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今泉 澄人 院長の独自取材記事

いまいずみクリニック

(京都市下京区/梅小路京都西駅)

最終更新日:2023/09/20

今泉澄人院長 いまいずみクリニック main

嵯峨野線・梅小路京都西駅から5分ほど歩き、左手に見えてくるのが「いまいずみクリニック」。七条七本松交差点に面した場所にある心療内科クリニックだ。2023年7月に同じ場所で診療していたクリニックを継承、同じ心療内科と内科、精神科を標榜して開院。今泉澄人院長は、既存の患者を大事にし、心と体の両面を診る、心身の健康についての「よろず相談所」をめざしている。前院の頃と変わらない落ち着いた雰囲気の待合室には、新たに自由に手に取れる数冊の絵本が用意された。今泉院長の想いや専門、勤務医時代の経験をはじめ、院内に絵本を置く理由など、同院の新しい一面にクローズアップした。

(取材日2023年8月9日)

地域の「よろず相談所」をめざして

まずは開院までの経緯を教えてください。

今泉澄人院長 いまいずみクリニック1

当院は、2023年6月まで診療されていた「たかはしクリニック」を継承いたしました。2022年に高橋先生よりお話をいただき、先生のお人柄に感銘を受け、診療スタイルもかねてより自分が思い描いていたスタイルであったため、貴重なご縁をいただいた思いでお受けしました。開院して1ヵ月がたちますが、ここは梅小路京都西駅から歩いて5分とアクセスが良いだけでなく、梅小路公園が近くにあって雰囲気も良く、とても気に入っています。現在は引き継いだ患者さんを中心に、紹介状のある患者さんなどがいらっしゃっています。既に、同じ時間帯に来院された患者さんをお待たせしてしまうことがありますが、なるべく患者さんお一人お一人にじっくりとお話を聞けるよう、診療したいと考えています。

明るくて心が落ち着く雰囲気のクリニックですね。

長く通われている患者さんにも少しでも安心してもらえるよう、前院より内装は大きく変えていません。私は絵本収集が趣味の一つですが、絵本を読んで感じる、言葉のいらない感動や安心感は、心療内科の治療にも通ずる部分があると思っています。私自身、絵本からいろいろと気づかされ、癒やされ、慰められてきました。診療を受けた後、そういった雰囲気を感じてもらえるようなクリニックをめざしています。待合室の壁の絵は、好きな作家さんの絵を中心に、数少ない私物から持ってきました。また、絵本も待合室に何冊か置いていますので、患者さんが少しでも癒やされ、何か気づきを得るきっかけになればと思っています。

どのような患者さんが来院されていますか?

今泉澄人院長 いまいずみクリニック2

さまざまな身体的、心理的な問題を抱えた方が受診されています。年齢は高校生からお年寄りまで幅広く、診療の特徴柄、やや女性が多いです。分野別では、高血圧や高脂血症、糖尿病、更年期症候群などの一般内科、心療内科では、緊張型頭痛やめまい症、過敏性腸症候群や機能性胃腸症、いわゆる自律神経失調症など、精神科では不眠症や神経症、パニック障害、適応障害やうつ状態などの患者さんが多く受診されています。なお、重症うつ病、統合失調症や双極性障害、摂食障害など、より専門性の高い精神科疾患の場合は、症状や診断によって精神科の医療機関へ紹介することもあります。また、薬剤はできるだけ最小限の処方を心がけておりますが、西洋薬のほか、漢方薬も処方しています。

心身症を専門に、心と体の両面を診る

先生のご専門とされている診療は何ですか?

今泉澄人院長 いまいずみクリニック3

さまざまな身体症状の背景には、根本のつらさや生き方、心理社会的要因が関係していることが多々あります。私が学んできた心身医学は、臓器ごとにとらわれず、また身体面、心理面どちらにも偏ることのない、“病”でなく“人”を診る全人的医療です。心療内科と精神科というのは同じ診療科と思われがちですが、本来は異なった科です。心療内科は主に心身症を扱い、心身症とは体に症状があって、その発症や持続にストレスや心理社会的背景が関係している状態をいいます。例えば、過敏性腸症候群といって、ストレスでおなかが痛くなったり、慢性疼痛といって痛みが長引いてしまったりすることがそうです。私は、関西医科大学の心療内科学講座に入局し、心身症を専門に学び、診療してきました。また、うつ病やパニック障害などの精神疾患も時に体に症状が出ます。もちろん当院でも精神科も標榜しているため、精神疾患の治療も行っています。

総合診療や緩和ケアのご経験もあるのですね。

心も体も診る全人的な医療を実践する心療内科医は、総合診療や緩和ケア、家庭医療などさまざまな分野で役割を担います。これまで関西医科大学では、心療内科と総合診療部門に従事し、日本赤十字社和歌山医療センターでは、心療内科と緩和ケア内科に従事しておりました。総合診療といわれるプライマリケアでは、風邪や頭痛から、原因不明の熱や痛みなど、さまざまな病態を扱います。それを治療するには臓器ごとや疾患ごとでない、全人的な観点が必要とされます。また、緩和ケアでは身体的な苦痛に加えて、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛を扱うのですが、そこにも心療内科的な考え方はとても役に立ちました。それらを通じて、全人的観点のみならず、初期から末期までの医療、いわゆる成人医療の全ステージでの診療について研鑽を重ねてまいりました。

診療の際に心がけていることは何ですか?

今泉澄人院長 いまいずみクリニック4

患者さんは誰しも、自己治癒能力を持っています。医師が病気を治すのではなく、医師は患者さん自身で治っていくために、それぞれが持っている資源(リソース)を使って、その力を引き出すサポートしかできません。その資源は、例えば誰かの言葉や、趣味や運動、リラクゼーション法、カウンセリング、薬や医師自体もその資源の一つに過ぎず、それによって患者さんが治る方向に向かえば、何でも良いと思っています。心療内科では一人ひとり治療の過程は異なります。そのため患者さんがどう考え、どう理解しているか、見えている景色を理解したり尊重したり、その人の生育史、生活環境、価値観いわゆるその人の物語(ナラティブ)を知ろうと心がけています。医師が一方的に治療をするのではなく、患者さんを置き去りにしないことが重要だと考えています。

人の温かみや心のこもった医療を届けるクリニックに

心療内科を受診するタイミングがよくわかりません。

今泉澄人院長 いまいずみクリニック5

タイミングはいつでも構いません。心や体に不調を感じたら、受診を検討してください。例えば、心理的なことが原因と思われた症状にも、何か身体的疾患が隠れていることがあります。心身症は、それら身体的疾患が否定されてから診断されることが多々ありますので、検査のためにより専門のクリニックに紹介することもあります。例えば胃カメラや心エコー、CT、MRIなどですね。どこからを“病気”と考えるかも重要です。例えば、加齢を起因とするような状態は、どうしても治癒ではなく、受け入れることを目標にすることもあります。多くの恐怖症や不安症も同様に、どこからを“病気”とするかが問題になります。同じストレスでも人によって不安や恐怖の程度は異なります。また不安や恐怖は光と影の影の部分で、光があるから影があり、人生に不可欠なものです。どこを病気とするか、診断名をどうつけるか、当院では医師の立場から皆さんと一緒に考えます。

今後の展望を教えてください。

まずは前院の高橋先生が続けてこられた医療を引き継ぎ、患者さんとの信頼関係を築くことを一番に考えています。現在は臨床心理士はおりませんが、患者さんが治っていく資源の選択肢を増やすためにも心理テストや心理療法、カウンセリングもできるような体制を整え、またその一つに絵本も何かの役に立てていくなど、自分らしさも出していければと思っております。まずは「心と体のよろず相談所」として、気軽に相談しに来ていただけるような体制をつくりたいです。何か言葉では表せないけれど来て良かった、少しでもほっとできたと思える場にしたいですね。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

今泉澄人院長 いまいずみクリニック6

ストレスはいつのまにかその人の内にたまり、気づかないうちに体に症状が出てきます。それらは家族や親しい人にも吐き出せないことが多いです。私たちは、思いを吐き出す、言葉で表すことがとても大きな力だと知っています。また、外来に来ることもさまざまなハードルがありますが、ここは安心して吐き出せる場だと思います。まずは外来に頑張って来て、思いを吐き出してください。心療内科の治療はマラソンに例えられることがあり、そのゴールや道のりは患者さんによって異なります。残念ながら、まだまだ私は医師としては未熟ですが、治療の伴走者として皆さんとともに進み、時には一緒に転び、笑い、泣き、成長しながらゴールに向かいます。

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