早期寛解をめざせる関節リウマチ
専門家による早期診断・治療が鍵
新横浜山前クリニック
(横浜市港北区/新横浜駅)
最終更新日:2025/03/12


- 保険診療
免疫の働きに異常が生じることで、慢性的な痛みやこわばりが起こる関節リウマチ。症状が進むと軟骨組織や骨が破壊され、関節の変形につながる自己免疫疾患だ。先代院長の時代から関節リウマチの診断・治療に尽力する「新横浜山前クリニック」の山前正臣院長によると、国内の患者数は女性を中心に約100万人を数え、近年は高齢の男性にも増えているという。山前院長は「治療による効果が最も期待できるのは早期の段階ですから、早めに専門の医師を受診いただくことが大切です」と話す。日本リウマチ学会リウマチ専門医であり、米国・英国での研究経験や、重責を担った大学病院での豊富な経験をもとに、日々患者と向き合う山前院長に、関節リウマチ診療の変遷や治療を受ける上で知っておいてほしいことについて話を聞いた。
(取材日2025年1月28日)
目次
薬の進歩で、痛みに対する治療から早期寛解をめざす治療へ。早期診断と、個別性の高い治療選択が重要
- Q関節リウマチ診療の進歩について教えてください。
-
A
▲院長の豊富な治療経験をデータベース化し、個別化医療に貢献
大別すると2つあり、1つは2010年に診断基準(分類基準)が改訂され、より早期に治療が必要な方を見つけやすくなったことです。実際には、関節が腫れた方に関節リウマチ以外の50以上の病気との鑑別を行い、全ての関節の診察や検査所見、システムレビュー(全身の系統的診察)、問診情報などから診断します。検査所見ではリウマトイド因子などを参考にしますが、それらが陰性のリウマチも存在するため注意が必要です。加えて、滑膜炎を捉えるのに有用な関節エコーなどの画像診断も欠かせません。そして2つ目は抗リウマチ薬の進歩で、従来型抗リウマチ薬のメトトレキサートや生物学的製剤やJAK阻害薬が登場し、診療現場は一変しました。
- Qなぜ抗リウマチ薬による治療が必要なのでしょうか?
-
A
▲精密な検査を行い、患者の状態を把握する
抗リウマチ薬の登場により、「痛みを和らげるための治療」から、「炎症を抑え込むことで関節の変形を防ぐための治療」へと変貌し、患者さんは日常生活を維持しやすくなりました。一人ひとりに合った個別化医療が可能となり、減薬できる方も増えています。もし関節炎症状を放置すれば、滑膜の炎症が軟骨や骨の破壊へと進行し、一度変形した関節は健常な状態には戻りません。関節機能の低下は生活動作の低下に直結し、さらに関節炎が続くと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞につながる可能性も。また炎症が強いほど、関節外症状である間質性肺炎の悪化が多いとの報告もあります。これらを防ぐためには、抗リウマチ薬による早期治療が必要なのです。
- Q抗リウマチ薬の選択で大切なことは?
-
A
▲リウマチクリニックとして48年の歴史がある
現在国内においては、炎症性サイトカインを抑えるための生物学的製剤やJAK阻害薬など新規抗リウマチ薬だけでも、17種類の薬剤が処方可能です。それぞれに有効性や安全性の特徴があります。どの抗リウマチ薬も市販後の調査情報が出されていますので、豊富な治療経験を持つ医師にしっかりと全ての情報を丁寧に説明してもらい、お薬を選択していきましょう。加えて、粘膜が乾燥するシェーグレン病や、間質性肺炎などの「合併症」、さらには、高血圧、脂質異常症、糖尿病、腫瘍性疾患といった「併存症」などの背景をしっかり理解して、治療を選択してもらいましょう。これには丁寧な問診がとても大切になります。
- Q今後の関節リウマチ治療の課題を教えてください。
-
A
▲医師、専任の看護師や薬剤師、医療クラークによるチームで対応
抗リウマチ薬の進歩により、多くの患者さんの関節症状は改善が見込めるようになりました。一方で、多剤の抗リウマチ薬に有効性を示さない難治性関節リウマチ(D2TRA)の患者さんが10%程度いらっしゃることが課題です。発症時の治療開始が遅れた患者さんに多いようです。そのため、初期症状である関節の腫れやこわばり、倦怠感、目や口の渇きや咳、息切れなどが見られる場合、または家族にリウマチ患者がいる場合は、速やかに受診されることをお勧めします。ただし、治療開始が遅れたとしても、治療経験豊富な専門の医師といっしょに、根気良く治療薬を見つけることで改善が得られることが多いと考えています。
- Q御院で受けられる関節リウマチの治療について教えてください。
-
A
▲窓から光が差し込む清潔な院内は、リラックスできる空間だ
当院では、臨床試験などの一般的な情報に加え、私の治療経験を院内独自にデータベース化し、患者さんにフィードバックすることで、より個別性の高い医療につなげています。また、個別性の高い治療のためには、先述のとおり多様な情報を得ることが大切となります。そのため、医師をはじめ、関節リウマチ専任の看護師、薬剤師、医療クラークといったスタッフがチームとなり、こまやかに情報を共有しながら、患者さんの理解を促し、積極的な治療参加を後押しする体制を整えています。現在の治療が不十分と感じる方や再発した方にも、豊富な臨床データに基づいて異なるアプローチを提案できる場合もありますので、お困りの方はご相談ください。