矢島 満 理事長の独自取材記事
日吉台歯科診療所 矢島歯科医院
(横浜市港北区/日吉駅)
最終更新日:2023/07/14
1946年開業。時代に合う医療を取り入れながら地域医療に貢献してきた「日吉台歯科診療所 矢島歯科医院」。3代目を務める矢島満理事長の探求心の源は歯科医療への興味だという。良い新しい治療法が出たと聞けば、好奇心をくすぐり学ばずにいられない。治療より予防で根本的解決を図るべきだと思えば、予防を徹底的に追及せずにいられない。まだ歯周病治療が自費診療だった時代から、歯周病治療の大切さにも注目してきた。MFT(口腔筋機能療法)や歯列矯正では歯並びをただ治療するだけでなく、どこに原因があるのかを考えて人をトータルで診る。「ご自身の歯に関心を持つきっかけになれば」と審美歯科にも積極的に取り組み、今はまた新たな分野へのチャレンジを始めている。今回は矢島理事長にMFTや鼻呼吸などさまざまなテーマで話を聞いた。
(取材日2022年12月14日)
時代の移り変わりともに歯科医院の在り方も変わる
こちらは75年以上の歴史ある医院だと伺いました。
当院の開業は1946年。祖父・父・私と3代、また4代目となる私の息子も今は副院長として、75年以上にわたりこの地で診療を続けています。巣鴨で開業していた祖父が、戦火を逃れて日吉の叔母のところに移り、新たに診療所を構え直したのがこちらでの始まりだそうです。リヤカーにユニットを1台積んで、疎開してきたと聞きました。ですから、日吉ではかなり老舗のほうだといえるでしょうね。私はこの場所で生まれ育ち、1979年からは父とともにここで勤務していました。父の後を継いで3代目に就任したのは1985年。以来、ずっとここで地域の患者さんを診てきました。地元の方が大半で、昔から長く通ってくれている方も多いので、みんなで一緒に年を取ってきたという感じですね。患者さんの中にも、高齢の方が目立つようになりました。
時代の移り変わりとともに、変化を感じる部分はありますか?
歯科医院での治療というと、ひと昔前は虫歯治療がほとんどでした。しかし最近では「自分の歯をできるだけ残すことが大切」という考え方が世の中に浸透してきましたね。虫歯や歯周病になる前に予防しようという意識が高まっていると感じます。私たちクリニック側も、できてしまった虫歯をただ治療するのではなく、患者さん一人ひとりの考え方やニーズに沿って適切な治療を提案するという流れに変わってきました。現代ではさまざまな治療法が確立され、選択肢が広がりました。「自分だったらどんな治療を受けたいか」「身内が患者だったら、どんな治療をしたいか」という視点で普段から診療に取り組んでいます。
スタッフさんにも、そうした診療方針が共有されていると感じます。
歯科治療ではチームワークがとても大切ですし、どんな治療も私1人ではできません。先ほどお話ししたような視点を常日頃から徹底していると、スタッフも自然とするべき内容が見えてくるようです。こちらから細かい指示を出さなくても次々と行動してくれるようになりました。本当に心強いですよ。これまで学んだことは後輩の歯科衛生士に受け継がれていますし、新たに取り入れようとする治療があるときは、私も含めて全員で講習会に参加しています。こうしたチーム医療が、患者さんにとっての安心感や患者さん一人ひとりに適した治療に結びついているのだと思っています。
舌の位置や鼻呼吸。MFTは子どもにも高齢者にも有用
こちらで力を入れている「MFT」について教えてください。
MFTとは口腔筋機能療法のことで、口腔周囲の筋肉の使い方を正しく整えるための治療です。子どもたちの中には、顎を前に突き出して口をぽかんと開けている子や、猫背の子がよく見受けられます。これは舌癖や口呼吸、頬づえ、指しゃぶりなどが原因で、顎の骨や口の周りの筋肉がうまく発達していないからだといわれています。口腔筋機能療法では、口腔習癖や口呼吸の改善をめざし、成長発育を利用して正しい顎の発達を促します。通常時に舌がどの位置にあるか、飲み込みのときに舌を突き出していないか、鼻呼吸はできているか。これらをチェックしながら舌癖や習癖を確認、口腔筋を鍛えるトレーニングで、正しい嚥下や舌の位置、鼻呼吸ができるようにしていきます。MFTは大人にも有用で、特にオーラルフレイルの予防には欠かせません。
鼻呼吸はとても大切なのですね。
その通りです。鼻呼吸は鼻毛や粘液といった天然のフィルターを通して空気を取り込みますが、口呼吸ではそうはいきません。外の細菌やごみもダイレクトに取り入れてしまいます。また副鼻腔では一酸化窒素がつくられており、鼻呼吸ですと、この一酸化窒素が空気と混ざり合いながら体内に運ばれます。一酸化窒素には殺菌や免疫力向上の効果があるともいわれているんですよ。就寝時には口にテープを貼って、鼻呼吸を促す方法をお勧めしています。むやみに貼ると夜中に苦しくなってしまいますから、鼻呼吸できるかどうかを確かめてから行うようにしましょう。あとは、舌が常に口の中の天井部分に位置している状態を保つこと。仕事中や寝る前に確かめて、舌が下がらないようにすることが大切です。舌を上顎につけて鳴らすタングアップを取り入れるのも良いですね。
歯周病治療や歯列矯正にも注力されていると伺いました。
私は30代の頃に、初めて北欧式の歯周病治療の考え方と出会いました。まだ歯周病治療が自費診療だった時代です。予防歯科の重要性を発信している先生と知り合い、この北欧式の歯周病治療の考え方や技術など、いろいろと教えてもらったのがきっかけで、歯周病治療と予防に力を入れるようになったんです。歯周病を診ているうちに、歯周病を未然に防ぐことの重要性を実感するようになり、やがて歯の理想形について考えるようになりました。磨き残しを防ぐために必要なのは正しい歯並びや噛み合わせ、そこで有用なのが歯列矯正です。小児の矯正は予防が主目的ですね。大人の矯正は、審美面に加えて、睡眠時無呼吸症候群と診断された方のマウスピース作製にも対応しています。
より良い治療を求め、質の高い歯科診療を提供
その他、インプラントやホワイトニングにも対応されているのですね。
歯を失った際の選択肢には入れ歯・ブリッジ・インプラントがありますが、インプラントは自立しているので周りの歯への負担が少なく済みます。治療した歯だと気づかれにくく、審美的にもメリットといえますね。またホワイトニングは、健康な天然歯を白くするための施術です。インプラントなどの人口歯は白くなりませんが、天然歯の色を調整して全体のバランスを整えることをめざせます。インプラントやホワイトニングは、虫歯や歯周病などのお口のトラブルがあったままでは治療を進められません。事前の処置で口腔内をきれいにし、インプラントやホワイトニングで見た目も整えることが、患者さんご自身の歯に関心を持つきっかけになればうれしいですね。
最近注目している分野はありますか?
西洋医学では解決できない問題もあり、ミニマルインターベンションの観点から統合医療に注目しています。その中でも特に、脳歯科という分野があります。口も含め、体は一つにつながっています。最近では歯周病が全身疾患に及ぼす悪影響が問題になっています。同じように口腔内のちょっとしたズレが、頭痛や腰痛といった不調を引き起こすことがあるのです。脳歯科の観点からバランステストなどで体の不調や関節の動きを確認し、口腔内の原因を探ります。原因となっているのが詰め物の不具合と思われる場合は、その調整を行います。
最後に今後の展望をお聞かせください。
長年歯科医師をしていると、うまくいかないケースも多々あります。治療プランを組み立てても費用面での折り合いがつかなかったり、治療プロセスや結果の捉え方が患者さんと異なったり。患者さんの行動や発言から、こちら側の問題点に気づかされることもありました。それでも歯科医師を続けているのは、歯科への興味が尽きないから。質の高い歯科診療を患者さんに提供することができれば、喜びを感じるからです。この数年は、結果に対する治療より原因に対する治療の比率を高めたいと考えて、MFTの浸透や矯正に注力するとともに、鼻呼吸や舌の位置の重要性といった知識の伝授に努めてきました。今後も当院に一番適していると思う治療を取り入れて、患者さんに還元していきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/38万5000円~、セラミックを用いたかぶせ物治療/1歯:10万4500円~、マウスピース型装置を用いた小児矯正/44万円~、大人の矯正/55万円~、口腔筋機能療法/1回5500円~、ホワイトニング/1万6500円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。