橋本 喜輝 院長の独自取材記事
耳鼻咽喉科はしもとクリニック
(大阪市城東区/鴫野駅)
最終更新日:2023/11/13

鴫野駅から徒歩3分。幹線道路沿いにあり、ガラス張りで明るく入りやすい雰囲気の「耳鼻咽喉科はしもとクリニック」。一般的な耳、鼻、喉の症状から、めまい、味覚・嗅覚障害、舌下免疫療法などの専門的な治療まで幅広く診療している。院長の橋本喜輝先生は温厚な人柄で、祖父や父から受け継いだ「医は仁術」の言葉を胸に、一人ひとりとのコミュニケーションをエネルギーに変えて、日々診療に励む職人気質の医師。「常に同じクオリティーと笑顔で、安定した医療を提供し続けていくのが開業医としての使命」と話す橋本院長に、診療に対する思いや心がけていることについて話を聞いた。
(取材日2023年7月26日)
地域住民の健康を支え、心のよりどころとなるように
明るく開放感があって、くつろげる雰囲気のすてきなクリニックですね。

院内はインテリアもすべて僕がデザインしたのですが、コンセプトはカフェです。カフェに来る気分で気軽に来院して、居心地良く過ごしてもらえたらと思ってつくりました。通りに面していて壁はすべてガラス張りなので院内が明るいですし、間口が広くて外からも見えるので、入りやすいかなとも思います。診療スペースはあえて個室にせずに、仕切りを設置して開放感を持たせました。小さいお子さんの来院も多いので、ベビーカーでも入ってきやすいですし、廊下もすれ違えるゆとりを持たせています。
開業する際にこの場所を選ばれたのはなぜですか?
出会いですよね。もともとは別の地域で1階に小児科のクリニックが入っている2階のテナントに開業しようと考えていました。その小児科の先生にあいさつしたところ「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってくださいましたし、そこで開業するつもりだったのですが、そんな時に知人からこの物件を紹介されました。小児科の先生に相談したところ、実はこの近所にお住まいで「こっちのほうがいい」と勧めてくださったんです。こちらの医師会に入る時にもご紹介くださり、そういう後押しもあったので、こちらで開業することにしました。城東区は大阪のベッドタウン。下町な雰囲気があり、気のいい方、気さくな方が多いように感じています。
どのような患者さんが多いですか?

0歳のお子さんから高齢の方まで、全世代の方がいらっしゃいます。中でも多いのはお仕事をされている世代の方ではないでしょうか。開院当初にお母さんに連れられて来ていた子が結婚して、産まれたお子さんを連れて来院されることも増えてきてうれしいですね。花粉やダニの増える春や秋は、アレルギー症状の患者さんが増えます。一般的な耳鼻咽喉科ですので風邪症状での来院が多いですが、めまいで悩まれている方もいらっしゃいます。さまざまなことが重なって慌ただしい日もありますが、患者さんにはなるべく負担をかけないように、早く丁寧に診察をすることを日々心がけながら、スタッフにも助けてもらいながら診療しています。
患者が気にかける小さな不安も時間の許す限り応えたい
長くこちらで診療されていて、地域のホームドクターとして感じていることを教えてください。

日々診療を続けていく中で、地域の子どもたちが成長していく姿を見続けられることは、地域医療に携わる開業医としての醍醐味だと思います。ほんの数年前までお母さんに連れられて通っていた男の子が、髪型も変わってすっかりあか抜けた様子で来院したりすると、思わず声を大きくして話しかけてしまうこともありました。ああこうやって成長していくんだなあ、と勝手な親心のような気持ちが湧いてきて、うれしくなりますね。私にも子どもがいますから、そのうち孫を見るような気持ちになるんじゃないかな、と最近思うようにもなっています。また長くやっていますと、患者さんからいろんな相談を受けるんですよ。時には耳鼻咽喉科の領域を超える内容を相談されることもありますし、熱中症や胃腸炎などで来院される方もいます。
小さい子どもを診察する際に気をつけていることはありますか?
1、2歳の小さなお子さんは、できるだけスピーディーにササっと診てあげたいなと思っています。クリニックという空間への恐怖感だけで泣き始めてしまったり、ぐずって前を向いて椅子に座ってくれない子もいるでしょう。そういう場合は親御さんにもお手伝いいただきますが、親御さんのためにもできるだけスピーディーに診療を行います。子どもを押さえ続けるのは気持ちも疲れますし、診察後になだめるのも親御さんです。私も経験があるからわかりますが、そういうことが負担だったりしますよね。3、4歳ぐらいになると、私の説明を理解してくれるお子さんも増えてくるので、反対にちょっと声をかけて気持ちを和らげるようにしてから診察していきます。感染症の疑いがあるお子さんの場合などは「もし病気だったらお母さん、お父さんにもうつってしまうから、一瞬だから頑張ろうね」などと話しかけ、落ち着いた瞬間にサッと検査を済ませることを意識しています。
子どもの診察は大変ですね。

いえいえ。小さい子が大きな声で泣くのは当たり前ですから腹も立ちませんし、もし泣いていてもかわいらしいなと思いながら泣き止むのを見守ります。成長すると周りの状況が理解できるようになります。そのため、この間まで泣いていた子が、急に泣かなくなってしまったりすると、逆に寂しい気持ちになるものです。子どもの泣き声ってやっぱり明るいんです。晴れ間のような感覚で、小さい子どもがたくさんいるとクリニックに活気が出るように思えます。ですから子どもの診察は好きですし、つらそうにしていると何かしてあげたくなります。
ほかに診療で心がけていらっしゃることはありますか?
「1週間分薬は出させていただいたので、様子を見て、良くなっていないようでしたらまた来てください」「こうなっていたら、もう来なくて大丈夫ですよ」というように、なるべくわかりやすく説明した上で、見通しを伝えるようにしています。そのほうが患者さんも服薬をちゃんとしてくださると思うんです。一番困るのは、良くなったと思って来院せず様子を見てしまい、結局病気が長引いてしまうこと。特に子どもの場合は、1回行って薬をもらったら、それで治ると思っている方が多いですが、「ましになった」と「治っている」は違います。慢性化して治りづらくなれば子どももかわいそうですから、「こういう状態だったら、もう1回連れて来てください」ときちんと伝えないといけないと思っています。
常に同じクオリティーと温かい笑顔で患者を迎え続ける
先生が耳鼻咽喉科の医師になられたきっかけは?

父が歯科医師なので歯学部をめざしていたのですが、せっかくなら医学部でもいいんじゃないかという話になって両方受けたところ、医大にだけ受かりました。耳鼻咽喉科を選んだのは、いわゆる外科的な治療も内科的な治療も両方できることに魅力を感じたからです。耳鼻咽喉科は大学では耳鼻咽喉科・頭頸部外科という看板で、外科の部類なんです。それと耳鼻咽喉科は処置が多くなんとなく歯科と似ていて、なじみやすかったのかなと思います。そんな中、耳鼻咽喉科に尊敬できる先輩とご縁ができ、耳鼻咽喉科に決めました。手術がうまくてさまざまなことを知っていらっしゃって、今でも僕の憧れです。私はいつも出会いの中で生きているなと思います。
患者さんも、先生と出会えて良かったと思っていらっしゃるはずです。
そう思っていただけるとうれしいですね。ただ日によっては慌ただしく、十分に時間が取れていないのではないかと歯がゆく思うことも増えてきました。1人目のお子さんの発熱や、引っ越してきて間がない親御さんは特に不安を抱えて来院されるでしょうから、当院のキャパシティーを考えながら、良いバランスで診療できるように着地点を探っているところです。
読者へのメッセージをお願いします。

開業医というのは、患者さんが求められたらいつでもどんな状況でも、安定的に医療を提供できる体制を維持していることが大事。「いつも、ここにいますよ」と言えるからこそ、患者さんの心のよりどころになれるのだと思います。来院する方が毎日いらっしゃるから、成り立つ仕事なのだと初心を忘れずに、常に同じクオリティーと同じ笑顔で患者さんを迎え入れてあげるようにしていきたいですね。私は、医師は職人だとも思っています。この仕事しかできないからこそ、専門家としての気質を貫いていこうと思います。時には診療が時間外になるなどで体力的、精神的にもつらいこともありますが「遅くまでありがとう」という患者さんの言葉が、私とスタッフの活力になっています。