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角田 賢 病院長の独自取材記事

錦海リハビリテーション病院

(米子市/米子駅)

最終更新日:2021/10/12

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院 main

鳥取県と島根県の県境に位置し、山陰両県をはじめ岡山県、兵庫県などからも広く患者を受け入れている「錦海リハビリテーション病院」。脳卒中や骨折などで身体が不自由になった人を対象にしたリハビリテーションの専門病院として、地域の急性期病院や福祉施設と連携し、早期の在宅復帰および社会参加を支援する。そこで提供されているのは、医師や言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、看護師、介護士、社会福祉士、管理栄養士、薬剤師など多職種協働によるリハビリ重視のチーム医療。「患者さんが新しい人生に向き合い、また楽しく生きてもらうために」と語る角田賢病院長に話を聞いた。

(取材日2020年12月16日)

リハビリに特化した支援で早期の社会復帰をめざす

錦海リハビリテーション病院はどんな病院ですか?

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院1

現在、日本の医療は、病気の症状が現れた時に患者さんの命と健康を守る急性期と、生命の危機状態から脱して症状が安定に向かう回復期、地域での在宅生活ができるように支援する生活期と、それぞれの役割を果たす病院によって成り立っています。錦海リハビリテーション病院は、回復期のリハビリテーションを専門とする病院です。急性期病院から患者さんを受け入れ、集中的に回復期のリハビリを実施し、早期の在宅復帰および社会参加をめざします。また、通所リハビリや、ご自宅での動作練習や介助方法などの助言を行う訪問リハビリも併設し、生活期リハビリも提供しています。当院はリハビリに特化した病院ですが、鳥取県西部、島根県東部などの大小の病院やさまざまな福祉施設と密に連携して、患者さんに安心していただける環境をつくっています。

どのような患者さんを受け入れていますか?

特に、脳卒中などの脳血管障害と大腿骨頸部骨折で急性期の治療を終えられた患者さんを中心に受け入れ、中でも、脳血管障害の患者さんは約7割を占めています。脳血管障害は急性期で命が助かった後も、同障害によって引き起こされるさまざまな症状へのリハビリが必要になります。そうしたリハビリに対応できるスタッフと設備をそろえていることから、地域の病院の先生からも信頼をいただき、県内の周辺エリアはもちろん、日南町や日野町などの山間部や、県境を越えて島根県東部、遠くは兵庫県や岡山県からも入院を希望される患者さんがおられます。

リハビリテーションを目的に転院する際に病院を選ぶポイントは?

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院2

まずは家族にとってお見舞いに行きやすい場所にあるか。入院されている患者さんにとって、家族のお見舞いはとても大きな力になります。また、その病院がどういうリハビリが得意なのかを選択肢に入れてほしいです。例えば、腰痛や関節痛などの症状のある方は、整形外科の医師がたくさんいて、整形外科の症状に関してすぐに対応できる施設を選ばれるといいかもしれません。当院の場合は、脳血管障害の患者さんに多い、手足の麻痺・言語障害などの症状や、ものが上手に飲み込めない嚥下障害の改善にも力を入れており、さらに嚥下障害に詳しい医師とスタッフがそろっています。ものを自分の口で食べられるかどうかは、食事の喜びだけではなく、認知や身体機能にも大きく影響するからです。

入院期間などは決まっていますか?

現在の日本の医療制度では、疾患によって入院できる期間が決まっています。例えば、脳卒中であれば5ヵ月、骨折の場合は3ヵ月が最長の入院期間となっています。しかし当院では、入院期間をそれよりも短い入院期間で済むようあらゆる工夫をしています。高齢者は入院期間が長くなると、体力低下や認知症の症状が進みやすい傾向があるため、できるだけ早く元の生活に戻してあげたいと考えています。もちろん、ただ入院期間を短くしているのではなく、患者さんの退院した後の生活がちゃんと成り立つようしっかりとリハビリを提供し、回復の状況をみて適正に判断しています。そして、必要があれば生活期リハビリテーションを利用していただき、引き続き支援を行っていきます。

365日専門的リハビリテーション療法を提供

入院から退院までの流れを教えてください。

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院3

当院への入院が決まった段階で、私か名誉院長のどちらかがご家族と面談をします。その際に紹介状とCTなどの画像データ、これまでの病状、ご家族からの聞き取りなどを総合し、「あなたはこういうリハビリをして、これくらいの期間で退院できますよ」という見通しをお話しすることで、イメージを抱いていただきます。また入院後に、治療・リハビリの状況や、バリアフリー化といったご自宅の改修により、予定より入院期間が延びるケースもあります。そういう時も適宜ご家族に説明して、全体の流れを描きやすくすることを重要視しています。

現在の脳卒中治療について教えてください。

血管内のカテーテル治療の発達により、脳卒中治療は大きく変わりました。昔だったら完全に寝たきりになっていたような症状の人も、リハビリ病棟へ転院する頃にはつえをついて歩けるくらいまで良くなっておられることもあります。現在、鳥取県西部には、高度な脳外科の緊急手術ができる病院が2つある上、山間部からもドクターヘリによって1時間かからずで搬送できるようになりました。また鳥取県は人口あたりの医師の数も全国で10本の指に入るくらい多いですし、リハビリテーションスタッフは全国平均の2倍くらいいます。なおかつ、みんなが日頃から連携をとるようにしているので、実はこの地域は脳卒中を回復させていく上でとても資源に恵まれた地域といえると思います。

錦海リハビリテーション病院の強みや特色を教えてください。

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院4

まず、1日3時間、365日の専門的リハビリテーション療法を提供していることです。次に、全室個室ということ。当院では48床すべてを個室にし、患者さんの能力に合わせて家具の配置や手すりの設置といったレイアウトを変えています。病室で「こういうふうにしたらうまく暮らせる」というシミュレーションをしてもらうことで、自宅の環境づくりに活用してもらっています。ほかにも、365日レクリエーションの時間を設けたり、どう接すれば患者さんの回復の手助けになるかを考えて日々のケアを行ったりと、看護師や介護福祉士もリハビリ重視の対応を心がけています。

住み慣れた地域で最期までその人らしく

スタッフの数はどのくらいですか?

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院5

当院は48床という小さい病院ですが、医師が5人、理学療法士・作業療法士などのセラピストが約50人、看護師と介護士も国の施設基準より多く勤務しています。多職種によるチーム医療を実践し、入院時にはその患者さんを担当するスタッフ全員が集まって、病状や気をつける点、どう回復をめざしていくかなど、意思の統一を図っています。その後も定期的にカンファレンスを実施し、常に連携できる体制をとっています。それは、「みんなが同じ目線で患者さんに関わっていこう」という気持ちで始めた、医師を含めた全スタッフ共通の制服にも表れています。

そのほかに新たな取り組みがあったら教えてください。

はい。まず、脳卒中で倒れても、回復後に運転再開を希望される方が多くいらっしゃることから、運転時の操作を評価できるシミュレーターを導入し、患者さんの判断力・反射神経の状況に対する医学的評価と、専門家である山陰中央自動車学校による実際の運転時の評価から、運転再開の診断書を書けるようにしました。また、上肢訓練用ロボットを導入し、非常に複雑な動作を要求される手の練習を、作業療法士によるリハビリのほか、自主トレーニングでも行っていただけるようにしました。設備面以外では、2019年から新たに言語聴覚療法に特化した小児リハビリテーションを始めました。子どもの発育にとって言葉はとても大きな要素。当院では、言葉の発達に課題のあるお子さんを対象に言語聴覚士による相談、外来リハビリテーションによる個別指導・訓練を行っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

角田賢病院長 錦海リハビリテーション病院6

「リハビリ」と聞くと、訓練というイメージが強いと思いますが、私たちがめざすのは、患者さんが住み慣れた地域で最期までその人らしい生活を送っていただけるようにすることです。回復期リハビリテーションで過ごす時期は、一生の中で見るとわずかな時間ですが、この間の回復状況でその後の人生の幸福度が変わってしまう。新しい人生に向き合い、また楽しく生きていこうという気持ちになれて、初めて人は幸せになれると思っています。その幸せの部分をサポートするのが、私たちの仕事だと思っています。

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