木谷 昂志 院長の独自取材記事
木谷内科医院
(京都市下京区/四条駅)
最終更新日:2024/07/26
阪急京都本線の烏丸駅から徒歩すぐと交通至便な立地にある「木谷内科医院」。2008年の開院以来、地域のかかりつけ医として幅広い内科疾患に対応してきたクリニックだ。木谷昂志院長は京都府立医科大学卒業後、大学病院や市中病院の腎臓内科で研鑽を積み、2022年2月に同院の院長職を継承。父である先代の院長が大切にしてきた「患者の意志を尊重する姿勢」を引き継ぎ、診療にあたる。「生活習慣病から腎臓が悪くなる人も多くいます。病状が進行すると透析をしなければいけなくなる場合も。そうなる前の予防が大切です」と話す木谷院長に、注力する腎臓疾患と睡眠時無呼吸症候群の診療、診療方針、めざすクリニック像などについて語ってもらった。
(取材日2024年7月10日)
待ち時間の少ない診療体制を整え、地域医療に貢献する
医師になったきっかけとこれまでの経歴を教えてください。
両親とも内科の医師で、家庭での会話も今流行している疾患や患者さんの話が多かったんです。小さい頃から将来は医師になるんだと思っていましたね。京都府立医科大学を卒業し、同大学の循環器・腎臓内科教室に入局して以来、腎臓内科を専門にしてきました。特に大学病院での勤務が長かったので、専門的な腎臓疾患の診療経験も豊富です。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医を取得しています。実は兄と妹も私と同じ京都府立医科大学卒の医師なんです。兄は私と同じ循環器・腎臓内科教室に入局し、今も循環器疾患を専門に研究を続ける傍ら、不定期ですが、当院の診療も担当しています。私も循環器疾患の専門的な検査はできますが、必要があれば日本循環器学会循環器専門医でもある兄に相談できるのは心強いですね。
継承にあたり心がけたことを教えてください。
患者さんに引き続き安心して通っていただける環境を整えることです。優しい先生といわれた父のモットーである患者さんの意志を尊重する姿勢を大切に、丁寧に話を聞く診療を心がけてきました。継承から2年以上たった今も、引き続きたくさんの方が通ってくださり、私のことを信頼してくれていると感じる瞬間も多くあります。順調に引き継げたかなと感じ、ホッとしています。最近では新規の患者さんにもたくさん来ていただいています。一人ひとりの話を丁寧に聞くことと長時間お待たせしないことを両立できるように、気をつけて診療にあたっています。
設備面では何か変わりましたか?
設備面では、電子カルテのシステムを一新したほか、超音波検査装置、心電図などの機器を先進のものに変えました。糖尿病のコントロール指標であるHbA1cを約5分で測定し、当日にお伝えすることができる分析装置も備えています。また、クリニックでの待ち時間を少なくするために、ウェブ予約システム・アプリを導入しました。予約時にクレジットカードをアプリに登録しておくと自動でキャッシュレス決済ができるので、診察前だけでなく、診察後の会計の待ち時間も短くすることができます。待ち時間の長い大規模病院と違い、仕事の合間にパッと来て、診察を受けて、パッと帰れるのが地域のクリニックの良いところだと思うので、今後も気軽に来ていただける環境を整えていきます。
生活習慣病を中心に専門の腎臓疾患にも力を入れる
こちらではどのような疾患に対応されていますか?
高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病全般を軸に、専門である慢性腎臓病などの腎臓疾患全般、喘息や頭痛、発熱などの幅広い内科疾患に対応しています。治療に漢方薬を用いることもあります。1つの症状に対して強い作用の発揮が見込める西洋薬に比べ、漢方薬の優れている点は漠然とした症状や、いくつかの症状に幅広く対応できることが挙げられます。当院では主に慢性疾患で受診されている方で、胸が苦しい、疲れやすいなどの症状があるときに、西洋薬での治療の補助という形で漢方薬をお出しするようにしています。
専門の腎臓内科について教えてください。
腎臓内科の疾患には、大きく分けて腎臓そのものに原因がある疾患と生活習慣病など腎臓以外に原因があるものがあります。前者は若い人にも起こりやすく、代表的なものにIgA腎症、ネフローゼ症候群などの急性疾患の他、遺伝的要因で引き起こされる多発性嚢胞腎があります。後者は高血圧や糖尿病、脂質異常などにより動脈硬化が進むことで起こる慢性腎臓病が多いですね。どちらの場合でも症状が進み、腎不全になると透析をするしかありません。そうならないように予防的視野からの治療を提供するのが腎臓内科の役割だと考えています。
腎臓疾患ではどのような治療を行うのでしょうか?
生活習慣病から来る腎臓疾患の場合は、まず腎臓そのものに悪いところがないかをしっかりと調べます。その後、食事・運動指導に加えて、薬物療法を行います。特に高血圧の方で腎臓が悪い場合は、塩分を取りすぎていることが多いので、食事が大事になってきます。冊子などを使って、簡単に取り入れられる手法を私からお伝えします。腎臓はかなり悪くなってからでないと症状が出にくい臓器でもあります。健康診査を定期的に受けて、腎臓の数値が悪い、尿検査で尿タンパクや血尿がある、血圧が高くなったなどの異常が出たら早めに受診してほしいですね。
睡眠時無呼吸症候群の診療にも注力されていると聞きました。
睡眠時無呼吸症候群は夜寝ている時に呼吸が止まったり浅くなったりする疾患のこと。十分な酸素が取り込まれないため、脳や体に大きなストレスがかかった状態になり、日中に眠くなる・強い疲労感があるなどの症状が現れます。高血圧症などの生活習慣病とも密接な関係があり、脳卒中や心疾患のリスクを高める可能性があることもわかっています。睡眠時無呼吸症候群を治療することは、そのような合併症の予防にもつながるんですよ。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、当院から簡易検査機器を貸し出します。就寝時に着けてもらい、血中の酸素濃度などを数日間測定し、その測定結果から症状の度合いを解析します。一番多い原因は肥満ですので食事の改善が重要です。しかし、すぐに痩せるのは難しいので、合併症のリスクが高い方には酸素マスクを着けて酸素を送るための治療法を提案します。
患者が求めていることを探り、解決するのが医師の役目
患者さんに接する際に気をつけていることは何ですか?
患者さんが何を求めているのかを大事にしています。心配だから検査で異常がないことを知りたい方もいれば、とにかく症状を抑えてほしい方もいらっしゃいます。患者さんの目的を探り、それを解決するのが医師の一番の役目です。そして、検査をする際には検査の目的や方法を事前にしっかりと説明し、検査をしても良いかの確認は必ず取ります。説明しても最初はあまり理解していただけなくても、丁寧な説明を続けているうちに、徐々に信頼してもらえて、納得して治療を受けてもらえるようになると信じています。その結果、喜んでいただけたのならこんなにうれしいことはありません。
治療方針をお聞かせください。
治療に関しても、患者さんが求めていることを第一にしています。特に当院で注力する生活習慣病は長く付き合うことになる疾患です。患者さん自身が納得して治療に臨まないと、結局治療が長続きせず、意味がありません。高血圧の治療にしても、本当はここでもう少し血圧を下げるための治療をしたほうが良いと感じる場面もあります。しかし、こちらだけが良いと思う治療を押しつけて、患者さんが嫌になって来院されなくなり、薬を飲まなくなってしまうのが一番良くありません。患者さんの納得できるところを探りながら、治療を進めるように心がけています。
最後に、めざすクリニック像と読者へのメッセージをお願いします。
いつでも気軽に受診できる体制を整え、地域の方をはじめ、患者さんと長くお付き合いできるクリニックでありたいですね。専門外の疾患かもと思われる場合でも、とりあえず相談に来てもらえるクリニックが理想です。健診で引っかかった方はもちろん、定期的に健診を受けていない方で、ちょっと血圧が高い、少しむくんでいる気がするなどの不安を抱えている方は、ぜひお越しください。受診して良いのかと心配になるぐらい小さなことでも大丈夫です。睡眠時無呼吸時症候群は男性に多い疾患のイメージがありますが、顎が小さい・喉が細い特徴のある日本人は女性でなる方も多いです。意外と痩せている方にも隠れている場合もありますので、朝つらかったり、いびきを指摘されたりした方は一度検査してみることをお勧めします。