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高木 千浩 院長の独自取材記事

金山メンタルクリニック

(名古屋市中区/金山駅)

最終更新日:2021/10/12

高木千浩院長 金山メンタルクリニック main

多くの人が行き交う金山駅から北へ徒歩5分、落ち着いた住宅地に「金山メンタルクリニック」は建つ。青く塗られた外壁が特徴で、窓辺に飾られた季節の花々が心を和ませる。高木千浩院長は、大学病院や総合病院の精神科で長く勤務した後、経験を地域で役立てたいとこの地に開業した。10年以上たつ今では近隣住民も立ち寄る、かかりつけ医のような身近な存在となっている。「病気の方にも必ず健康な部分はあります。治療ではそれを引き出すことを大切にしたい」と高木院長。物静かな語り口でゆっくりと話してくれるドクターだ。臨床心理士や精神保健福祉士など専門スタッフも在籍する同院の診療方針や、心がけについてなどさまざま語ってもらった。

(取材日2020年6月17日)

医師と専門スタッフが時間をかけて患者に対応

クリニックを開業された経緯について教えてください。

高木千浩院長 金山メンタルクリニック1

私は大学卒業後、大学病院や総合病院の精神科に長く勤務していました。総合病院では幅広い疾患の方を見る機会に恵まれ、職場や社会生活における人間関係のストレスや悩み、不眠、うつ病といった、どなたでもなり得る病気の方を多く診ていたことから、地域の身近な開業医になってもっとこの経験を生かしたい、と考えるようになりました。開業について考えているときに、この建物で内科医院を営んでおられた先生が引退されるということで、この場所をご紹介いただき、2008年に開業しました。花壇で花を育てたり院内にも花を多く飾るなど、病気のことだけを考える場所にならないようにできるだけ気持ちが和むクリニックにすることを心がけました。

患者さんはどんな方が来られていますか?

まず、うつ病の方が多いですね。他に、不眠症、パニック障害、自律神経失調症、過敏性腸症候群、また大人のADHD、認知症の方なども来られています。男女比は、開業当初は8対2で女性が多かったのですが今は6対4ぐらいでしょうか、少し男性の割合も増えました。年齢層は20~80代と幅広く、多いのは30~40代の方々です。私は、「100%病気の人」や「100%健康な人」は実際にはいらっしゃらないと思っています。誰もが悩みや不安は持っていますが、来院される方とそうでない方ではそのお困りの程度によるのかと思います。ですから病気の人でも健康なところは必ずあるはずで、症状を治療していくことも大事ですが、健康な部分を引き出し増やしていくことはもっと大事と思っています。

先生やスタッフの皆さんの心がけを教えてください。

高木千浩院長 金山メンタルクリニック2

適切な診立てや治療を行うためには、今の困っている状態や病気になった背景やプロセス、ストーリーを把握することが大事です。現状に至るプロセスがわからないと解決への道筋をつけることが難しいので、初診時にはかなりの時間をかけてお話を伺います。治療は私1人でできることではなく、臨床心理士、看護師、精神保健福祉士、事務スタッフたちと連携して行うことが必要です。みんな、それぞれの立場から、頑張ってくれています。医師だけでなくスタッフが丁寧に患者さんと接することで患者さんが良くなっていける治療の場を作ることができるよう心がけています。

患者の話をよく聞き、心身全体を診ることが鍵

精神科の治療は具体的にどのように進むのでしょうか。

高木千浩院長 金山メンタルクリニック3

最初の電話予約の際に、簡単に症状を伺います。来院して問診表に記入後、それに基づいて臨床心理士あるいは看護師と1対1で面談(予診)があります。そこでじっくりとご本人が最も困っていることをお聞きしていくのです。家族構成や生活歴、職場環境などをお聞きすることもあります。この段階で患者さんの必要な情報を十分に伺うことが診断や治療を行う上での最も重要なポイントとなります。そういう意味では精神科の臨床経験が豊富で優秀な臨床心理士と看護師が役割を担ってくれているのが心強いですね。その後、申し送りを受けて私が診察に入り、さらに細かくお聞きして、診立て、治療へと進んでいきます。この予診と初診で的確にポイントをつかむことが治療の成否を握っていると思っています。2回目以降は、予約をしていただき通常の診療に入っていきます。ご本人の了解があれば、ご家族も一緒にお話しさせていただきます。

患者さんの話をしっかり聞いてくださるのですね。

限られた時間の中で、できるだけ患者さんに寄り添えればと考えています。また、言葉だけでなく「からだ」のありように目を向けることも大切です。大学生の頃から「自己治癒力」に関心があって、「ことばとからだ」の研究者で演出家でもある竹内敏晴さんの本を読み、実際に竹内先生の「からだ」と「ことば」のレッスンに参加したことが大きかったです。人と向き合うには、自分の「からだ」が固まらず緩んでいないといけないこと、集中するとはどういうことかなどを学びました。これは今もまだ難しい課題です。診療では、言葉のやりとりだけではなく、「からだ」を含めてその方全体を診ることを大切にしています。以前、うつ病でなかなか苦しさから抜け出せなかった患者さんで、自ら運動を始めたことで自信をつけ、快復に向かった方もいらっしゃいました。「からだ」は心と一体だと実感しています。これまでの学びや経験を、普段の診療に生かしていきたいですね。

こちらでは漢方薬も処方されているそうですね。

高木千浩院長 金山メンタルクリニック4

西洋薬も漢方薬も、その方に合わせて処方しています。漢方薬は、希望される患者さんも多いのですが、当院はかなり使っているほうかもしれません。ある程度重い症状の方には漢方薬だけでは不十分なこともありますが、比較的症状の軽い方には適していると思います。漢方薬は全身のバランスを整え、自己免疫力を高めることが期待できることも良い点ですね。副作用がまったくないわけではありませんが少ないこと、眠気が少なく日常生活を妨げることがあまりないこと、依存性の心配をほとんどしなくてよいことがメリットといえます。

気楽に来られる地域の身近な場所として

改めて、先生はなぜ医師をめざされ、精神科を専門にされたのでしょうか?

高木千浩院長 金山メンタルクリニック5

子どもの頃から何となく、体の仕組みや医療に興味がありました。高校生の頃も漠然と医学部に行こうかなと考えていたのですが、浪人生活を送ることに。当時通っていた塾にいらした小林敏明先生と出会ったことが精神科を専門に選ぶきっかけになりました。小林先生は授業中にフロイトやユングについて話をしてくださっていて、それで興味を引かれ、個人的にも話したり質問したりしていましたね。小林先生が紹介してくださった、当時名古屋市立大学にいらした木村敏先生の本を読んだことで、将来は精神科の医師になろうと目標が決まりました。

今はどんなときにやりがいや喜びを感じられますか?

精神科の教室に入局する前は、どうして病気になるのかという精神病理学、つまり病気の原因、なりたちに興味があったのですが、実際に医師になって患者さんと接するようになると、困っている患者さんの病気や悩みにどうやって向き合っていくかということ、すなわち日々の臨床のことのほうが、ずっと大事になってきました。患者さんの状態がだんだん改善に向かっていくのを見ているとこちらもうれしく、それが日々のエネルギーになっていますね。病気が良くなるのには、「運動を始めた」「週末は気分転換を意識するようにした」「人との向き合い方が変わった」など何かしら理由があると思いますので、そのことを大切に毎日を過ごしていただければいいなと願っています。初診の方の中には、かつて患者さんだった方からの紹介が少なくなく、それも励みであり、ありがたいことです。

読者へのメッセージや、今後についてお聞かせください。

高木千浩院長 金山メンタルクリニック6

もし困っていることがあるという方には、1人で悩まず気楽にいらしてくださいとお伝えしたいですね。当院は街中にあるクリニックですので、待合室は精神科という特別な感じはなく、内科のクリニックのようにごく普通の方がおみえになっています。結構、同じ町内の方も多いんですよ。昔は精神科には入りづらいというイメージがありましたが、今では心身の困り事を相談する身近な科になっているのではないでしょうか。当院では時々患者さんにアンケートをお願いしているのですが、頂いたご意見についてはスタッフで検討し、できることは改善しようと思っています。今後もできることは少しずつ改善し、スタッフ全員でさらなる医療、環境の向上をめざしていきたいと思っています。

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