になります。手術の場合は「ご家族の誰に伝えるのか」といった、家族内のキーパーソンの見極めも大切になりますね。
スタッフの方々との連携についても教えてください。
主に、電子カルテのコメント欄を通してやりとりしており、常に情報を共有しています。リハビリに来る患者さんは長く通っている方も多く、例えば来院当初に首の痛みのみを訴えておられたのが、途中から腰や膝の痛みなどが加わるといったことは珍しくありません。当院では患者さんとのコミュニケーションを大切にすることをスタッフにも徹底させているのですが、特に患者さんと話をする機会が多いリハビリスタッフは、患者さんの話をよく聞いてくれています。対話の中で追加の診察が必要であればそれを提案してもらい、リハビリで対応できるようであればリハビリで行うなど、リハビリスタッフの判断を信頼しています。当院のスタッフに怖い人はいませんので、どなたも安心して通っていただければと思います。子育て経験者もいて、お子さんや親御さんから信頼いただいていると感じます。
地域の方へのメッセージや今後の展望について、お聞かせください。

ここは医療ビルで、内科や皮膚科など複数のクリニックがそろっています。患者さんはつらい症状があるとき、何科を受診すればよいかわからないこともあると思いますが、当院を最初に受診されても、他科が望ましい場合にはすぐに紹介することができます。当院の隣は鍼灸院で、施術内容もよくわかっていますので、ご希望により紹介することもありますね。些細なことや、ついでに気になるということでも、遠慮せずご相談ください。当院は、住宅地にある小さな整形外科クリニックです。これまで少しでも地域の皆さんのお役に立ちたいという思いでやってきました。今後も身近で来やすく、親しみがあるクリニックとして、地域に根づいていきたいと思っています。

