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辻 宏明 院長の独自取材記事

つじ・クリニック

(高槻市/高槻市駅)

最終更新日:2019/08/28

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高槻市辻子2丁目にある「つじ・クリニック」は、365日24時間体制で、高槻市・茨木市・摂津市・島本町の在宅療養をサポートしている。院長の辻宏明先生は大阪医科大学を卒業後、長年外科の医師として急性期医療の現場で活躍。難病を抱えながら自宅で療養する夫婦との出会いをきっかけに、在宅医療の重要性を実感して、病院内に在宅医療の支援セクションを開設したという経歴を持つ。自身のクリニック開業後は訪問看護ステーションを併設し、在宅医療と生活全般にわたる看護ケアの両輪で在宅療養を支援している。辻院長と訪問看護ステーションの責任者を務める看護師の井上明美さんに、在宅医療のやりがいや難しさ、仕事にかける思いなどを語ってもらった。
(取材日2017年10月18日)

一組の夫婦と出会い、在宅医療の大切さに目覚めた

開業する前から在宅医療に取り組もうとしていたのでしょうか。

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【辻院長】はい。ずっと勤務医を続けるつもりだったのですが、病院の在宅支援部の活動を続けるうちに、自分でも取り組みたいという思いが強まり、開業を決意しました。問題は場所で、自宅のそばで開業すると、急な呼び出しなどに対応できますが、訪問看護ステーションや病院との連携ができていませんでした。一方、勤務していた病院がある高槻は病院や医師、介護関係の施設と連携ができていますが、自宅からやや離れています。どちらにするか相当悩み、いろいろな人の意見も聞いた上で、ネットワークのある高槻で開業することにしました。

大学では何を専攻されたていたのですか?

【辻院長】卒業後は附属病院を皮切りに、病院の胸部外科や呼吸器外科で働き、ずっと勤務医を続けるつもりでいました。そんな折、先輩の開業医に、在宅患者さんの気管に挿入している管の処置を依頼されたのです。呼吸器外科の医師なら慣れているし、2週間に1度、病院の勤務を終えてから行けばいいということなので引き受けました。

そこで、運命的な出会いがあったそうですね。

【辻院長】お宅に訪問してびっくりしました。その患者さんは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病で、すべてに介助が必要でした。気管切開、人工呼吸、胃ろうをされており、私は本来なら病院の集中治療室(ICU)にいらっしゃるような状態だと思ったのですが、ご家庭で奥さんの介護だけで過ごしておられたのです。ご本人は話せないし、意思表示もできないのですが、奥さんは「この人は私がずっとそばにいないといけないので、病院には行かせたくない」と仰いました。そのご夫婦の絆に感銘を受け、病院に在宅支援部をつくりました。当時、病院の訪問看護ステーションの管理者だった井上さんに教えてもらいながら、在宅医療に取り組んでおられる医師のサポートを始めたのです。

医師と訪問看護師との息の合った連携が欠かせない

どのような患者さんが多くいらっしゃいますか?

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【辻院長】現在、週4日の午前中は呼吸器科、内科の外来診療を行い、それ以外の時間は訪問診療に充てています。外来診療では、高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の患者さんのほか、市内にあまり呼吸器科のクリニックがないので、肺気腫、肺炎などの患者さんが受診されます。気軽に何でも相談できる診療所をめざしており、必要がある場合には病院をご紹介します。高槻は医療機関が充実しているエリアなので、専門的な治療のタイミングを逃さないために、早めに病院と連携するようにしていますね。訪問診療は、高槻市・茨木市・摂津市・島本町が対象エリアで、ほとんどが個人のお宅です。

2013年には訪問看護ステーションも併設されました。

【辻院長】在宅の患者さんを支援するために、医師ができることはある程度限られています。これに対して訪問看護師は、患者さんの生活全般を支援することが仕事です。ケアマネジャーやヘルパーなど介護スタッフとの連携も求められます。病院に勤務している頃から、訪問看護師は在宅医療にとってなくてはならない存在だと思っており、患者さんに対する考え方が一致する、いわば息の合った看護師と仕事に取り組むために、訪問看護ステーションを開設して井上さんに責任者をお願いしました。

「息の合った」とはどういった部分についてなのでしょうか。

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【井上看護師】「息が合っている」というのは、とりわけ末期がんの患者さんの看取りの際などに感じます。これまで200人近い方を一緒に看取ってきており、最後の1週間ぐらいになると訪問も頻回になるし、ご家族も落ち着きを失われます。そうした際に、どうすれば穏やかに最期を迎えられるかを一緒に考えるのですが、その方向性が合っている、通じ合っているということを実感しますね。また、訪問看護ステーションの方針は、誠心誠意接すること。患者さんとご家族に「あなたたちと会えてよかった」と思っていただけるような関わりを大切にすることです。病院での医療をすべて拒絶されてご自宅に戻られた患者さんと良い関係を築けて、私たちのことを認めてもらえたときなどは、この仕事をやっていてよかったと思います。

「自宅で」という気持ちを、こまやかにサポートする

今後、在宅医療を必要とする人が増えるといわれています。

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【辻院長】病床数も増えず高齢化がさらに進む中で、どう最期を迎えるかが大きなテーマになるでしょうね。在宅療養も選択肢になってくると思います。ただ、在宅はご家族の負担も小さくないので、続けられないと判断されて病院へ戻られるケースがあります。その一方で、無理かもしれないと思われていたところ、続けるうちにご家族が自宅で看取ることができると思われるケースもあります。私たちは在宅を強く勧めるようなことはしませんし、途中で難しくなって病院へ戻られる場合も、患者さんやご家族の意向に沿うようにしています。相談や質問にはきちんと対応しますが、最終的にはご家族のその時々の気持ちを尊重していますね。

365日24時間対応されているそうですが、心身ともに大変ではないですか?

【辻院長】「海外旅行に行けないし、晩酌も難しい、一日中仕事をしているような状態で何が楽しいのか」とよく聞かれます。しかし、10年前、在宅医療のクリニックを始めようと決めた時にはすでに気持ちは吹っ切れていました。
【井上看護師】訪問看護師は患者さんの生活全般に関わるので、患者さんからの呼び出しは多くなりますね。私の場合、クリニックのそばに住んでいるのでなおさらです。24時間いつ電話がかかってくるかわからないのですが、かかってくれば、いつでも訪問します。周囲にはすごくハードな仕事に見えるかもしれませんが、見ての通り元気ですよ(笑)。

最後に読者にメッセージをお願いします。

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【辻院長】私は、病院医療と在宅医療は同じでなければならないとは思っていません。患者さんやご家族と相談の上、その方が自宅で療養するため、あるいは症状を緩和するために必要な医療なら、たとえ実現が難しくても提供できるよう尽力します。病院から自宅に戻りたいと考えたときに、介護は大変だし、医療のレベルを維持するのも難しいと思われる方がおられますが、ご自宅での療養をご希望なら、在宅でどんな医療や看護が可能なのか、ご相談にお応えします。ぜひお気軽にお声掛けください。
【井上看護師】「これができないから帰れない」ということはありません。何よりも大切なのは、「自宅で療養したい、過ごさせてあげたい」という思いです。その思いを持っておられるなら、「何もできない」と心配されている方も、どうぞご相談ください。全面的に支援させていただきたいと思います。

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