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西浦 勲 院長の独自取材記事

西浦歯科医院

(吹田市/吹田駅)

最終更新日:2022/05/13

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吹田駅から徒歩約10分のビル2階にある「西浦歯科医院」。西浦勲院長は地元近くの吹田で開院し、20年以上になる経験豊富な先生だ。予防歯科、小児歯科、訪問診療を中心に幅広い診療に取り組み、妊婦や小さな子どものいる保護者を対象とした講演や相談会の場を小児科の先生とともに設けるなど、地域住民の歯の健康を支えてきた。「患者さんが健康な時から老いていくまで、切れ目のない医療を大切にしていきたい」と語る西浦院長。吹田市民の健康に歯科医師がいかに寄与できるか、という大きなテーマにエネルギッシュに取り組む姿勢から、地域住民の健康を支えたいという想いがにじむ院長に、自身の診療について話を聞いた。

(取材日2021年3月4日)

子どもから高齢者まで、予防の大切さを伝えていく

なぜこの吹田で開業されたのでしょうか?

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まずは地元の近くであることです。医療を行うなら、やはり慣れ親しんだ地域に貢献したいという気持ちがありました。また、吹田市は当時から口腔衛生に対する施策や取り組みがしっかりしていて、歯科健診にも積極的でした。例えば子どもの1歳半、2歳半、3歳、6歳健診や、妊婦・成人を対象にした自己負担なしの歯科検診と、これだけいくつも実施している自治体はそうないと思います。私が考える歯科医療を現実のものにするにはうってつけの環境だなと。ただ20年前に開業した当時は、虫歯予防は歯が生えそろう前の0歳児から力を入れていけば大丈夫だと考えていましたが、それでは遅いということに気づきました。現在は、お母さんのおなかにいる時からの予防歯科に取り組んでいます。妊婦歯科健診や小児科医師と連携して行う「おしえてドクター」というセミナーで、積極的に発信しているんです。

セミナーでは、どんなことを伝えていますか。

1つは断乳の大切さ。お乳をお子さんに与えるのは愛情表現だから、お子さんが求めるなら与えればいいとおっしゃる方もいますが、虫歯予防という観点からするとお勧めできません。母乳には乳糖という糖分が含まれているため、寝かしつけながら母乳を与えるのは歯には良くないんですよ。就寝時は唾液の分泌が減りますから、口腔内が強い酸性のまま長時間過ごしてしまうことになります。もう一つは食習慣の適正化ですね。口の中はいつもは弱酸性、食事をすると酸性度が強まります。食事時間をきちんと定めず、だらだら食べていると口の中が強い酸性のまま、長時間過ごすことに。これも虫歯予防の観点からするとかなり望ましくないわけです。この2つにポイントを絞ってお伝えしています。

高齢者の予防にも力を入れているそうですね。

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高齢者に関しては、要介護期間を短くすることが医療の使命かなと。その中で歯科医師ができるのは、摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎を防ぐことです。というのも、口腔内の健康を保てなければ、食べるものが偏り、栄養が落ちていきます。飲み込む力や筋力も衰え、摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎の原因にもなり得ます。誤嚥性肺炎を起こしたら入院ですから、その間にまた体力が落ちてしまうといったように、悪循環が続くんです。このような事態を防ぐためにも、予防が欠かせません。筋力は再生できますが、歯は一度悪くなると再生不可能ですので。健康を維持したければ、今から努力する必要があります。若いときから歯も体も健康を意識していくことこそが、健康寿命の延伸につながるんです。

通院できない高齢者には訪問診療で対応

診療の合間を縫って訪問診療を行っておられるんですね。

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歯がたくさん残っている高齢者ほど、健康寿命が長いというお話はお聞きになったことがあるのではないでしょうか。しかし、高齢になればなるほど歯周病や諸々の疾患で口腔内の健康を保ちにくいのが現実。歯周病で歯茎が下がり、歯根の象牙質が露出した部分が虫歯になって、ご自分の歯がなくなっていくという状態をくい止めたいと思っています。最近では治療器具も進歩して、訪問診療が保険適用となり、在宅での診療を気軽に選択することができるようになりました。食べる楽しみは生きる意欲にもつながります。これからも訪問診療に力を入れていきたいですね。健康なときから老いていくまで切れ目のない支援を行い、衰えをなだらかにしていきたいと考えています。

訪問診療に関するエピソードを教えてください。

開業以来ずっと診療させていただいていた患者さんが先日、93歳でお亡くなりになったんです。歯の健康を守ることに熱心な方で、定期的な検診にも積極的に通ってくださって、通院が難しくなってからは訪問診療をさせていただいていました。この方は亡くなられた時、歯が24本も残っていました。通常、大人の歯は全部で32本ですから、すごいことだと思います。歯が残せたのはご家族がわれわれのケアを見て、普段から自宅で口腔ケアを行っていたからこそで、まさに私たちがめざす理想の形です。また高齢者が食物をきちんと噛めるためには、入れ歯を快適に機能させることも大切です。入れ歯がゆるくなったり、痛くて噛めなかったりしている場合は、調整や修理も対応していますので、気軽にご相談ください。

めざす歯科診療についてお聞かせください。

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可能な限り健康な歯を残して、なるべく抜かないのが当院のポリシーです。治療も大切ですが、それにも増して重要なのが予防歯科。この記事を読んでいる皆さんは治療が終わった後、気が楽になって放置していて、また虫歯や歯周病になったという経験はないでしょうか。そういった悪循環を防ぐには、歯磨きやデンタルフロスなどの自宅でのケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。痛みが出てから歯科医院を訪れるといったことを繰り返していると、治療期間も費用も思った以上にかさむことが多いので、ぜひ定期的なメンテナンスを習慣にしていただきたいですね。何歳になっても自分の歯でおいしく食べられ、豊かな人生を送れるようにすることが、私の目標です。

地域の健康に歯科医師はもっと寄与できると信じて

診療以外の活動にも熱心に取り組んでおられますね。

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先ほどお話ししたセミナー以外にも、幼稚園と保育園の園医や、中学校で学校健診や保健指導を行っています。また公民館での市民講座やケアマネジャー向けの講演会で、オーラルフレイル対策のお話をさせていただくことも。子どもたちの歯を守り、高齢者のオーラルフレイルを予防していくには、歯科医院で待っているだけでは駄目なんです。セミナー後に「もう少し話が聞きたい」と尋ねてこられる方もいますし、少しでも地域貢献できればうれしいですね。私自身もデータの精査や資料作成を通じて知識が増えて、勉強になることは多いですよ。また、過去には認知症と歯科の関係についての講演も行いました。歯科領域にとどまらず、総合的に患者さんを診ているからこそ、日々の診療で小さな異変にも早く気づくことができると思っています。

全身の健康を視野に入れた歯科治療が重要なんですね。

周術期治療では、大きな手術の前に口腔ケアを行うことで、肺炎や創部感染リスクを減らすことができると考えられています。全身の健康における歯科という位置づけが重視されるようになったんです。特に糖尿病の合併症として歯周病が関係しているエビデンスはたくさん出てきており、今後は基幹病院や医科の開業医の先生方との連携をより緊密にしていく必要があると思います。かかりつけ医である私たちが、患者さんの虫歯や歯周病の進行度と合わせて健康状態を把握し、必要な場合はスムーズに基幹病院での精密検査や治療につなげることで、早期治療の可能性は高まるはずです。私は虫歯や歯周病を治療することだけが歯科医師の役割だと限定して考えていません。むしろ歯科医師が頑張れば、もっと地域の方々の健康に寄与できると確信しています。歯科医師は積極的に他診療科との連携を強化していくべきですね。

今後、続けていきたいことはありますか?

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当院は歯科医師臨床研修施設として、研修医への指導や講義なども行っています。若い先生が治療にあたる場合は、私が必ずアシストにつきますが、謙虚に頑張り成長する姿を見ることは、私の喜びでもあります。また、自分が長く診てきた患者さんを困らせないためにも、次世代の歯科医師を育て続けていくことは私の責任です。歯科衛生士も同様に学生の見学や研修を受け入れています。当院の歯科衛生士は豊富な経験を積んだベテランがそろっていて、一度、結婚や出産、育児などで退職しても、生活が落ち着いたら当院で復職することも多いんです。歯科衛生士が長く勤めてくれることは当院の宝であり、何よりの自慢ですね。

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