要 光 院長の独自取材記事
かなめ歯科医院
(鹿児島市/鹿児島中央駅)
最終更新日:2023/03/08

鹿児島市内の県道35号沿いにある「かなめ歯科医院」は、1996年に要光院長が開業した地元に根差した歯科医院だ。一般歯科からインプラント治療、審美面に配慮した診療まで広く対応しているが、要院長が特に得意としているのが入れ歯治療。地元を中心に、遠方からも患者が訪れているのだとか。長年通う患者も多く、通院が困難になった高齢患者も増えているが「これまで通ってくれていた人は、継続して診てあげたい」と、往診にも対応。診療では患者と信頼関係を築くことを大切にして、しっかりと説明を行った上で患者の選択を尊重している。冗談が好きで、気さくな印象の要院長だが、その言葉の端々に地域や患者への想いが感じられるインタビューであった。
(取材日2021年12月2日)
患者の選択を尊重し、できる限りのことをする
歯科医師を志してから開業されるまで、どのように歩まれたのでしょうか。

父が医師なのですが、僕が小さな頃から器用だったものですから、「歯科医師に向いている」と言われていたんです。その影響で子どもの頃から医療系、特に歯科医師になろうと思っていました。1989年に福岡歯科大学を卒業した後は、大学の補綴科の医局に2年在籍し、その後は北九州市の白石歯科医院(現・白石歯科歯周再生クリニック)へ。その後いくつかのクリニックで経験を積ませてもらってから、地元の鹿児島市内での開業を見据えて鹿児島市立病院歯科口腔外科に入職。勉強をさせてもらいながら人のつながりをつくり、1996年にこの場所に開業しました。都会では専門性に特化したクリニックも多いですが、当院は歯周病や虫歯などの一般歯科から入れ歯、インプラント治療、審美面に配慮した診療まで、地域の人の悩みに幅広く対応している地域密着の町の歯科医院です。
先生の診療方針をお聞かせください。
例えば患者さんの歯がぐらぐらしていて、医学的には抜歯して入れ歯にしたほうが良くても、その人が抜きたくないのであれば、その思いを尊重して手を尽くすようにしています。もちろん、事前にそれぞれのメリットやデメリットまでしっかりと説明をした上でのこと。それでも患者さんが「残したい」と思うのであれば、その気持ちに精一杯寄り添います。こうしたやり方は、どうしても時間や手間がかかりがち。ですが自分が患者さんの立場なら、意思を尊重して手を尽くしてくれたらうれしいだろうなと、その思いで診療しています。中には「ここは長いから」と他院に移る方もいるのですが、最後まで通ってくださった方には後悔をさせない治療だと自負しています。
患者層や地域の特色を教えてください。

武、田上、上荒田といった地元の患者さんが中心で、長く通ってくださっている高齢の方が多いです。開業当初から20年来通っている方も珍しくないのですが、高齢になって自力での通院が困難な方も増えてきました。そういった患者さんには往診も対応しています。またこのあたりは鹿児島市内でも特にマンションが増えている地域ですから、新しい住宅に引っ越してきた新規の患者さんも来院されています。地域の印象としては、歯の健康に対する意識の高い人が多いです。小学校の学校歯科医をしているのですが、虫歯があるお子さんは1割に満たないくらいの印象ですね。開業した頃は2割はいたと記憶しているので、保護者の方がしっかりと管理をされているのだと思います。
経験豊富な入れ歯治療を、往診にも生かしていく
先生はどういった治療を得意とされていますか?

入れ歯が得意なので、患者さん同士のご紹介で遠方からも来てくださっています。これは僕自身の考えですが、入れ歯は経験値が大切だと思います。顎の動かし方や形、さらにそれぞれの患者さんの性格なども踏まえて、「この人にはこういうものが合うだろう」と判断していきます。これがなかなか難しくて、以前は特別な器具も使っていたのですが、結局は経験で判断することが大きいと思います。「入れ歯で痛みを感じる」という話を聞いたことがある人や実際に経験した人もいるかと思いますが、それは入れ歯が動くからでしょう。動きを止めるには顎の動きなどを見極めていく必要があるのですが、それには経験が必要。入れ歯の治療は、職人的気質が求められる分野かもしれませんね。
患者さんの傾向として、最近変化を感じていることはありますか?
近隣の昔からある歯科医院はどこも同じ問題を抱えていると思いますが、長いお付き合いの患者さんが多い分、患者さんの高齢化が進んでいます。例えば開業当初に50~60代だった人は、今は70~80代。通院が困難になった方には往診していますが、最近は往診先が増えて、往診日の木曜の午後だけでは時間が足りず、昼休みを使うことも多くなっています。また通院していた頃は元気だった方が、往診に伺うと認知症の傾向が見られることもあります。本当は認知症になる前に生活をアシストできれば良いのですが、なかなかそこまでは手が回らない状態。ただ、これまで来てくれていた人を継続して診ていくことは僕の信条ですから、より良い方法を模索しつつ、これからも往診は続けていきます。
往診先の認知症の患者さんには、どのような対応をされていますか?
入れ歯の話になるのですが、認知症の方は意思の疎通が難しかったり、噛みつくなどの攻撃性が現れたりと、調整や作製が難しくなることが多いです。もともと入れ歯を使っていた方だと習慣として身についているので、新しく作った入れ歯でも使ってくれるのですが、初めての方だと受け入れてもらうことが難しいですね。ただ最近だいぶやり方がわかってきました。言葉のやりとりは難しいのですが、やはり入れ歯を入れるとしっかりとご飯を食べられると思うんですよね。言葉で伝えることができない分、患者さんの反応を見て、痛みを感じているようであれば調整をしてあげて、きちんと噛めるようにしています。
予防や生活習慣の見直しは早めのスタートが大切
患者さんと接する上で大切にしていることはありますか?

信頼関係を築くことが大事だと思っています。患者さんの帰りがけにひと声かけるなど、些細なことから関係づくりをするようにしていますね。ですが信頼関係は一方だけが努力するものではなくて、お互いに歩み寄って築いていくものでもあります。僕たち歯科医師は患者さんの歯を治療しますが、治すのは患者さん自身の力です。歯科の治療は「お互いに頑張りましょう」と信頼関係を築いて治していくものだと僕は思います。今はインターネットなどにたくさんの情報があふれていますが、最初からその情報をあまりうのみにせず、目の前の歯科医師の言葉にも耳を傾けてもらえるとうれしいですね。
将来の歯の健康のために、私たちが普段からできることはありますか?
これから平均寿命はさらに延びていくと予想されますが、早めに対策をしておくことはとても大切です。例えば黒酢や赤ワインを飲んで歯がしみる人がいますが、これらは酸性度の高い飲み物とされています。歯は酸にとても弱く、エナメル質が溶けてしまうんです。黒酢も赤ワインも健康に良いと人気の飲み物ですが、飲むなとまでは言わないまでも、ほどほどが大切です。また、就寝時にいつも同じ方向を向いて寝ている人は、顔が歪んだり、顎関節のトラブルの原因になったりすることがありますから、向きを変えて寝るように意識すると良いでしょう。早くから食生活や生活習慣に気を使うことで、将来のトラブルを軽減させていくことも可能ですよ。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

以前、ある雑誌で見かけたのですが、高齢者の方へのアンケートで「若いときに何をしておけばよかったですか」という質問に対して、「早くから歯科医院に行っておけばよかった」という回答が上位にありました。長寿社会が進む中、今の50代は100歳まで生きる時代がやってくる可能性もあります。昔は歯科医院は「痛くなってから行く場所」でしたが、今は「悪くなる前に行く場所」という意識もだいぶ浸透してきました。高齢になったときにご自身の歯が1本もないという状態を避けるために、予防として歯科医院に通うことも大切ですし、日常生活にもぜひ気を使ってください。当院としても、治療に対する責任を今後もしっかりと持ち、長く患者さんとお付き合いしていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/1本30万円~、ホワイトニング/1万4000円~