江川 信一 院長の独自取材記事
江川内科消化器科医院
(奈良市/奈良駅)
最終更新日:2025/12/15
奈良駅から徒歩8分の「江川内科消化器科医院」。江川信一院長は済生会奈良病院で17年務めた後、「開業医として自分の実力で、患者さんから信頼される存在になりたい」と2005年に開業。数多くの検査経験に基づく挿入法、さらにAIを搭載した先端の内視鏡により、苦痛の少なく精密な大腸内視鏡検査をめざしている。「対症療法ではなく、原因を突き止めてから薬を出す」診療方針を貫き、現在も近畿大学奈良病院の客員教授として後進指導を続ける江川院長。医師という仕事に深い愛情を持つ院長に、大腸内視鏡検査と経鼻胃内視鏡検査へのこだわりや検診の重要性など幅広く語ってもらった。
(取材日2025年10月30日)
長年の診療経験をもとに、素の自分の実力で挑む
開業までの経緯と、この場所を選ばれた理由を教えてください。

奈良県立医科大学を卒業後、大学院で医学博士を取得し、済生会奈良病院に17年間勤務しました。最終的には内科部長として診療にあたっていましたが、40代半ばで開業を決意したんです。病院では研修医の指導や入院患者のチェック、部長回診など雑用も多く、本当にやりたい消化器内視鏡に専念できません。「開業医という自分だけの実力の世界で、素の自分を試してみたい」と思ったんです。病院は組織に守られていますが、開業医は自分の力一つで患者さんから信頼を得なければならない。20年間培った消化器内視鏡の実力を十分に発揮したいと考えました。この場所はもともと事務所だった広い空間で、内視鏡を2つ設置し、リカバリー室も確保することができました。階段やエレベーターのない1階であることも、高齢者に優しいと思い決めました。
内視鏡の設備にこだわられているそうですね。
最大の特徴は、AI搭載の内視鏡システムです。経鼻胃内視鏡と大腸内視鏡、どちらにもAIシステムが入っていて、私の目とAIの目、いうなれば2人の目で病変を探すことができています。最近はAIもどんどん性能が上がってきていて、場合によっては医師よりも先にAIが病変を見つけるケースもあるんです。見落としが減り、診断精度の向上につながっています。また開業時から内視鏡を2台設置し、非常勤の医師と並行して検査ができる体制です。県内ではまだ多くはないカプセル内視鏡も導入しているのも特徴です。小腸は10メートルもあり通常の内視鏡では検査が難しいのですが、カプセルを飲むだけで小腸全体を調べることができるのです。朝飲んで家に帰り、夕方機械を外しに来るだけなので、患者さんの負担も少ないと思います。
内視鏡検査の実績が非常に豊富とも伺っています。

この40年間で数多くの大腸内視鏡検査に携わってきました。そのため京都府や大阪府など、遠方からも患者さんがお越しくださいます。内科系の先生からの紹介も多く、病院から診断が難しい患者さんを紹介されることも。開業後も母校の奈良県立医科大学の中央内視鏡部で非常勤医師として後進の指導にあたり、現在は近畿大学奈良病院の内視鏡部客員教授を務めています。若手医師に内視鏡技術を教えることは、自分自身の学びにもなります。診断・治療・研究・論文執筆と長年経験を積んできましたが、「同じことを続けていく中で、漫然とではなく一生懸命行うことで、必ず自分なりの工夫が出てくる」という思い胸に、今も日々研鑽を積んでいます。
患者の苦痛を最小限に、原因究明にこだわる診療
内視鏡検査における工夫について教えてください。

私は「パターン化挿入法」という独自の方法で大腸内視鏡検査を行っています。患者さんの腸は百人いれば百人それぞれ違いますが、それに合わせていたら時間もかかるし、難しい。そこで自分のパターンに患者さんの腸を合わせるんです。空気を抜いたり体位を変えたりしながら、長い腸は縮め、きついカーブは緩くする。多くの経験をもとに訓練を重ね、今では2〜3分で盲腸まで到達が見込めます。また、過去に検査で苦しい思いをされた方などには鎮静剤を使用し、さらに苦痛を取り除きます。胃内視鏡検査では苦痛の少ない経鼻内視鏡を使用しています。鎮静剤をご希望の方は遠慮なく申し出ていただきたいです。患者さんが検査でつらい思いをしなくて済むようにしてあげたいんです。大腸ポリープも日帰りで切除でき、患者さんの負担を最小限に抑えることを常に心がけています。
診療方針と得意とする治療について教えてください。
私の診療方針は明確です。「対症療法ではなく、原因を突き止めてから薬を出す」ことです。おなかが痛いから痛み止め、下痢だから下痢止めという対症療法で済ませることなく、私は必ず原因を究明します。検便や採血、検査をして「あなたはこんな病気だからこんな治療をしましょう」と説明します。患者さんには「ちょっと面倒かもしれないけれど、ちゃんと調べて治療しましょうね」と理解していただくよう努めています。当院には炎症性腸疾患(IBD)の患者さんも多く通院されていて、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療に力を入れています。便秘治療も重視し、食物繊維や乳酸菌を重視した生活習慣へのアプローチと投薬の両輪で、改善につなげています。ガイドラインに沿った適切な診断と治療の提供をめざしています。
患者さんとの向き合い方について教えてください。

説明して患者さんが腑に落ちない様子のときは、もう一度ご説明します。さらに、「どうしてほしいといったご希望はありますか?」と患者さんの胸の内を聞くようにしています。検査してほしい人もいれば、してほしくない人もいるし、薬だけ欲しい人もいます。まず希望を伺った上で、ちゃんと調べて治療したほうがいいと説明し、同意を得てから検査を行います。難しい病名も正しくわかりやすく伝えたいので、どう説明すれば良いか日々考えていますね。私は若い頃から「好きな仕事をさせてもらって報酬をいただける、こんなありがたいことはない」と思ってきました。検査することが大好きで、患者さんと話したり診察したりするのも好き。きちんと診断できて適切な治療につながればうれしいですし、医師の仕事はその繰り返しです。常に先端の医療を提供したいとう使命感を持っていますので、勉強会に参加し講演も引き受けて、学びの場をつくっています。
検診で命を救い、地道な診療を続けていく
検診の重要性について教えてください。

「女性のがん死亡率の第一位は大腸がん」ということを知ってほしいですね。乳がんや子宮がんではなく、実は大腸がんで亡くなる女性が一番多いのです。やはり女性は大腸の検査を受けることに抵抗があるかもしれません。しかしながら、だからこそ死亡率が高いといえるのです。また、奈良市の胃内視鏡検診の受診率もとても低くて、これを改善したいと思っています。2年に1回の検診で早期発見につながれば、多くの命を救うことも望めます。大腸でしたら、まずは便潜血検査を気軽に受けてもらいたいですね。検診はとにかく大事。症状がなくても受けることで、将来の大きな病気を防ぐことが見込めます。当院では奈良市の胃内視鏡検診の予約もでき、その日に枠が空いていればすぐに受けることも可能です。
スタッフの皆さんについても教えてください。
看護師のうち2人は消化器内視鏡について専門的に学んだ経験があり、より特化した知識とスキルを持っています。長年勤務してくれているスタッフが多いことも自慢の一つで、受付スタッフの中には開業から20年近く続けてくれている人も多くいます。患者さんにとっても、行くたびに顔ぶれが変わることがなく、安心していただけるのではないでしょうか。スタッフ同士のコミュニケーションも良好で、みんなが先端の医療に携わっているというやりがいを持って働いてくれています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

原因究明をして適切な診断・治療をする、そういった当たり前のことをこれからも地道に続けていきたいですね。目の前の内視鏡診断・治療にしっかりと取り組んでいきます。消化器内科を中心に先端の診断・治療をめざしていますので、胃の痛み、胸やけ、胃もたれ、便秘、下痢、血便、腹痛があればぜひ受診してください。日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医としてだけではなく、日本内科学会総合内科専門医として、高血圧症や糖尿病など内科全般も診ています。大学院では呼吸器内科を専攻していたので、咳やアレルギーの呼吸器疾患も得意です。おなかの調子が悪いときや、その他の不調があれば、気軽に受診していただきたいと思っています。

