全国のドクター9,189人の想いを取材
クリニック・病院 158,628件の情報を掲載(2024年4月27日現在)

  1. TOP
  2. 鹿児島県
  3. 鹿児島市
  4. 鹿児島中央駅前駅
  5. きじま内科
  6. 貴嶋 宏全 院長

貴嶋 宏全 院長の独自取材記事

きじま内科

(鹿児島市/鹿児島中央駅前駅)

最終更新日:2021/12/24

貴嶋宏全院長 きじま内科 main

鹿児島中央駅から徒歩3分の「きじま内科」。2006年の開業以来、乳児から高齢者までを対象とした喘息の治療を中心に内科・呼吸器内科の診療を行っている。院長の貴嶋宏全(きじま・ひろたけ)先生は、昭和大学医学部を卒業後、同大学病院や関連病院の呼吸器内科や救命救急センターなどの臨床現場において活躍した後に故郷に戻ってきた。専門は呼吸器内科で、現在は喘息治療に力を入れている。即時の診断が難しい喘息だが、専門性の高い診断で症状を適切に把握、機を逃さない治療に努める貴嶋院長に、医師になったきっかけや喘息の診断、ステロイド薬による治療について話を聞いた。

(取材日2021年8月18日)

臨床経験と知識を生かし、地域医療の道へ

まず、医師になった理由をお聞かせいただけますか?

貴嶋宏全院長 きじま内科1

実家は代々旅館を営んでいたのですが、戦死した祖父の遺言が「子どもたち皆を医者にしてほしい」というものでした。伯父や伯母の家系は医療系になりましたが、僕の父は家業の旅館を継ぎました。孫世代の僕たちも小さい頃から、祖母に「お医者さんになるのよ」と言われ続けて育ちました。幼少期は科学的なものに興味があり高校生の初めまでは、理系大学をめざしていました。高校生の時に「大脳生理学」の本を読み、人間の能力の可能性を引き出す研究がしてみたいと思い、医師となる道を選びました。

専門の呼吸器内科に進まれたのはなぜですか?

貴嶋宏全院長 きじま内科2

大学を卒業して、昭和大学藤が丘病院を研修先として選びました。そこでは血液内科・神経内科・腎臓内科・消化器内科・呼吸器内科・循環器内科・救急科・内分泌内科の順で各科3ヵ月間1人で病棟が管理できるぐらいまで勉強させていただきました。しかし、その中で一番よくわからなかったのが呼吸器内科でした。当時は学会からのガイドライン等も発刊されておらず、内科の研修医時代、呼吸器内科の先生に質問をしても先生によってさまざまな答えが返ってきていました。客観的に評価できる検査がある他科に比べ、呼吸器内科の診療は客観的に評価する部分が少なく、難しい分野のように感じたのです。経験と知識に基づく診断が必要な領域だけに、もっと勉強が必要だと思い呼吸器内科を専門として選びました。大学病院では重症度・専門性の高い患者の外来管理や数多くの集中治療を手がけ、激務でしたが、さまざまな知識と経験が得られ、たいへん勉強になりました。

開業を考えるようになったのはいつですか?

僕は本家の長男なので、いずれは故郷に帰ろうと決めていました。2006年に鹿児島に戻り、現在の当院からも近い高見馬場で「高見馬場きじま内科」を開業しました。いざ開業してみると、当時は呼吸器内科を診療している病院・医院は数えるぐらいしかありませんでした。また、鹿児島県は以前から、国内でも喘息による死亡率が高いことがわかりました。ほとんどの喘息患者さんは、十分な治療を行えば無症状となるまでコントロールできる疾患と考えていましたが、鹿児島では呼吸器専門の医師が非常に少なく医療側も患者側も喘息治療に対する知識と意識が十分広がっていなかったように思います。吸入ステロイドはステロイドだから早めにやめましょうと患者に説明されていてびっくりしました。当時はインターネット環境もあまりなく情報が入手しにくい環境だったことも関係していたと思います。僕は、これまでの臨床経験と知識で、お役に立てればと思っています。

専門的な知識で、長期にわたる治療を

喘息の診断は難しいのでしょうか。

貴嶋宏全院長 きじま内科3

喘息は気道に慢性的な炎症が起こる病気です。病名はよく認知はされていますが、確定診断するのは難しいです。喘息特有のゼーゼー・ヒューヒューという症状があれば判断しやすいですが、症状が咳だけの場合などは診断が難しくなります。一般的に検査によって即診断できる患者は少なく、多くは他の病気がないことを確認する除外診断と問診によって喘息を疑います。当院では基本的に、咳症状が2週間を超えたら胸部のエックス線写真を撮り、結核を含めたチェックをします。その他検査も含め、喘息が最も疑われる場合は薬を処方します。改善があれば、症状がなくなるまで薬を続けてもらいます。今回が初回のような場合は慎重に診断する必要がありますが、投薬で改善につながり複数回繰り返している人には治療継続を勧めます。このように検査結果や治療経過を総合的に判断して診断につなげることがほとんどですから、何回か通院していただくことも珍しくありません。

子どもの場合、保護者が気づくことができる喘息の症状などあるのでしょうか?

貴嶋宏全院長 きじま内科4

お子さんの場合、走って咳が出る、大笑い・大泣き、深呼吸して咳が出る、夜中に咳をする、ゼーゼーと音がするなどの症状が目安になります。風邪をひいているわけでもないのに何げなく咳をしているケースでは、喘息を基礎に持っている可能性が高いと考えられます。また、家系に喘息の人がいる人は喘息の可能性を頭に入れておいたほうがいいですね。喘息は、アレルギーの原因となる物質の吸入や摂取、風邪、気温・気圧の変化、ストレス、運動などによって症状が悪化しますので環境を整えることも重要です。じゅうたんや枕、布団、ぬいぐるみ、空調のフィルターなど、生活環境や身の回りをきれいにしておくことも大切です。いつもが大丈夫だから大丈夫とはいえません、状態が悪く過敏になっているときは普段問題ないものでも、それが原因で良くならないこともあります。

喘息治療について教えてください。

基本は吸入ステロイド薬による治療になります。ステロイドは怖いというイメージがあるかもしれませんが、吸入ステロイド薬は経口ステロイド薬とは異なり、通常の投与量では長期使用しても全身性の副作用の心配はほとんどありません。喘息症状が無症状となるまで吸入ステロイド薬を増やし継続する必要があります。喘息症状を「炎」、炎症を抑える働きがあるステロイドを「水」に例えることがあります。燃え上がっている炎を消すためには、水をチョロチョロかけずに大量にかけるでしょう。喘息の治療も同じで、症状に見合う量の薬で短期に炎症を抑えていき、その後も種火が燃え上がらないように薬の継続使用が重要です。発作治療の期間が長期化すれば、高齢者や体力のない人だと体への負担が大きくなります。できるだけ早く症状を抑える方針で治療を行っています。喘息治療薬は進歩してきていて、治療で良好な状態にコントロールを図れるようになってきています。

小さな症状を見逃さず、迅速な対処を

やはり喘息の患者さんが多く来院するのですか?

貴嶋宏全院長 きじま内科5

8割は喘息の患者さんです。その他は、アレルギー関連の鼻炎や結膜炎、一般的な生活習慣病の高血圧や糖尿病、脂質異常症などの患者さんも診療しています。小児も乳児から診療しており小児科で改善されなかった子どもたちが多いです。最近はコロナ禍で咳が出ると気まずいからと来院する人が増えましたが、夜間の咳嗽で眠れなかったとか、ゼーゼー・ヒューヒューと喘鳴があったがさらにきつくなってきたからと、切羽詰まってからの受診もよくみられました。継続治療の重要性を知ってはいても、なかなか病院に足が向かないようです。

診療の際に大切にしていることがありましたらお聞かせください。

患者さんと自然体で向き合うようにしています。呼吸器科の診療は、デジタル的な数値だけでは判断できないことが多いため、患者さんにいろいろお聞きしながら診療します。ゆえに診察時間が長くなってしまうのですが、咳の程度や頻度、時間帯、その他に合併している症状などを聞かなければ適切な治療ができません。呼吸器科の診療では時折、「息苦しい」と受診された患者さんの中に心不全が隠れているようなケースがあります。そういう循環器系の疾患は診断が遅れると重篤な事態に陥ることもあるため、見逃さないように常に考えておくことがとても大事です。その点は、勤務医時代に救命救急センターや救急の外来で多くの患者を診てきた経験が生きているのかなと思います。

読者へメッセージをお願いします。

貴嶋宏全院長 きじま内科6

当院は、診ることができる範囲で先見性をもって適切に診療する方針です。より高次の医療が必要な場合は、迅速に適切な病院に紹介します。皆さんに「行ってみようかな」と思ってもらえる医院でありたいですし、「来て良かった」と思っていただければうれしいですね。呼吸器系の病気に関しては当院をセカンドオピニオン的に使っていただいても良いと思います。地域の方々に内科医として貢献することができる医師をめざしていきますので、気になることがある方は気軽に来ていただければと思います。

Access