清水 秀則 院長の独自取材記事
秀歯科医院
(新居浜市/新居浜駅)
最終更新日:2021/10/12
新居浜の住宅街の中にたたずむ一軒家が「秀歯科医院」だ。院長の清水秀則先生が、「私の家内の助言で親しみある昔ながらの歯科医院の雰囲気ができました」と話すとおり、木枠の窓や扉、待ち合い室の椅子などから、とてもレトロな雰囲気が漂う。岡山県出身の清水院長は、九州大学歯学部を卒業後、兵庫県神戸市のクリニックで研鑽を積み、その後四国へ。縁あって新居浜を選び、1996年に開業した。豪快で明朗な話しぶりの清水院長の最も大切にすることは、「患者との信頼関係のうえに診療すること」。休日は趣味の自転車やボートでリラックスをするという清水院長に、歯科医師になった経緯やクリニックの理念など、さまざまな話を聞いた。
(取材日2020年9月16日)
患者との信頼関係を第一に、「歯」という資産を守る
先生が医療の道を志したきっかけを教えてください。

私の親戚が歯科医師をしていたことがきっかけです。大学受験時には歯学部だけでなく医学部にも合格をしていまして、どちらの道に進もうか迷っていました。しかし、親戚の影響もあり、最終的に歯科医師の道を選びました。私自身の出身は岡山県なのですが、九州大学歯学部を卒業した後に兵庫県のクリニックなどで研鑽を積み、長女が生まれるタイミングで香川県へまいりました。その後、妻の親の出身が新居浜・西条ということで、縁あってこの地を選び開業をしたという経緯があります。
クリニックの理念や診療方針として大切にしていることはなんでしょうか。
まず、患者さんとの信頼関係を築くことです。その具体的な方法として、初診日に「なぜ今日来院したか」という主訴に対して解決策を提示してあげることが大切と考えています。例えば、痛いという訴えに対しても、特定の部分だけではなく全体を診て、噛み合わせにも問題があるなどといったように、明確な原因を見つけてあげることが大切。もう1つ、私は体全体を改善するという視点から歯の治療を行っています。噛み方から姿勢に影響が出てくることも考えられますし、そこから体の症状につながることもあるでしょう。歯は健康の源であり、歯科治療は延命治療だと考えています。限られた「歯」という資産を、できれば人生の終わりまで持っていってもらいたい。そのためには、歯をそのままにしておくのではなく、維持するため4~6ヵ月ごとに検診してサポートをしていくことも必要です。そうしたことを初診日に説明しています。
歯は全身の健康にとって大切なのですね。

そうです。噛み合わせでも、いつも同じところでばかり噛んでいるということは、いつもそこだけに仕事をさせているということなんです。人間もずっと仕事をし続けていたら倒れてしまいますよね。歯全体でバランスよく噛むことが大切なのです。また、食べ物は奥歯で噛みつぶさないと駄目なんです。そうでないとその後の胃腸の機能が低下して栄養の吸収が阻害され、体力や免疫力の低下へとつながります。治療段階でも両側の奥歯で等しく噛むことができるよう意識しています。人間が年を取るのと一緒で、歯も年を取るわけですよね。どんな治療をしても、現状維持か悪くなるかのどちらかです。その悪くなるペースを少しでも遅らせていくのが私は良い治療だと考えています。
患者と二人三脚で治療に挑む
歯科治療は歯科医師と患者さんの二人三脚で行うものだとお考えだとか。

そうです。もう1つ言えば、歯科医師と患者さんは同志だと思っています。歯科医師と患者さんが同じ目的に向かっていくことが重要なのです。歯科医師の側は、「この人は私を信用して安心して口を開けてくれている」、患者さん側は、「この先生は私を幸せの園に導いてくれる」と。お互いのそうした気持ちが大切なのです。そして、そのような状態で行うことで良い口腔環境が構築され、医療費全体の節約にもつながっていく。前歯でちょこちょこ食べて飲み込んだり、片方の奥歯で噛んで飲み込んだり。そこから体のバランスを崩すことにつながり、腰が痛い、首が痛いと、まず整形外科に行く人が多いと考えます。しかし、その整形外科に通っている患者さんの中には、まず歯を治療すべき方がたくさんいるのではないかと私は見込んでいます。
治療にはスタッフの力も大きいのではないですか。
はい。スタッフも私の診療方針を理解してくれています。例えば、治療の際には、その流れを途切れさせないよう、先回りして必要な治療器具を持ってきてくれるのです。私の考える診療環境の実現に寄与してくれているスタッフは、一般的な社会人経験があり、あえてこの道の未経験者を採用しています。世代間のギャップもなく、私と価値観を共有してくれているので、自らの言動はすべて院長の代わりであるという自覚をもって仕事を行ってくれています。この仕事は、人のために頑張れる人、そして医療というものが好きな人でなければ続かないと思います。責任感をもって私の手足になってくれる人と一緒に患者さんを支えていきたいですね。
特に得意としている治療や、注力している治療はなんですか?

歯の根っこの治療ですね。根っこの部分というのは、いわゆる基礎工事なのです。これがきちんとできないと、結局駄目になってしまってやり直しをしなければいけません。歯の中の治療がいい加減で、見えるところだけ素晴らしい治療をしても意味がないのです。私は、歯科医師とは歯の外科医師だと考えています。私たち歯科医師自らが患者さんの噛み合わせを再構築していかないといけません。医科の外科以外の疾患は、きっかけを与えれば体が自然と治していくものも多いのですが、歯は自然に治ることはありません。そのような部分に仕事の面白さを感じていますね。この道を選んだことを、今は心から良かったと思っています。
「歯」から体全体の健康を守っていきたいという思い
これまで診療を続けてきた中で、印象に残ってる患者さんはいらっしゃいますか?

口腔内がボロボロな状態で来られた若い女性がいました。こういった場合、最悪の場合には、すべての歯を削って作り直さなければいけないこともあります。この際だから、体のことも考えてきちんと治療していきましょうと言いましたが、その女性は恐らく、歯が悪くても痛みがなかったから来られなかったのでしょうね。ほかにも、歯医者が怖いとか、歯科治療にネガティブな気持ちを持っている人もたくさんいましたね。私も歯が悪くて幼少期に歯医者に通っていたことがあるのですが、昔の先生って言い方がきつくて、怖い方も多かったですよね(笑)。そういった経験から、歯医者にネガティブな印象を持ち、我慢して我慢して、限界まで来たときにやって来る人もいらっしゃいます。
先生が歯科医師としてやりがいを感じるのはどんなときですか?
患者さんから「歯がよくなったよ」「ごはんがおいしくなったよ」と言ってもらえる時ですね。一緒に同じゴールをめざして頑張ってきた患者さんに、そういった言葉をいただけると、とてもやりがいを感じます。歯がきれいになると、体にも良い影響を与えます。そして、体が良い状態になれば、精神面にも良い影響を与えるはずですよね。イライラしていた人がリラックスできるなど、気持ちも変わるかもしれません。女性はお化粧いらずで肌がしっとりしてきたりもします。そういう患者さんを診たとき、自分が歯科医師になって良かったと思います。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

今、3人いる私の子どものうち2人が歯科大学に通っています。将来この場所で後を継ぐのであれば、それぞれ得意分野を持って好きなようにやってもらいたいと思っています。一方で、私は自分が元気な間は、まだまだ歯科医師として治療をして、地域の患者さんの歯だけでなく、体全体の健康を守っていきたいですね。治療が好き、そして、人が喜んでくれるのが好きなので、この仕事は辞められません。歯科医師という仕事は、私の生きがいになっています。

