吉川 信彦 院長の独自取材記事
よしかわ健やかクリニック
(堺市西区/船尾駅)
最終更新日:2022/01/06
堺市西区浜寺元町にある介護付有料老人ホームの敷地内に位置する「よしかわ健やかクリニック」は、どんな相談にも丁寧に耳を傾ける「地域の身近なかかりつけ医」だ。院長を務める吉川信彦先生は、大学病院で多くの放射線治療に携わってきた経験豊富な医師の一人。豊富な臨床経験を積み重ねる中で「より患者の生活に近い医療」を提供する必要性を強く感じ、開業を決意したという。現在は「どんな小さなことでもよく聞いて、患者さんと一緒に解決方法を探していきたい」と、訪問診療にも尽力している吉川院長。ぬくもりを感じさせるクリニックの中で、クリニックの特色やめざす医療のあり方について、いろいろと話を聞かせてもらった。
(取材日2021年12月22日)
何でも相談できる「特徴のないクリニック」をめざして
まずは開業の経緯を聞かせてください。
大阪医科大学医学部を卒業し、長く大学病院で放射線治療に携わってきました。おかげで充実した日々を送ってはいたのですが、医師として経験を積んでいく中で「病院を退院した後の患者さん」への想いが大きくなっていきました。というのも、大学病院は重篤な患者さんがたくさんいらっしゃいますので、長期的なアフターフォローというのはなかなかできないんですね。でも、一番困るのは「退院した後」なんじゃないかなと思うようになったんです。入院中には医師も看護師もいますし、患者さんにとっては安心な環境ではないかと思います。しかし、自宅には家族しかいませんし、場合によってはお一人のこともあります。そんな人たちをフォローしていくためにはどうしたら良いだろうと考えた時、自分は街にいる医師になって、少しでも助けになりたいなと思い開業を決意しました。
堺市には所縁があったのですか?
それが実はまったくないんです。私は奈良の出身で、その後は北摂に暮らしていました。しかし、開業を考えていたタイミングでお話をいただき、あまり迷わずに決めました。院内も広く、隣接している有料老人ホームと同じ内装なので、優しい雰囲気なのも良いなと思っています。ただ、その敷地内にあるせいか「誰もが自由に来院できるクリニック」だと思われていないのがちょっと残念です。当院は「地域にある何でも相談することができるクリニック」をめざしていますので、どなたでも遠慮せずに、気軽にお越しいただけるとうれしいです。
クリニックの特徴を教えてください。
私は日本医学放射線学会認定の放射線科専門医として、これまでに多くの画像診断やがんの放射線治療に携わってきました。それらの経験を生かして、がん患者さんのサポートや、住み慣れた自宅での終末期医療を積極的に行っています。しかし、私がめざしているのは、どちらかというと「特徴のないクリニック」なんです。現代の医学は専門化が進み「この病気ならこの診療科」と分業することが多くなっています。患者さんの意識もそうかもしれません。しかし、人の体はすべて連動しているもので、臓器単体で生きているわけではありません。その人物をよく知り、全身を診ることで見えてくるものがあると思うんです。だから私はまず「なんでも診る」医師でありたいなと思っています。
医療をもっと身近なものにしていきたい
確かに「なんでも診る」クリニックがあると心強いですね。
生きていると風邪もひくし、おなかを下したり、めまいがしたり、うつっぽくなったりといろいろありますよね。その度に「これは何科にかかれば良いのだろう?」と考えるのは大変じゃないですか。もちろん、病状が明らかな場合には専門の科にかかると良いと思います。骨折していたら整形外科に行くとか。でも、「ちょっと痛い」とか「心配事が続いて眠れない」なんて場合には、相談してもらえたら対応しますし、必要があれば「どこを受診すればいいか」のアドバイスや紹介もします。専門性が高いのは素晴らしいことですが、私は医療をもっと身近なものにしたいし、自分の役割はそこだと考えています。
訪問診療にも尽力されているそうですね。
現在はケアマネジャーや訪問看護師、介護スタッフなど多くの人々と連携し、365日24時間体制で在宅療養中の方々をサポートしています。ご自宅での看取りにも複数の医師のネットワークを組んで対応しています。新型コロナウイルス感染症の流行や高齢者の増加など、社会の変化の中で在宅療養の良さが見直されているのではないかと思います。とはいえ、安心できる環境を整えるのは難しいことも多い。だからこそ、われわれも患者さんとそのご家族の誤解や不安を一つ一つひもときながら、安心して過ごせる環境づくりに貢献していきたいですね。また、当院ではスマートフォンのアプリを使ったオンライン診療も行っています。もちろん、実際にお会いしないとできないこともありますが、とにかくまずは「こうだったらいいのにな」ということを相談してみてほしいです。
診療で心がけていることはなんですか?
「一人ひとり違う」ということです。例えば同じような病気で、同じような状態であっても「その人の願い」はそれぞれ違います。その思いをひとまとめにしない。そのためにも、まずは時間が許す限り、患者さんやご家族とじっくり話をするようにしています。たくさんの思いを聞いて、その上で柔軟に対応することができれば、それが安心や満足に直結していきますからね。ただ、いくら尊重したとしても、健全な生活を送ってもらうために、粘り強く説得しなくてはいけないこともあります。そんな時は「これは押しつけではないのか?」と自問自答するように心がけていますね。医療を提供するということは「その人の命」に関わることですから、慎重に。でも柔軟に考えていきたいです。
地域に住む人の「命」を輝かせるサポートを
先生が医師をめざしたのはなぜですか?
実家が介護施設を経営していますので、幼い頃から「生きる」ということを身近に感じていたことが大きいかもしれません。産まれたらどんな人でも年を取り、動けなくなったり、病気になったりするんだということを実感してきました。死を避けることはできず、そこには多種多様な思いや考えがあることも、おぼろげながら感じていたように思います。だから、人の命に寄り添う仕事をしたいと考えるようになったんじゃないかなと思いますね。また、外で元気に遊び回るよりも、勉強するほうが好きだったんですよ。とは言っても、本を読むというよりも完全に理系で数学が大好きでした。それで「理系の学部だったら医学部に行けたらいいな」と考えるようになり、医師になったというわけです。
実際に医師になってみていかがですか?
理系という選択肢の中で医師になったんですけど、実際に働き始めたら人とふれあう仕事。「これは頭が理系の自分には向いてないんじゃないか」と悩んだこともありますね。でも、今はとても興味深く、一生をかける価値のある仕事だと思っています。多くの患者さんの人生や思いにふれることができますし、学び続けることがたくさんあります。また、「人の命」に携わる仕事だけに、常に自分を高めるためのモチベーションがたくさんあります。学べば学ぶほど、興味がつきません。これからももっと良い医師になれるように研鑽を続けて、少しでも社会に貢献できたらうれしいなと思っています。
それでは最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いします。
身近な地域の中で幅広い相談に対応する医療を「プライマリケア」といいます。当院がめざしているのはまさにこれで、つまり「皆さんの全身の健康に関わることすべてを相談できる場所」であるということです。発熱や風邪の診療のほか、喘息や不整脈などの慢性疾患の管理、がん治療後の経過観察、生活習慣病や認知症の診断・治療も対応可能です。どんなことでもまずはご相談ください。すべてに100%応えられるかはわかりませんが、最善を尽くすことをお約束します。また、自宅での看取りを含む在宅医療の相談も大歓迎です。「皆さんの命が輝くためのサポート」ができればと思います。老人ホームの敷地内にあるため最初は入りにくいかもしれませんが、気軽に入ってきてください。お待ちしています。