舟橋 康人 院長の独自取材記事
みちかぜクリニック
(春日井市/神領駅)
最終更新日:2025/10/10
春日井市で2022年から診療を行っている「みちかぜクリニック」が、2025年9月1日に建物を新築し、再スタートを切った。薄いグレーの壁と少し照度を落とした内装は、まるでおしゃれな飲食店のよう。舟橋康人(ふなはし・やすひと)院長は、名古屋大学卒業後、2度の米国留学を経験。研究に打ち込み、友人にも恵まれ「最高の時間だった」と振り返る。「内科と外科の両方のアプローチができる」ことに魅力を感じ泌尿器科を専門に選んだが、現在は内科・乳腺外科・泌尿器科の3科を一人で担当。「内科のことがわかる泌尿器科、泌尿器科のことがわかる内科」という独自の診療スタイルで、患者に寄り添う。新しい建物に込めた「クリニックらしくない」こだわりと、総合的な診療体制について話を聞いた。
(取材日2025年9月8日)
「クリニックらしくない」空間づくりへのこだわり
クリニックを新築し、2025年9月1日にリニューアルオープンされたそうですね。

はい。施設の老朽化により建て替えを決断し、9月1日から新しい建物での診療を開始しました。こだわったのは「クリニックらしくない建物にする」ということ。壁紙の色も通常は白だと思いますが、白い壁紙は一つもないんです。薄いグレーを基調にして、照度も落としました。クリニックというとだいたい明るいですが、飲食店のような雰囲気を出そうと考えました。明るすぎても交感神経が刺激されて落ち着かないので、少し照度を落として落ち着ける空間を意識しました。受診をためらいがちな泌尿器科や乳腺外科の患者さんも多いので、勇気を出して来てもらった方がリラックスできる環境づくりを心がけています。動線に関しても効率性を重視して、間取りをこだわって考えました。
新しい建物で診療効率はどう変わりましたか?
以前は1階と2階に分かれていたんですが、今回ワンフロアにしたことで動きが格段に効率化しました。階段の面積もなくなったので、その分広く使えるようになりましたね。特にこだわったのは受付をかなり広くしたこと。事務スタッフが効率的に動けるようにして、患者さんの受付待ち時間、会計待ち時間を少なくしようというのが大きな方針としてありました。駐車場の収容台数も大幅に増やしました。以前はインフルエンザの流行時期になると駐車場が足りない状態でした。この地域は車社会ですから駐車場の確保は重要ですね。待合室は診療科ごとに左右に分けていて、さらに発熱患者さん用の待合エリアを設け、プライバシー確保や院内感染対策に留意しています。
開業の経緯について教えてください。

もともと全然開業する考えはなく、自分は大学でポストをめざしていくものだと思い、長年大学病院に在籍していましたが、40歳を過ぎて大きな組織だと自分の意見や提案がなかなか通らないという限界を感じるようになりました。そんな中で小さな規模でもいいから自分が正しいと思うようにやりたいという思いが強くなって、開業を選択したんです。このクリニックはもともと内科の先生と乳腺外科の先生がやっていたところを泌尿器科の私が引き継いだので、内科、乳腺外科、泌尿器科という組み合わせになりました。名古屋の自宅から通勤圏内でちょうどご縁があったので、2022年に継承というかたちで開業しました。今は専門の先生に週1~2回来ていただいていますが、基本は私が3つの科をすべて診ています。開業してみて、自分の理想とする医療を追求できる環境をつくることができ、良かったと思っています。
内科と泌尿器科の専門性を生かした総合的な診療を追究
泌尿器科を専門に選ばれたのはどうしてですか?

泌尿器科は薬物療法から手術まで、尿路の治療を内科と外科の両面からできるところに魅力を感じました。需要があるにもかかわらず、当時は泌尿器科の医師の人数が少なかったことも選択の理由です。がんや排尿障害といった一般的な泌尿器科診療の他、腎移植や血液透析では内科的管理もしておりましたので、内科メインで開業することに特に不安はありませんでした。名古屋大学病院時代には、アメリカに2度留学することもできました。アメリカの生活は毎日がすごく刺激的でした。生涯の付き合いになるような友人もできて、本当に医師になって最高の時間でした。
3つの診療科を一人で担当する強みは何でしょうか? また、患者層についても伺います。
内科のことがわかる泌尿器科、泌尿器科のことがわかる内科、両方からのアプローチができるというのが当院の強みです。得意なのはやはり泌尿器科で、ずっと手術が好きだったものですから、今でも日帰りの小さな手術はやっています。それ以上の手術が必要な場合は大きな病院に積極的に紹介しています。乳腺外科を標榜しているクリニックやマンモグラフィを有するクリニックは、春日井市では希少なので、しっかりと責任を果たしていきたいと思います。内科は近くのかかりつけとして高齢の方が多いです。泌尿器科は若い人の尿路感染から高齢者の前立腺肥大症まで幅広く、小児のおねしょの相談も結構あります。更年期障害のような、どこの科に行っていいかわからない患者さんは男女ともに多いですね。
幅広い検診の体制についてお聞かせください。

婦人科がん以外のすべてのがん検診に対応しています。胃がん検診は胃内視鏡検査とバリウム検査を選べて、乳がん検診はマンモグラフィと超音波検査の両方を受けられます。1日でまとめて検査したい方にとって便利でしょう。異常が見つかった場合、ある程度の精密検査から治療まで院内で対応できるのも強みです。便潜血陽性であれば大腸内視鏡検査やポリープ切除を、乳がんや前立腺がんの疑いがあれば細胞診や生検をやった上で病院への紹介を考えます。基本的に病院を受診するまでに結果が出るので、診断から治療へ迅速に移れるというメリットもあるんですよ。当院は近隣のほとんどの病院と連携しており、さらなる検査・治療が必要と判断すれば積極的に紹介しています。また病院での治療後の定期通院で当院を利用される方も多いですね。いつでも幅広く相談できるクリニックと、専門的で高度な診療を行える病院が、お互いを補完し合う関係が理想と考えています。
背景も含めて患者を理解、とことん寄り添う診療を
診療において大切にされていることは何ですか?

頼ってきてくれた方の力になれるよう最善を尽くすというのが基本姿勢です。内科、乳腺外科、泌尿器科以外の相談でも、診察中にそれ以外の悩みを訴えられた場合は、できる限りその場で調べるなどして期待に応えようとしています。最小限の検査で診断に至るというのが、医師の腕の見せどころだと思っているので、診断が難しい疾患や症状についても、むやみに検査することなく一緒に悩んできちんと答えを出してあげたい。病気ではなく人を診るというのが私のモットーで、診察の中に雑談を入れたりしながら、その人の生活自体を把握し、人生観にも共感できるような医師をめざしています。目や腰の不調を訴えられても、専門外だからと即座にお断りするのではなく、調べて薬を出し、それでも治らなかったら紹介するというスタンスです。
スタッフの採用で重視していることはありますか?
スタッフについては、経験よりも人柄を重視しています。あとは共感力や学習意欲があるかどうかを見て採用しています。たとえ経験がなくても、入職後にトレーニングを積めばカバーできると思っています。当院のスタッフとなったからには、できるだけ早くクリニックになじんで、長く勤務してもらいたいと思っています。患者さんの待ち時間を減らすために、スタッフの数を増やして対応していますが、人数が増えれば全体のチームワークが大切になってきますから、皆で力を合わせていけたらと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

クリニック選びで後悔しないためにも、事前に2つ3つクリニックをある程度調べた上で、良さそうなところを受診していただければと思います。そして、何か症状があった時に自己診断するのではなくて、症状が長引くようであれば、できるだけ早く医師に相談することが大事です。健康診断を何年も受けていないのであれば、健康のためにも、早期発見のためにもぜひ定期的に受けるようにしてほしいです。実際診療していると、もっと早く来てくれたら、という症例もありますから。当院はいろんな科を総合的に診療できるというのが特徴で、1日でまとめて検査もできます。受診をためらいがちな泌尿器科や乳腺外科も、しっかりと話を聞いて診察しますので、勇気を出して来ていただければと思います。

