中田 好則 院長の独自取材記事
中田整形外科
(船橋市/下総中山駅)
最終更新日:2021/10/12
下総中山駅南口から新川通りを7分ほど歩くと左側に医療ビルが見えてくる。その3階にあるのが「中田整形外科」だ。自ら、話好きという中田好則院長の人柄に惹かれてか、理学療法士などのスタッフも明るい雰囲気。集合写真撮影時のやりとりを見ても風通しの良さがうかがえた。「原因から症状、治療法まですべてお話ししていると、どうしても時間が長くなってしまいます。診療はファストフードではなくフルコース、これが私のやり方なんです」と中田院長。その丁寧な診察によって、主訴の裏に隠れていた重篤な内科疾患を発見することも多いという。そんな中田院長に診療への思いや、クリニックの特徴について話を聞いた。
(取材日2020年3月14日)
原因から病態、治療法、手術内容までじっくりと説明
こちらにはどんな方が多く来院するのですか?
子どもからご高齢の方まで非常に幅広い年齢の方がいらっしゃいます。私は脊椎やスポーツ障害を専門にしており、その分野については中高生が多いですね。特に脊柱が弯曲してしまう脊柱側弯症は思春期の女の子に多いですね。そのほかに、子どもでは環軸関節回旋位固定という首が突然動かなくなってしまう症状もまれにみられます。中高生では腰椎分離症、腰椎椎間板症、膝や足関節の障害が多く、青年から中年期になると、 腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどが増えてきます。ご高齢では骨粗しょう症による背骨の圧迫骨折や変形性膝関節症などさまざまです。同じ病名であっても原因が人によって異なりますので、注意深く検査や観察を行う必要があります。
そもそも先生はなぜ整形外科の医師をめざされたのでしょう。
内科は血液検査などの結果で判断することが多いですが、私は数値を見てうんぬんするのはあまり好きではなかったのですね。それよりも、自分の目で見て「これはちょっとおかしいな」などと確認しながら治療をするほうが好きだったので、整形外科に進みました。研修医時代、整形外科の教授で非常に勉強熱心な方がいらっしゃいました。朝、7時頃から夜中の2時くらいまでずっと勉強しているすごい先生だったのです。その教授に影響を受けて、脊柱を専門にしました。脊柱は体の中心にあり、神経も通っているのでとても大事な部位だと思い、脊柱と脊椎の疾患について研究を重ねてきました。
診療の際、どんなことを心がけていますか?
その症状が起きている原因から病態、対応する治療法、もしも治療がうまくいかなかった場合の対処法まですべてお話しすることです。例えば膝関節症の場合、発症にはいろいろな因子が関わり、それらについてすべて説明しています。単に加齢だから、加齢性変化だから、とは絶対言いません。加齢という言葉は大嫌いです。ヘルニアで受診した患者さんには、骨の模型を見せながら、原因からヘルニアが起きる仕組み、腰椎にかかる圧迫について、さらに手術内容まですべてお話しし、患者さんが納得して満足していただけるまで徹底的に説明しています。診療が5分で終わるファストフードが好きな人もいるかもしれませんが、私の場合はたっぷり時間をかけるフルコース。これが自分のやり方なのです。正直、すごく疲れますが(笑)。お一人の方にかける時間が長いので、今は、予約制にしています。
先入観を持たずに診察し、隠れている疾患を見逃さない
じっくり診てくださると患者さん側も安心すると思います。
ここはクリニックですが、私は大学病院レベルの治療と知識をモットーにしています。診察時に一番重視していることは、見逃しをしないことです。腰が痛いという訴えでも、エックス線検査でじっくり観察した結果、大動脈瘤を発見したことが数回あります。先日も腰痛を訴えてきた方がいて、よく調べたら腎盂炎を起こしていることがわかり、すぐに病院に紹介しました。このように、整形疾患の裏に内科の病気が隠れている場合も多いので、他科の疾患に関する知識も用いて、診断の質を高めています。実は、私の両親は、適切な診断が受けられなかったことが一因で亡くなりました。だからこそ、診断に全力を尽くし、自分の専門外のことも常に考えるようにしているのです。人間は誰しも先入観によって、物事が正しく判断できなくなってしまうもの。ですから、先入観を持たずに診療するよう心がけているのです。
こちらでは院長以外の医師も診療しているのですね。
はい。JCHO船橋中央病院や他の総合病院などから専門の医師に来てもらっています。それぞれ股関節や膝関節、骨折などの専門分野を持っていますので、より適切な診察を受けていただけると思います。高い専門性を持つ医師たちですから、私では気がつかなかったことに気づくことも多いですね。症状によっては、その専門の医師に診てもらうよう患者さんを振り分けることもあります。手術は、脊椎、脊柱についてはJCHO船橋中央病院で、私が手伝って手術しており、人工関節などは当クリニックに来ている医師が手術を行います。側弯症の手術は、慶應義塾大学病院や済生会習志野病院にお願いするケースが多いですね。
リハビリテーション室も広いですね。理学療法士は何人いるのですか?
この4月からは、5人体制となっています。やはり整形外科クリニックにはリハビリ室が必要ですね。医師の診療だけでは、エックス線写真やMRIなどの静止画で判断して、提供できる治療法は飲み薬・塗り薬・注射ですが、理学療法士は、ここが動きにくい、ここが固いというように体の動きを見ながら判断して、動きに対応したリハビリや運動指導をしていきますので、それだけ実感を得やすいでしょう。リハビリだけで済むことも多いですね。「患者さんの痛み方が変だ、何か他の病気ではないか」などと理学療法士から指摘されて、別の重篤な疾患を発見できたケースもあります。当院は、チーム医療をめざしています。理学療法士含めスタッフはみんな仲良く、アットホームな雰囲気です。患者さんたちも楽しそうにリハビリをしています。
臨床家として新しい治療法や診断を発見するのが夢
これまでで何か心に残ったエピソードについてお話しください。
研修医1年目の時に担当していた10代の患者さんが亡くなられたことがありました。葬儀の際、ご家族の方が日記を見せてくれたのですが、そこには私の医師としての接し方・話し方などがたくさん書かれていて「これからも頑張らなくては」と強く感じたことを覚えています。また、勤務医時代に、手術を担当した70歳代の女性の患者さんが亡くなられたこともありました。ご家族のところに説明に伺ったところ、患者さんのお嫁さんから「気を落とさずに頑張ってください」と逆に励まされたのは、私にとって大きな出来事でした。これらの経験から学んだのは、どのように患者さんに接するべきかということ。それも上から目線ではなく、謙虚に接することがとても大切ですね。われわれ医者は病気や体のことなんてほんの数パーセントしかわかっていないのです。だから偉そうにしてはいけないんですね。
ところでプライベートはどのようにお過ごしですか?
趣味はテニスとアルゼンチンタンゴです。アルゼンチンタンゴはもう16年以上やっていますね。最初は患者さんにソシアルダンスを誘われたのがきっかけで、その後アルゼンチンタンゴを始めました。これがなかなか難しくて、5年くらいたってやっと少し踊れるようになった感じです。最初は日本人の先生に習っていたのですが、アルゼンチンの先生に教わるようになってから上達しました。あとは高校時代の友人と高尾山や川越祭りに出かけたり、みんなでおしゃべりしたり。私は人と話すのが好きなんですよ。テニスも好きですが、腰を痛めてからちょっと控えています。腰のほか肩なども悪いので、患者さんの気持ちがよくわかります。どの治療法が良いのか、自分でもいろいろ試しているんですよ。
最後に今後の展望をお聞かせください。
自分自身のキャパシティーはある程度もう決まっていますので、特に患者さんを増やしたいとは思っていません。それよりも確実に診断して、確実に治療をしていくことに専心していきたいです。また、臨床家として新しい診断や新しい治療法を見つけることが一つの夢ですね。「100個種植えをしても芽が出てくるのは数個だから、できるだけ多く種植えしたほうがいいよ」と若手にはよく話すのですが、なかなかやらないので自分がやるしかないかなと。今は常識が非常識になったり、非常識が常識になる時代です。先入観をなくして、何か新しい発見ができるようさらに努力していきたいですね。