大橋 由政 院長の独自取材記事
大橋産婦人科クリニック
(津島市/津島駅)
最終更新日:2023/01/17

洗練されたデザインの外観。院内に一歩足を踏み入れると、高級ホテルのラウンジのような空間が広がる「大橋産婦人科クリニック」。2階には、妊婦の入院のための和・洋タイプの個室や立ち会い出産の家族のための小部屋、分娩室がある。このほか、産声を上げたばかりの新生児を母親が見られるよう、大きなテレビモニターが設置された分娩室、母親教室やマタニティーヨガ、マタニティービクス、ベビービクスなどが開催される多目的ホールがあり、大橋由政院長のこだわりが、そこかしこに息づいている。だがそのこだわりの真髄は、医療の質そのものにあると語る大橋院長に、開業に至る道のりや小さき命への思い、医療へのこだわりを聞いた。
(取材日2022年10月6日)
建物はリラックス空間に、中身の医療は質にこだわる
医療機関とは思えないモダンな建物ですね。こだわられた点を教えてください。

「和モダン」の雰囲気が好きで、いくつかの医院に足を運んで見学し、福岡市の設計事務所に依頼しました。医院リニューアルのコンセプトは、「器である建物はリラックスできる空間に。中身である医療は徹底して質の追求を」です。外観も内観もホテルのようと言われますが、核となる医療にも徹底的にこだわり、医師・助産師・看護師はもちろん、医療事務も含め安心できる医療体制を心がけています。超音波検査機器は、赤ちゃんの顔や手足などが立体的に見られる4Dタイプを採用。新型の超音波機器ですので、赤ちゃんがきちんと育っているかどうかや心拍が正常かどうかなど、外側から詳細な情報を得ることができます。体の中に入る針や糸、薬品に関しても、私が納得できるものを使用して、安全安心を心がけています。
クリニックを継承された経緯を聞かせてください。
もともと、父がこの地で産婦人科の医師をしていたこともあり、自分も小さい頃から医師になると思っていました。その想いのまま、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)に進学し、1994年に卒業しました。同大学産婦人科で勤務した後、故郷の津島市民病院で1年半勤務しました。父も開業前は津島市民病院で働いていたので、父のことを知っている方も多く、温かく迎え入れていただきました。津島市民病院での勤務は地元の状況がよくわかり、たいへん有意義でしたね。その後、父が院長を務めていた当院を、私が引き継ぎ、2008年に建物をリニューアルして再開しました。私には厳しい父でしたが、地域の人からは慕われていたようで、いまだに「この子、お父さんに取り上げてもらったんだよ」という近所の方や患者さんが大勢います。父の後を継ぎ、この場所で開業して本当に良かったと思っています。
地方の市民病院などで産婦人科の医師が不足していると、よく耳にしますが。

産婦人科の医師は確かに減少しています。医師不足で2ヵ月分娩を中止していた津島市民病院の産婦人科も、私が勤務することになり、再開しました。私が開業のために辞めてからも、後任の医師らによりしばらくは継続していましたが、残念なことに2019年9月から常勤の小児科医がいなくなったことを受けてお産を休止しています。
少子化も影響しているのですね。
今や少子化は社会問題。経済的な面は政府に任せることですが、一人でも多くの赤ちゃんを無事に出産するという点では産婦人科医として力を尽くしたいと思っています。初産で難産だった人も、2人目のお産ではほとんどの人が軽くなります。「お産がつらかったから、もう赤ちゃんは要らない」と考えず、ぜひ2人目、3人目のお子さんを授かってほしいですね。当院では、お部屋や食事、手厚いケアなど、入院中もゆったりと過ごせるよう配慮しています。個人病院だからこそできるホスピタリティーでお迎えしていますので、出産を前向きに捉えてください。
女性の生涯に一貫して寄り添い続ける
診療する上で心がけていることは何ですか?

産婦人科の医師が減ってきた背景の一つに、医療訴訟の問題があります。お産は生まれて当たり前と思っている方がほとんどですが、現実には困難な状況も発生します。そのため私は、妊婦さんの状況をこまめに診ることを心がけています。来てもらわないとわからないので、妊婦さんにもこまめに受診してもらうようにしていますし、当院に通院中の方なら、急なご来院でも診させていただきます。何回か診察をしていくと、顔を見ただけで、体調がいいか悪いかがすぐにわかるようになってきます。赤ちゃんが無事に生まれ、退院される時に、「ここで産んで良かった」「スタッフが皆、優しく接してくれた」というお声をいただけるよう、スタッフ皆で妊婦さんをしっかりサポートしています。
外来は先生がお一人ですべての患者さんを診ているそうですね。
大きな病院では、曜日で担当の先生が変わったりすることもありますが、当院では私がすべて診ていますから、一人ひとりの患者さんのことをしっかりと把握できます。患者さんも毎回、同じ医師なので、ちょっとしたことでも話しやすいようですね。一人で診ることによって私がすべての責任を負うのですから、常に後悔のない診療をしたいのです。何かあってはいけないので、私は365日、毎日クリニックに顔を出しています。ある意味、職人気質なのかもしれませんね。人の一生の始まりから、内科的な “診断”、外科的な“治療”、経過観察での“フォロ―”と、一貫してできることが、産婦人科の魅力。また患者さんと長くお付き合いできる点も、やりがいを感じます。今でも勉強の日々ですが、それが医師としての知識と経験の糧になっています。
早産の場合はどのような対応になりますか?

当院には未熟児など早産で生まれた赤ちゃんを管理する設備がないので、36週から分娩を取り扱っています。それより早い場合は、新生児集中治療室(NICU)のある海南病院や、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院へ紹介状を持っていっていただきます。妊婦さんを送った後は必ず結果を確かめます。また、早く送るほど、いい状態で運べますし、受け入れ先も早く処置ができます。大学にいる時は逆に送ってもらう立場だったので、もっと早く送ってもらっていればと思われないように、素早い判断と迅速なアクションは医師として、常に心がけています。いずれにしても、切迫した場合は少しでも早くクリニックに来てもらうことが大切です。
ベビービクスや母乳マッサージで産後もフォロー
婦人科での治療や検診について教えてください。

おりものや生理不順、更年期などの患者さんもおみえになります。また当院では、不妊治療についてはタイミング療法と人工受精のみで、体外受精は行っていません。がん検診も行っていますが、早期発見においては、専門の医師が診ることが大切です。病理診断は藤田医科大学の病理の教授にお願いしています。これにもこだわりがあり、自分の臨床所見と違っていた場合などは、直接電話で確認を取ったり相談したりしています。
おなかにいる赤ちゃん、生まれたばかりの赤ちゃんへの接し方などアドバイスをお願いします。
20週くらいから赤ちゃんは外の音が聞こえています。おなかの中の赤ちゃんに話しかけたり、音楽を聞かせたり、本の読み聞かせをしたりすることは胎教にもなり、赤ちゃんとのコミュニケーションを深めるためにもお勧めします。また触るという皮膚刺激は、脳に刺激を与えます。当院でもベビービクスを行っていますが、赤ちゃんに触って話しかけ、愛情のこもったマッサージをしてあげることは、脳が刺激され、知的かつ情緒的な発達を促す効果が期待できるとされています。お乳に関しては、初乳(産後1週間以内に分泌されるクリーム色の母乳)は細菌などから赤ちゃんを守り免疫を高めるIgA抗体という成分が入っているので、ぜひあげてください。お乳の出にくい方にはお乳マッサージをしています。
最後に、妊婦さんへメッセージをいただけますか?

食事内容に気をつけて、体重のコントロールをきちんとするようにしてください。自分が食べたいから滅茶苦茶に食べる、食べたくないから食べない、好きなものだけを食べる、というのではなく、赤ちゃんを思って食事をすると、おのずと体重管理ができるのではないかと思います。体重管理はお母さんが赤ちゃんにしてあげられる、最初の優しさです。無理やりたくさん食べる必要はなく、粗食でいいと思います。そしてやはり日本人には和食がいいと私は思っています。リラックスして愛情を感じながら、おなかの中の赤ちゃんに話しかけてみてください。母親としての自覚が芽生え始めたことに、気づかれることと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは子宮頸がん検診/7000円、子宮体がん検診/1万円