塚本 雅子 理事長の独自取材記事
サギス中クリニック
(大阪市福島区/福島駅)
最終更新日:2026/04/30
「ここは医療の相談窓口だと思ってます」穏やかな笑顔でそう話すのは、大阪市福島区にある「サギス中クリニック」の塚本雅子理事長だ。放射線科で全身を診る総合力と多科連携の力を培い、さらに東洋医学の未病の考え方を学んだ後、2005年に地元のクリニックを継承開業した医師だ。内科のかかりつけ医として、身体の不調から介護や生活の悩みまで、幅広く受け止め、必要な医療や支援へつなぐ存在であり続けてきた。また、通えなくなった患者のもとへは自らが足を運び、人生のラストページまで見届けたいという思いで在宅医療にも力を注ぐ。「一診療一笑い」を信条に、認知症のサポートや食と栄養の大切さも伝え続ける塚本理事長に、地域医療にかける思いをじっくり聞いた。
(取材日2026年3月19日)
幅広い経験を礎に、地域の「医療の相談窓口」へ
まずは、クリニックの特徴や大切にされている考え方を教えてください。

私は当院を「医療の相談窓口」だと思っています。診療科目は内科ですが、身体の不調に限らず介護や生活の悩みまで幅広くお話を伺い、必要があれば専門の医療機関や行政の窓口へおつなぎする。それが私の考えるかかりつけ医の役割です。「先生に話すだけで元気になった」のようなお声がいただけたら、何よりですね。そんな当院に来られる患者さんの多くは、長年通い続けてくださっている方で、最近はその方のお子さんやお孫さんまで来てくださるようになりました。世代を超えて頼りにしていただけるのはうれしい限りです。
開業される前は、どのような分野で経験を積んでこられたのですか?
医師としての第一歩は、市中の病院での内科研修でした。経済的に苦しい方も断らず診る姿勢や、研修医として患者さんのご自宅へ走っていく経験を通じて、寄り添う医療の原点を学んだと思います。その後、もう少し視野を広げたいという思いから大学病院に戻り、放射線科を専門に選びました。放射線科はエコーやCT、エックス線など全身の検査を幅広く扱うため、特定の臓器に限らず体全体を診る総合的な力が身につきます。加えて、放射線治療では外科や耳鼻科などさまざまな診療科の先生方と治療方針を一緒に検討する場面が多く、科と科の間をつなぐ橋渡し役を日常的に担っていました。この経験で培った連携力が、地域の多職種と協力して患者さんを支える今の診療スタイルの土台になっています。
この地域で開業されるに至った経緯を教えてください。

大学病院で放射線科を学ぶ傍ら、隣にあった近畿大学東洋医学研究所に興味を持ちました。東洋医学には「未病」という考え方があり、病に至る前の段階で生活を整えて健康を保つという発想が、私が関心を寄せていた予防医学と深く重なったんです。それからは、教授に直接お願いして勉強の機会をいただき、並行して地元・福島区の福島民主診療所で働き始めました。その時に、自分が生まれ育った地域で診療を行う楽しさを感じたのです。また、年季の入ったクリニックでしたから、「ここがなくなったら患者さんはどうなるのだろう」という気がかりも……。ですから、前院長から継承のお話をいただいた時には迷わず即決しました。
人生のラストページまで寄り添い、笑顔を届けたい
通院が難しくなった患者さんには、どのように対応されていますか?

長年通ってくださっていた患者さんが足腰の衰えや病気で通えなくなったとき、今度は私の方から会いに行くという在宅医療に切り替えています。その方の歩みを知っているのは、ご家族と診続けてきた私だからこそ、最期までそばにいたいと思い、在宅医療に尽力しているのです。また、私にとって看取りとは、その方の人生の集大成であり、物語の最終ページをご家族と一緒に飾ること。ご家族と昔の思い出話に花が咲く中で、穏やかな最期を過ごしていただきたい、そのかけがえのない時間に寄り添いたいという思いが、私にとっての医療の原動力となっています。
患者さんの高齢化が進む中で、認知症にはどのように向き合っていますか?
認知症について専門的に学び、かかりつけ医と専門医をつなぐ橋渡しの役割を担っています。早期であれば先進的な治療薬の選択肢をご案内したり、必要に応じて精密検査を提案したりしていますね。認知症の診療とサポートにも力を入れるようになった理由は、日々の診療で予約を忘れてしまう方やお薬の管理が難しくなった方が増えたことです。認知症治療を進める際に大切なのは、ご本人が安心できるよう周囲の環境を整えること。ですから、ご家族や近隣の方にさりげなく見守っていただける体制をつくり、「忘れても私が代わりに覚えておきますよ」とお声がけしているのです。スタッフにもお会計時のサポートなど具体的な対応を共有し、クリニック全体で支える意識を大事にしています。
日々、患者さんと接する中で心がけていることはありますか?

私のモットーは「一診療一笑い」です。笑いは免疫力を高めるという研究がありますし、体調が優れず気持ちが沈みがちな方にこそ、ちょっとした笑いで心を軽くしてもらいたいと思っています。もう一つ心がけているのが、食と栄養の大切さを伝えること。診察室で「最後の晩餐に何を食べたいですか?」と尋ねることがあるんです。あれが食べたい、誰と食べたい、そういうことを考えると、自然とその方の人生観や大切な人の話へと広がります。また、最期までおいしく食べるという目標は栄養への意識づけになりますし、ご自身の生き方を見つめ直すきっかけにもなると考えてのことです。食卓の話題から始まる対話が、その方らしい最期を考える入り口になればと願っています。
目の前の一人ひとりと、最期まで歩み続けるために
先生を支えるスタッフの皆さんについてお聞かせください。

看護師は私にとって右腕のような存在です。命を預かる現場ですから、採血や点滴といった手技を安心して任せられる信頼関係は欠かせません。また、受付スタッフはクリニックの顔だと思っています。「大丈夫ですか?」「お気をつけてお帰りくださいね」と温かく声をかけてくれるだけで、患者さんの表情がふっと和らぐのを日々感じているんです。とりわけ心強いのは、開業当初からのメンバーが今も隣にいてくれていること。患者さんとの長い歴史を共有している仲間の存在は、何物にも代えがたいですね。患者さんのことを第一に考え、同じ方向を向いて一緒に歩んでくれる仲間がさらに加わってくれたら、こんなにうれしいことはありません。
今後、クリニックとしてめざしていることをお聞かせください。
今一番大切にしたいのは、通ってくださっている患者さん一人ひとりと最期まで歩み続けることです。手広くするよりも目の前の方をより丁寧に診て、必要な介護サービスや専門機関へしっかりつなげていきたいと思っています。患者さんから「先生だけが頼りなんです。倒れないでくださいね」と声をかけていただくこともあり、その期待を裏切らないことが私の大切な使命だと感じています(笑)。また、将来の夢としては医学管理と生活支援の両方を兼ね備えた、介護医療院を作ることです。住み慣れた地域で最期まで安心して暮らせる場所を、信頼できる仲間と一緒に実現できたらという思いを胸に、まずは日々の診療を一つ一つ丁寧に積み重ねていきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

身体のことに限らず、どこに相談すればいいかわからないときこそ、気軽に声をかけていただけたらと思います。最近はドラッグストアで手に入るお薬も増えていますが、市販薬で様子を見続けた結果、かえって症状をこじらせてしまう場合も少なくありません。同じような成分のお薬でも保険診療なら自己負担を抑えられますし、私が医師として経過に責任を持てますので、ぜひ頼りにしてください。また、高齢の方は、制度の変更や新しい治療の選択肢といった情報にアクセスしにくいのが現状です。そうした届きにくい情報をかみ砕いてお伝えする橋渡し役でもありたいと思っています。お一人で悩まず、まずはお話を聞かせてください。一緒により良い方法を考えていきましょう。

