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岸本 知弘 院長の独自取材記事

きしもと歯科医院

(京都市北区/北大路駅)

最終更新日:2023/10/26

岸本知弘院長 きしもと歯科医院 main

北大路駅から歩くこと3分ほど、北大路通りに面した場所にあるのが「きしもと歯科医院」。かつて岸本知弘院長の祖父が、内科医院を開業していたというその地に、2007年に開業した。岸本先生は「地域を大切にしたい」という想いを胸に、地域住民をはじめ、広く国民全体に歯科の魅力を伝えるべく、診療と並行して教育や啓発にも力を入れている。めざすのは、同院が歯や口について学べる場所となること。「例えば、予防歯科がもっと認知されれば、むし歯や歯周病といった歯科疾病も減らすことができるはずなんです」と語る岸本先生。そして人々が健康な生活を維持するためのサポーターとして、歯科医師の職務を全うしたいと意気込む。ここでは、岸本先生に診療へのこだわりや想いなどについて語ってもらった。

(取材日2022年7月14日)

歯科医院で癒やしや心地良さを提供したい

歯科医院とは思えない、すてきなお庭に驚きました。

岸本知弘院長 きしもと歯科医院1

自慢の庭園なのですが、あえて外からは見えないようにしています。来院される方のための景色といいますか、チェアに座って目にしていただくことを想定して設計しました。歯科診療するところなのに、こんな日本庭園が広がっている、実はそのギャップが大切なんです。歯科医院というと、どうしてもネガティブなイメージを持ってしまいがちです。そこで、不安になってしまうような要素をなるべく排除したいと考えました。歯科イコール緊張ではなく、癒やしや心地良さを演出することで、少しでも皆さんにリラックスしていただきたい。そんな思いから、当院では「デンタル」と「リラクゼーション」の言葉をかけ合わせた「デンタリゼーション」という造語を掲げて、日々診察にあたっています。

この地に開業されたのはなぜですか?

以前、この場所は祖父の内科医院でした。そこを私が継承しました。祖父は医師として周囲の人たちから信頼されていたので、幼い頃から憧れを抱いていたんです。診療を行う上で、やっぱり大切なのは、地域単位で診療していくということなんですね。開業の際、歯科医師会に入会して、地域の先生方へごあいさつに伺い、改めてその重要性に気づかされました。例えば皆さん、かかりつけ医がおありかと思いますが、急患の場合は当番医が診るわけです。つまり受け入れるのは、「地域」なんですよね。なので、あそこの歯科医院がいいというより、もっと広義に「歯科っていいね」と感じていただきたいんです。私は、歯科診療があるのは国民の健康と幸せのためだと思っています。その国民というのは、目の前の人、皆さんです。だからこそ、まずは近くの人たちに歯科診療の素晴らしさや意義を実感してほしいのです。

先生が診療で心がけていることを教えてください。

岸本知弘院長 きしもと歯科医院2

ベーシックな診療です。30代で開業した時、ある先輩の歯科衛生士さんからこんなことを言われました。公衆衛生や地域保健を語るなら、診療で特殊なことをしてはいけない。特に小児歯科の場合、将来もし先生が診れなくなったら、困るのはその子どもたちでしょう、と。なるほどな、と思いました。そして歯科医院を訪れた大学時代の友人からは「君は突っ張ったことを言うわりに、診療所は普通だな」と指摘され、妙に納得したことを覚えています。そんなことがあり、特別なことはせず基本的なことを丁寧に気負わずやっていこう、と思い至りました。そしてもう一つ。私は自分の役割として、地域の皆さんを専門家につなぐ「連絡調整役」の役割も担いたいと考えています。

歯科への理解向上に向け、教育や啓発にも注力

来院される方を診ていて感じることはありますか?

岸本知弘院長 きしもと歯科医院3

ここ京都には大勢の大学生が暮らしていますが、親元を離れると、歯磨きがおろそかになり、むし歯になってしまう人がいます。お口の中を診ると、どんな生活をしているのかわかってしまうんですね。私は常々この仕事は診療が責務ではあるものの、もっと大切なのは歯科にまつわる教育と啓発ではないかと感じています。歯の健康維持について、学校ではほとんど習いません。小学校への巡回指導はありますが、それで十分とはいえません。どこか悪くなってから受診する、という方もきっと少なくないでしょう。ですので歯科医院へ通う意味を知って、一つの習慣として定期的にお越しいただきたいのです。予防的観点からもそれは重要なことで、健康を維持していくためには必要なことと考えています。

教育が大切だということですね。

はい。お口の健康について、学校では教えてくれないことを発信していきたい。いわば教育機関でありたいというのが、私がやりたかったことです。むし歯の状態で生えてくる歯は一本もないですし、歯周病で生まれてくる子は一人もいませんよね。でもむし歯になる人は国民の8割とされ、40歳以上では多くの人が歯周病になっているといわれる現状があります。これは裏を返せば、われわれの啓発不足ともいえます。後天的な疾患を、国民の大多数の人に発症させてしまっているわけですから。本来なら予防できるはずなんですよね。ということは、歯科医師として関わらなければいけない余地が、まだたくさんあるということ。むし歯治療や歯周病治療ももちろん大切ですが、その前にもっと寄り添い歩み寄る必要があるのではないか、と思うんです。病気すべてに言えることとして、重症化予防も大切ですが、発症予防はもっと大切です。

先生は、食とお口の関わりにも注目されていますね。

岸本知弘院長 きしもと歯科医院4

近年、食育や地産地消と盛んにいわれており、素材の良さや栄養価の高さへの関心も高まっています。でも、食べるのはお口です。食べる人の口元が健康だからこそ、おいしくいただけるんですよね。以前、調理師専門学校で授業をさせていただいたことがあるのですが、そこにいる学生さんや先生たちは料理を作る側でもあり、一方で飲食店へ行けば食事をするお客さんの立場でもあります。ですから食をキーワードに口腔ケアをご自身の問題として捉え、お口の健康の大切さに気づいてもらえれば、必ずや良い料理人になると私は信じています。そうした啓発活動は、今後も続けていきたいですね。京都は文化の中心地でもあるので、特に食文化についても深く関わっていければと思います。

人々の生活に寄り添う歯科診療をめざして

来院される方への接遇で大切にしていることは何ですか?

岸本知弘院長 きしもと歯科医院5

お一人お一人の価値観に目を向けることですね。私は歯科医院というのは、皆さんが歯科医師と価値観を共有する場でもあると思っています。診療での説明に10分かけた場合、長くて面倒だと思う人もいれば、丁寧と感じる人もいるでしょう。同じ10分でも人それぞれによって捉え方が大きく違う。価値観というのは、そういうことなんです。また、歯科診療は、皆さんの生活に寄り添い、暮らしの質を上げていくのがその使命です。しかしながら、皆さん自らの日々の口腔ケアも重要です。だからこそ、共有の場が必要なのだと考えています。

歯科診療は生活に直結しているといえそうですね。

どこまで皆さんの生活に寄り添うことができるか、そこにかかっています。例えば「入れ歯になれば、大好きだった食べ物が食べられなくなるのでは?」といった本心を、歯科医師に遠慮をして伝えられない方もいらっしゃいます。そこで心の声をくみ取って、その方の生活の質を下げないようサポートする。そこが私のめざすところでもあるのです。またそうした歯科診療だけでなく、もう少し皆さんと深く関わっていくことも、私たちの役目ではないかと。それは診療を通じて、皆さんの生活背景を伺うことができてこそです。認知症や育児の悩みなど来院された方の変化に気づき、地域の専門的な施設へつないでいく。当院は、一歩踏み込んで日常的にもフォローできる場でありたいと願っています。

読者にメッセージをお願いします。

岸本知弘院長 きしもと歯科医院6

改めてお伝えしたいのは、口元は誰のものでもない、皆さんご自身の貴重な財産なんですよ、ということ。例えば高価なブランドバッグは大切に使いますし、壊れたら修理するか、新品に買い換えることもあるでしょう。でも歯は一度失うと、新品に取り替えることができません。口腔健康管理が大切なのです。私は一人でも多くの方に、そこに気づいてほしいのです。だから学校では教わることの少ない、お口の健康についていろいろお話をさせていただきます。私の希望は、皆さんがきちんと歯科診療にかかるということです。それは、もちろん私の歯科医院でなくても構いません。とにかく、歯科医院に習慣として長く通っていただければ。それが私の本望です。

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