林 明澄 院長の独自取材記事
林ウィメンズクリニック・新大久保
(新宿区/新大久保駅)
最終更新日:2023/04/14
JR山手線新大久保のメインストリートに面したビルの3階にある「林ウィメンズクリニック・新大久保」。台湾出身の林明澄(はやし・めいちょう)院長は日本語、中国語、台湾語、英語に堪能で、聖路加国際病院で20年ほど勤務した後、その語学力を生かした診療をしたいと国際色豊かなこの地で2004年に開業した。訪れる患者の多くは外国人で、妊娠・出産に関することから、月経不順、不妊症、更年期障害など、広く産婦人科の診療を行っている。「患者さんがここで話をして体も心も軽くなって帰っていくような診療が理想です」と穏やかな笑顔を浮かべる林院長。誠実な人柄は患者にも伝わっているようで、友人から紹介されて訪れる患者も増えているという。そこで林院長に、自身の診療スタイルや患者への思いなどを聞いた。
(取材日2023年3月29日)
日本語、中国語、台湾語、英語の4ヵ国語で診療が可能
現在、クリニックにはどのような患者さんが来ていますか?
私は台湾南部出身で、新大久保のエリアは、中国人、韓国人、東南アジアの人をはじめ、ここ数年はネパール人やベトナム人も増えてきました。アフリカ人や英語圏の人もいます。言葉が通じる所を探して、私のところへたどり着かれるようです。年齢としては50歳以下の人が多く、相談内容は、妊娠についての相談や妊婦健診、腟炎、子宮筋腫などの一般的な婦人科の症状、生理不順、不妊などホルモンに関わることや更年期障害など、ライフサイクルの中で起こるさまざまなお悩みに広く応えています。
患者さんと接する時に気をつけていることはありますか?
国籍によって文化が違うため、日本の価値観で話をするのではなく、相手の価値観を尊重して理解するように心がけ、丁寧にコミュニケーションを取れるように努めています。幸い私は台湾の生まれなので、寄り添えるところもあるのではないかと思っています。クリニックの理念に思惟(しゆい)という言葉を入れていますが、これはよく考えるという意味で、病気の内容や患者さんの背景を考え抜いた上で、求められている医療を探していくことを理想としています。それと同時に、患者さんが少しでもリラックスできるようにユーモアのある診療にしたいですね。最初からそのように接するのは簡単ではありませんが、コミュニケーションを重ねることで信頼関係を築いていきたいです。
妊娠前や妊娠後に日常生活で気をつけたほうが良いことはありますか?
妊娠前も妊娠後も食事を含めた生活環境を整えることで、後の母親と赤ちゃんの人生が変わってきます。糖尿病や甲状腺疾患も注意してほしいことの一つで、妊娠前検査などで自分にそういった病気がないかを知っておき、それを理解した上で妊娠生活を送ることが大切です。また、多忙な人も多いですが、妊娠によって体に負荷がかかりいろいろな病気を早期発見することもあるため、妊娠を契機に自分の体を見直すこともお勧めします。妊娠後については、大切なのは妊婦健診をきちんと受けること、そして、規則正しい生活を送ることです。塩分や体重増加に注意しながらバランスの良い食事をし、喫煙はもってのほか、アルコールも控えましょう。
患者の背景に寄り添い、より良い選択を
不妊治療にも対応されているそうですね。
不妊治療は日進月歩で進んでいますが、当院のような小さなクリニックでできるのは最小限の医療のみとなります。基礎体温を計ってもらいホルモンが正常かどうかを調べ、ホルモンの数値や薬について理解していただき、焦らず続けて来てくれる人のサポートをしています。不妊症は女性だけの問題ではなく、男性側に問題があることもあります。もしくはどちら側にも原因が見当たらないということも。当院ではご夫婦で診察に来る方も多いですね。また、これ以上の高度な医療を希望される場合は、専門の医療機関にご紹介をしています。
望まない妊娠をしてしまった患者さんにはどのように対応されるのですか?
ご本人の事情や希望を十分に聞いた上で、手術による人工妊娠中絶手術をお受けすることもありますが、コミュニケーションがうまくいかないときにはお断りすることもあります。少々立ち入ったことを聞くことになりますが、ご本人に納得していただかなければ処置を進めることはできません。特に未婚の人の場合は丁寧に話をさせていただき、どうするのが本人にとって一番良いかを考えてより良い方法を選択しています。人工妊娠中絶ができる時期を過ぎてしまっている場合は当院では対応できないため、区役所などへの相談を促したり、対応できる医療機関に紹介したりしています。
これまでの患者さんで、印象的だった人はいますか?
印象に残っているのは、私では対応が難しいまれな疾患でお悩みの方ですね。後からこうすれば良かったかなと思うこともあり、そういった患者さんのことは覚えています。あとは、日本の文化をよく知ってくれている外国人の方は印象に残ります。ある程度こちらの話を理解してくれるので、コミュニケーションもスムーズですね。
国ごとの文化の違いを理解し、幅広いニーズに対応
先生はなぜ医師の道を志したのですか?
私の叔父が台湾で小児科を開業していました。私もお世話になりましたし、村の人を助ける姿を見てすごいなと思っていました。9歳の時に父の仕事の関係で日本に来たのですが、手に職をつけたいと考え、叔父さんの影響を受けて医師の道を志すことにしました。産婦人科を選んだのは、内科や外科のようなどちらかの領域だけを診るのではなく、内科的な診療も外科的な治療もできる診療科だったからです。聖路加国際病院の産婦人科には先輩が多かったのも選んだ理由の一つでした。どんな職でもそうだと思いますが、この仕事をしていくうちに自然にやりがいが生まれていきました。患者さんに感謝されたり、東京都の医療機関案内の外国人の担当者から紹介を受けたりすることが増えたこと、友達からの紹介で来る人がいること、それらがすべてやりがいになっていますね。
先生の趣味や、休日の過ごし方なども知りたいです。
趣味の一つはカエルのグッズを集めることです。台湾にいた頃、夏休みに村へ遊びにいくと田んぼにカエルがいて、捕まえたり、観察したりして遊んでいました。ある時、日本で医師になって少し気持ち的にも余裕が出てきた頃、ふとカエルの写真を目にする機会があったんです。それを見た時に「かわいいなあ」と思い出したことがきっかけで集めるようになりました。集め出すといろいろなアイテムがあって、院内のさまざまな場所に飾っています。休日は、情報収集するために図書館で英語の雑誌を読んだり、デパートや専門店、公園に行ったり、おいしいものを食べたり。長い休みのときには郊外で自然にふれるなどして、リフレッシュしています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
私も年齢とともに体力の衰えを感じてはいますが、体力が続く限り、ここでの診療を続けていきたいと思っています。たまに多くの患者さんが来てくれていて、一人では対応しきれない日もあるほどです。日本語以外の言語で診療ができるクリニックはまだまだ少ないため、少しでも患者さんのニーズに応えられるように、頑張っていきたいと思います。日本語、中国語、台湾語、英語がある程度話せますので、何か相談があれば気軽に来てください。
自由診療費用の目安
自由診療とは緊急避妊薬(アフターピル)/6000~1万円