川崎 史寛 院長の独自取材記事
川崎医院
(西宮市/西宮駅)
最終更新日:2025/09/11
阪神本線・西宮駅および阪急神戸本線・夙川駅から徒歩約10分の住宅街にある「川崎医院」。2階建ての白壁のクリニックは、2025年6月に新築移転したばかり。院内も天井が高く、開放的な印象を与える。川崎史寛院長は、2002年の開業以来20年以上、地域に根差した診療を続けてきた。内科、消化器内科、外科の外来診療に加え、現在は訪問診療にも力を入れている。「勇壮なみこしを担ぐように皆で患者さんを四方から支えます」という力強い言葉からは、地域医療への深い想いが感じられる。また、地域の医師と協力して勉強会を立ち上げ、連携体制の構築にも努めている。「地域の開業医をうまく活用してほしい」と朗らかに話す川崎院長に、これまでの歩みや診療への想い、地域医療の未来について尋ねた。
(取材日2025年8月8日)
一人の医師として、運命共同体のような地域に関わる
医師をめざしたきっかけと、これまでの歩みについて教えてください。

医師をめざしたのは高校2年生の頃でした。父親が内科医として開業しており、24時間呼ばれる姿を見てきました。当時は自然なことと受け入れていたんです。近畿大学医学部を卒業後、大阪市立大学第一外科で「全身を診る」トレーニングスタイルに沿って、麻酔・救急・外科をやりながら内科も含めていろいろなことを勉強しました。その後は市中病院で消化器外科医として勤務し、開業前の約7年は神戸市北区の病院で外来と訪問診療に携わりました。開業して4年ほどで、訪問診療のできるかかりつけ医として地域に認知されたと思います。私自身も3年ほど前に狭心症の治療を受けましたが、現在は活動量計で歩数や睡眠状況を見ながら健康管理に努めています。全身運動とリフレッシュを兼ねて趣味のゴルフも月4回ほど楽しんでおり、医師も一人の人間として、自分の健康を大切にするのが患者さんへの責任だと考えています。
なぜこの地での開業を決めたのでしょうか?
訪問診療を念頭に置いて、地域に根づいた形で診療をしたいと考えていました。開業するなら自宅からすぐに駆けつけられる場所にしたかったんです。西宮を選んだのは、大阪からも近く交通の便が良くて、そして勤務医時代の病院が大阪方面で通いやすい場所だったからです。2002年に開業し、長年診療を続けてきて、この地域と運命共同体にあるように感じています。患者さんとそのご家族、地域の医療従事者の皆さんと一緒にこの地域の医療を支えていく。そんな思いで日々診療に取り組んでいます。20年以上築いてきた信頼関係を大切に、これからも地域医療に貢献していきたいと思っています。
診療で最も大切にされていることは何でしょうか?

0歳から100歳まで、幅広い年齢の患者さんの診療をしていますが、最も大切にしているのは「どうすればわかっていただけるか」と説明を工夫することです。例えば、血圧と血糖値が高い患者さんで、以前は2つの薬で済んでいたのが3つになった場合、患者さんは「なぜ薬の数が増えるのか」という疑問を持たれるでしょう。皆さんが症状を自覚されているわけではないので、例え話を用いたり、その方に合わせてお話しするよう配慮しています。専門用語ではなく、患者さんが日常に使われる言葉や身近な例を使って説明することで、治療への理解と安心感を持っていただけるのではないかと。一方的にお話しするのではなく、表情や反応を見ながら、伝わっているかどうか確認するのを大切にしています。最近はご家族の認知症についてもご相談いただくことが増えており、幅広いお悩みに丁寧に対応するよう心がけています。
患者と家族に寄り添う医療の実践
2025年6月に移転されましたが、どのような想いで新しい医院をつくられたのでしょうか?

2025年6月に、以前の場所から徒歩1分のこの場所に移転し、ゼロからこだわった医院をつくりました。診察室や処置室をワンフロアに配置し、患者さんが移動をスムーズに、スタッフとも鉢合わせることがないよう動線を工夫しています。特に感染症対策の部屋づくりには力を入れました。新型コロナウイルス感染症の流行時にテントで診療をした経験がありますが、夏は暑く、冬は寒い中の診療でしたので、できるだけ患者さんも医療者も快適に過ごせるよう配慮し、換気ができて院内に感染が広がらないように設計しました。天井が高く、トイレもバリアフリーで車いすやベビーカーも入りやすい、病院施設と同等の広々としたスペースをめざしています。患者さんからも歓迎していただき、以前よりも朗らかに楽しく会話してくださる方が増えましたね。
訪問診療についてはどのような方が対象で、どのような意義があるとお考えですか?
訪問診療はこの20年間で増えている印象があります。基本的には西宮地域が中心で、月曜日から土曜日、13時から15時30分に訪問診療をしていますが、小児の訪問診療のご相談もあり、火・木・土の午後、外来診療がない日には宝塚、伊丹、尼崎、川西などにも訪問することもあります。訪問診療の重要な意義の一つは、医療との接点を保てることです。ご家族に促されてようやく医療との接点ができる方も多く、そうした接点がないまま自宅で亡くなると警察対応になってしまいます。訪問診療により、最期まで医療的なサポートを提供できれば、ご本人だけではなくご家族の負担も軽減できると考えています。
患者さんのご家族とのコミュニケーションで大切にされていることは何でしょうか?

ご家族は患者さんの状態に不安を感じていることが多いので、まずはその不安に寄り添うことを意識していますね。ご家族との信頼関係を築くために、ケアマネジャーや訪問看護師にも手伝っていただきながら診療しています。医師1人ではなく、皆で患者さんを支えることで、いざというときには1ヵ所ではなく複数ヵ所、連絡できる場を持っておくことが、患者さんにとっても大きなメリットになると考えるからです。ご家族には病状や今後の見通しを説明し、何か心配なことがあればいつでも相談していただけるような関係づくりを大切にしています。
患者を総出で支え、地域とともに未来を築いていく
地域医療連携はどのように実践されているのでしょうか?

5人ほどの医師が中心となって、地域医療の勉強会を立ち上げました。今では新規開業される医師なども含めて30人ほどが集まるようになりました。個人が特定されないよう配慮しながら患者さんの症状などを共有し、また医療者それぞれの得意分野が違うので、SNSを使用していろいろな診療科の情報交換を行っています。2012年に連携強化型診療の保険診療制度ができてからは、勉強会も月に1回程度、薬剤師や訪問看護師も交えて開催しており、多職種との連携も大切にしています。勇壮なみこしを担ぐように、皆で患者さんを四方から支えています。その中にはご家族にも入って協力していただくことが重要です。医師1人だけでは限界があるからこそ、地域全体で患者さんとご家族を支える体制づくりに力を入れています。
今後、クリニックをどのように発展させていきたいですか?
現在私は60代で、走り回れるのもあと10年程度だと考えています。10年後以降を見据えて、地域の後進の医師の育成が必要だと思います。第三者承継も視野に入れており、親族にこだわることなく、この地域の医療を継続できる体制を整えていきたいです。医師一人で支えられる範囲は限られていますが、これまで築いてきた地域の医療連携もしっかりとできているので、当院を地域全体で活用していけるよう関係性も大切にして運営していきたいですね。医院の2階には、地域の医療者が集まって情報交換できる多目的室も設けました。これからも地域の医療拠点として、若い医師たちとともに地域医療の質の向上に貢献していきたいです。
最後に、地域の方へメッセージをお願いします。

結論が出せないこともあるかもしれませんが、悶々と悩むよりもまずはご相談いただければと思います。医師として持っている選択肢をお示しできることもありますので、地域の開業医をうまく活用していただきたいですし、何でも気軽にお話しください。小さな症状でも、心配事でも構いません。早期発見・早期治療につながることもありますし、何より皆さんの不安を取り除くお手伝いができればと考えています。これからも地域の皆さんの健康を守る「かかりつけ医」として、いつでも気軽に相談していただける存在でありたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは大腸内視鏡検査/2万6850円

