鳥谷部 森 院長の独自取材記事
こどもの森クリニック
(新潟市江南区/亀田駅)
最終更新日:2021/10/12

江南区の住宅街に位置する「こどもの森クリニック」は2006年開業。森をイメージした院内は木のぬくもりを感じる色合いになっており、明るく優しい印象だ。鳥谷部森(とやべ・しん)院長は、江南区にある医院の小児科に15年間勤務し、その後開業。開業当初から多角的な視点で患者に寄り添う診療スタンスを続けてきた。院内にある指導箋の数は300種類ほどで、日々内容を見直しているという。また院長自らSNSを毎日更新するなど、情報発信にも力を入れている。工夫を凝らしたこまやかな診療で多くの信頼を得ている院長に、診療方針やクリニックの特徴について聞いた。
(取材日2021年5月6日)
医学・理論・経験を融合した、幅広い医療と知識を提供
小児科の医師をめざしたきっかけと、開業までの歩みをお聞かせください。

幼い頃から生き物が大好きで、亀やザリガニなどと一緒に暮らしていました。子どもも好きだったので、将来は理科の先生か子どもに関わる仕事がしたいと思っていました。「生き物」と「子ども」の共通部分を考えた結果、小児科の医師をめざすことにしたんです。大学卒業後は15年間、江南区亀田にある病院の小児科に勤務していました。最初の年に担当した喘息の女の子は、発作を起こして何度も入退院を繰り返していました。やがてその女の子は結婚しお子さんが誕生され、現在はお子さんを連れて当クリニックに来てくださっています。来院なさるたびに「頑張って発作を乗り越えたものね。幸せになってよかった!」と、まるで自分の娘と話すように語り合っています。小児科の医師になった喜びを感じる瞬間ですね。
クチコミを聞いて訪れる方もいらっしゃるそうですね。では、診療の際に心がけていることを教えてください。
そうですね。ここは、お母さん同士の情報交換で当クリニックのことを知り、訪れる方も多くいらっしゃいます。取り扱う診療内容ですが、子どもに関することなら何でもお受けしています。年齢層は産科退院後から上限はありません。そのため、成人後まで長くお付き合いが続くこともあります。診療で大切にしているのは「わが子がその症状だったら、どう診療してほしいのか」をイメージすること。そのために、じっくりとお話をお聞きし、お母さんの疑問をすべて解決するように努めています。「このクリニックを受診してよかった」という気持ちと、安心、納得、そして子育てと看病への意欲も一緒にお持ち帰りいただきたいですね。この診療スタンスはスタッフにも伝えています。また、必要に応じて患者さんを専門機関につなぐことも地域のかかりつけ医の大切な使命だと考えています。
食物アレルギーの発症予防に力を入れているとか。

できる限り食物アレルギーを発症しないための離乳食指導と皮膚状態の管理を重視しています。離乳食作りやアレルギー予防は、お母さんにとってかなりハードルの高いことがらです。当院では、乳児期の早い段階で肌のケアに介入し、離乳食開始までに理想の肌をつくることや、主要アレルゲンといわれる食品を負荷の小さいものから順に適切な時期に少量から食べ始めることなどを指導しています。また、食物アレルギー予防以外にも、疾患や症状ごとの食事指導に力を入れています。近年、便秘のお子さんが増えています。薬の処方の前に、まずは食事の改善ですね。理論に基づいた食事指導はもちろんのこと、毎日食事を作る主婦としての経験からもアドバイスしています。ちなみにわが家の食事は作り置きを活用。お昼は必ずお弁当を持参して、みそ汁は薄味でだしをしっかりとっています。
寄り添う診療と豊富な情報発信で子育てをサポート
病児保育のお子さんも診られているそうですね。

近年、お仕事を持っていらっしゃるお母さんはとても増えています。お子さんを保育園にお願いできるようになったら、お仕事に復帰される方がほとんどだと思います。ですが、保育園デビューの頃のお子さんは急な発熱や体調の変化も多いもの。すぐにお母さんにお迎え要請の連絡が保育園から来てしまいます。そんな状況のお母さんたちをサポートしたいと、当院のすぐ隣に病児保育施設「森のおうち」を開設しました。病児保育でお預かりするお子さんは、当院の通常の診察開始時間より前に診察時間を設定して、ご様子を診させていただいています。
患者さんに指導箋を渡されるそうですね。種類も豊富に備えているとお聞きしました。
開業当初からオリジナルです。診察の際に指導箋を示しながら症状について説明し、特に注意してほしいところにはアンダーラインを引いてお渡しします。家で見返すことができるので好評です。形としても残るので、子育ての思い出として保管したいという方もいらっしゃいますね。指導箋はお一人ずつお渡しする「こどもの森ファイル」に入れて保管していただきます。ある小学4年生のお子さんは、肥満傾向で食事指導を希望されて来院されたのですが、肥満対策の指導箋をお見せしたら「僕、自分の下じきに貼って毎日見るようにします」と話してくれました。うれしいですね。
ホームページやSNSによる情報発信も積極的にされていますね。

外来に来てくださる方だけではなく、ホームページなどを見てくださる方のお役にも立ちたいという思いで更新しています。SNSでは、病児保育や一般診療のお子さんの作品やクリニックの花壇、私の心に残った本の紹介、わが家のティーカッププードル、私の手料理などの写真を載せています。2020年からスタートして、今のところ皆勤賞で、300投稿を超えました。お母さんたちに人気なのが、わが家のわんこが主役の写真です。投稿してすぐにコメントなどの反応がつくんですよ。「心が通っているな!」とうれしくなります。SNSは私とお母さんたちの双方向のコミュニケーションツールです。また、クリニックのホームぺージは、休診日の毎週木曜日に更新しています。テーマは「読んで今日から役立つ情報」。子育てに関する情報や流行疾患などについて発信しています。
「生まれてきてよかった」と親子が思える支援を模索
乳児健診と予防接種を日曜日限定にされている理由は何でしょうか?

一般診療のお子さんと健診や予防接種で訪れるお子さんが、同じ空間で過ごすことのないように配慮するためです。乳児健診では、お母さんの日頃の疑問をすべて解消できるように、十分に時間をとってお話をお聴きしています。たいへん好評で、電話予約の解禁日には1時間ほどで予約が埋まるほどです。予防接種は、医学部同級生の夫も手伝ってくれています。パソコンに強くて、開業当初、電子カルテを導入するときには、手取り足取り教えてくれました。こうしてクリニックを続けられるのも、夫のおかげです。感謝感謝ですね。
受付から診療までの待ち時間にも配慮されているそうですね。
待ち時間はどうしても発生してしまいますから、その時間を有意義にお過ごしいただくために、受付後はご自宅でお待ちいただくようにしています。診察の直前にお呼びしますので、待合室で待機する時間が短くなります。密を避ける上で、とても有効です。このように感染予防の意味もありますが、ご自宅でお待ちいただくほうが、親御さんもお子さんも負担が少ないですし、家事をしながら過ごすこともできますよね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

子どもは「笑顔のママ、パパ」が大好きです。お母さんとお父さんの幸せなくして、お子さんの幸せはあり得ません。親御さんが「この子が生まれてきてほんとうによかった」と心から思えるよう、全力でサポートします。小児科の医師は、子育て中のママとパパの全面応援団です。お子さんの気になる症状や子育てに関する疑問、不安があれば、遠慮なく小児科の医師にぶつけてください。親御さんが「子どもの様子がいつもと違う」とおっしゃれば、それは絶対に正解なんです。親御さんはお子さんの一番の理解者ですから。親御さん目線の「いつもと違う」感覚を最上位に位置づけ、日々診察しています。一緒に知恵を出し合って、幸せな明日に向かって歩んでいきましょう。お子さんが笑顔で成人を迎え、親子で「産んでよかった、生まれてきてよかった」と実感できるようにサポートをさせていただきたいといつも願っています。