伊藤 直史 院長の独自取材記事
あさひが丘クリニック
(豊田市/新豊田駅)
最終更新日:2022/12/28
豊田市小川町の住宅街の一角にある「あさひが丘クリニック」。「皆さんのホームドクターでありたい」と、外科・消化器内科・内科・リハビリテーション科という幅広い診療のほかに、患者の自宅での療養生活と看取りを支える在宅診療も積極的に行っている。院長の伊藤直史(いとう・ただし)先生は、外科の医師として、また救急医療に携わる医師として、大学病院や総合病院などで豊富な経験を積んできたベテラン医師だ。開業時には、勤務医時代に担当した患者が数多く来院したというほど、患者たちから信頼を得ている。「医師として求められたら、全力で力になりたい」という伊藤院長に、医師としての志や、在宅診療への思いなどについて、詳しく話を聞いた。
(取材日2018年7月30日)
一般診療に加え、在宅診療・看取りにも注力
先生のご経歴をご紹介いただけますか?
三重大学医学部を卒業後、研修医として名古屋掖済会病院の外科にお世話になりました。外科を選んだのは、外科が最も幅広く勉強できると思ったからです。名古屋掖済会病院の救命救急センターは1978年に開設と歴史が古く、東海地方における救急医療の先駆け的な存在でもあります。実際に私も外科医師として救命救急に携わり、自分の仕事がない時でも救急車のサイレンが聞こえると、すぐに救急室に飛んでいき、上の先生について手伝っていましたね。おかげでいろいろなことを経験させてもらいました。その後は、名古屋大学医学部の第1外科で腹部外科のみならず乳腺と甲状腺も担当し、博愛会総合病院とさくら病院では外科部長を、加茂病院(現・豊田厚生病院)では外科病棟部長と救急部長を務めながら診療にあたりました。外科を専門に行いながら、救急医療にも長く携わってきましたので、こうして今、幅広い領域の医療に対応できていると思っています。
開業しようと思われた理由を教えてください。
勤務医時代は、外科医師としてたくさんの手術を執刀し、たくさんの患者さんを診てきましたが、患者さんの最期までは診ることはできません。長く総合病院や大学病院に勤務していましたので、大きな病院ではできない医療、つまり在宅診療と看取りをやっていきたいという思いが高まっていました。そして、勤務医に区切りをつける決心をして、2002年に開業したのです。当院では外科・消化器内科・内科・リハビリテーション科の一般診療に加え、在宅診療や看取りも行っています。診療日の午前診が終わってから午後診までの間に、通院が困難な患者さんの自宅を訪問して、体調の管理や診療にあたっています。
2013年にクリニックを移転されましたが、それはどうしてですか?
開業してみると、勤務医時代に私が診ていた患者さんが200人くらい来院してくれまして、その後も順調に患者さんが増えていきました。患者さんたちが、知り合いにも声をかけて、新しい患者さんを連れて来てくれたのです。しかし同時に駐車場の問題が浮上しました。移転前のクリニックは駐車場が狭かったために、路上駐車が増えてしまい、近隣に迷惑がかかるようになっていたんです。それで新しい場所への移転を決意したわけです。この場所に移転してきたのは、2013年です。駐車場を広く設けました。クリニックの建物は、病院らしくない温かみのある建物にしたいと考え、設計してもらいました。
患者と家族に寄り添う、ホームドクターでありたい
外科を診療科目の1番目にしているのは珍しいですね。
外科を第1標榜としているのは、外科医師としての私のプライドです。実は開業する時、「内科と違って外科は患者数も少ないから、標榜科目では外科を最後につけたほうがいい」とアドバイスされました。しかし私には「なんと言われようと、私は外科の医師だ」という思いがありましたので、あえて外科を最初に出しています。当時、愛知県下で外科を第1標榜としているクリニックはあまりなかったんですよ。ただ、診療は何も外科だけに特化しているわけではありません。「何でも診たい」「皆さんのホームドクターでありたい」という思いから、外科以外の領域にも広く対応しています。
先生が診療で心がけていることを教えてください。
患者さんのために、一生懸命に診療をすること。そして、患者さんに何でも話してもらえるように努め、患者さんの話をしっかり聞くこと。こうしたことを大事にしています。ただ、患者さんの数が多くて、診察時間が短くなったり、待ち時間が長くなったりしていますので、できるだけ待ち時間を短縮できるように心がけているところです。例えば、患者さんが多いときにはお昼の時間を返上して診察したり、診察開始時間を1時間早めて朝7時30分から診療したりしています。電子カルテも導入しました。診察時は横にスタッフをつけてカルテを入力してもらったり、前もって電子カルテに記載してもらったりと、スムーズな診察のためにスタッフにも協力してもらっています。私は診察室から診察室へと駆け回っているので、患者さんには「先生はいつも走り回っている」と言われていますよ。
在宅診療で大切にしていることはありますか?
患者さんを支えるご家族の心の負担を軽くできるよう、「無理しなくていい」「頑張りすぎないで」と伝えています。「全部自分でやらなくてはいけない」と思ってしまうと、介護が破綻してしまうことにもなりかねないので、「何かあればすぐに頼ってほしい」と声をかけています。介護が難しいときは、病院や施設でお世話になることも選択肢の一つだということも伝えています。当院では現在、豊田厚生病院などから紹介された患者さんや、通院できなくなってしまった患者さんの訪問診療を行っています。そういった患者さんにはがんや心不全の末期で寝たきりになっている方や、認知症の方が多いです。在宅で患者さんが過ごせるよう、環境を整えるためのアドバイスをしたり、看取りの体制をご家族と協力して整えながら、診療を行っています。
幅広い医療を提供するジェネラリストをめざして
クリニックで今後取り組みたいことはありますか?
今後、在宅診療と往診にもっと力を入れていきたいと考えています。ただし今は、一般診療の患者さんが増えている状況ですので、いかに効率的に診療を行えるかという点が課題となるでしょう。当院は予約制にしていません。それは急病の患者さんに対応するためなのです。毎日多くの患者さんが来院されます。今はクリニックに寝泊まりしながら、日々の診療を行っていて、自宅には週2日くらいしか帰っていません。周りにはワーカーホリックと言われます。今後は、自分の働き方を改善するための取り組みも必要なようです。
先生の医師としてのモチベーションの源は?
研修医としてお世話になった病院の外科の先生がすごく厳しい方で、「鬼軍曹」と呼ばれていました。とにかく最初は怒られてばかりでしたので、私は猛烈に勉強し続け、次第にその先生から認められるようになりました。そして年功序列を超えて、多くのことを教えていただきました。医師として力をつけてもらえたことに、感謝しています。その先生に最初に教えていただいたことは、「医者なのだから、一生懸命にやれ」ということ。その教えが、私の医師としての原点です。「患者がいれば、患者を診るのは当たり前。土・日でも関係ない」「それができないなら、医者を辞めればいい」と、その先生はおっしゃっていました。私も医師として、患者さんに求められたら自分にできることを全力でやって差し上げたいと思っています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
当院は、細分化された専門クリニックとしてではなく、幅広く対応できるジェネラリストを意識して診療を行っています。 皆さんのホームドクターになれるよう、風邪から胃腸の検査、生活習慣病、ケガなどの外科的処置、リハビリテーションまで、さまざまな診察・治療に対する体制を整えて診療にあたっています。胃の検査は、楽に検査ができるように経鼻の胃カメラを用意しています。体のことで心配事があれば、まずはお気軽に相談にいらしてください。