清水 一男 院長の独自取材記事
清水こどもクリニック
(大阪市淀川区/三国駅)
最終更新日:2026/04/16
阪急宝塚本線三国駅から徒歩4分のビル3階にある「清水こどもクリニック」。黄色のビタミンカラーのソファーが迎える明るい待合室には手作りの装飾が彩りを添え、子どもたちが元気になれる温かな空間だ。院長の清水一男先生は、新生児医療の黎明期に愛染橋病院で未熟児医療に携わり、ニューヨークへの留学や市立豊中病院での幅広い臨床経験を経て、2005年に同院を開業したベテラン小児科医。エビデンスを重視した必要最小限の処方を信条とし、薬の期待されるメリットとリスクを丁寧に説明する姿勢で地域の保護者に寄り添っている。穏やかな語り口の中に合気道有段者らしい芯の強さをのぞかせる清水院長に、子どもの力を信じて寄り添う診療への思いを聞いた。
(取材日2026年3月24日)
新生児医療の現場から地域のかかりつけ医へ
先生が医師を志し、小児科を選ばれた経緯を教えてください。

父が医師だったこともあり、幼い頃からこの仕事が身近にあり、自然と同じ道を歩みました。小児科を選んだ当初は、正直なところその大変さを知りませんでした。大阪大学医学部附属病院の小児科に入った初日、先輩の先生が夜遅くまで働き続ける姿を見て面食らったのを覚えています。その後、愛染橋病院で新生児・未熟児医療に携わりました。ちょうど人工呼吸器管理が始まった黎明期で、実働部隊はわずか3人。人工呼吸器の必要な未熟児が産まれると3日に1回は泊まり込みで未熟児の治療にあたりました。当時は日本語の教科書がなく、先輩たちも皆、英語の原書や論文を読んで学んでいた時代です。若いうちにこそ経験しておきたいという思いで飛び込みましたが、あの現場が私の小児科医としての土台になっています。
その後、開業に至るまでには、どのようなご経験を積まれたのですか。
大阪大学に戻った後、ニューヨーク州立大学バッファロー校の小児病院に留学し、消化器分野の研究に取り組みました。膵臓の酵素が成長とともにどう変化するかという研究で、論文にもまとめています。帰国後は市立豊中病院と近畿中央病院を行き来しながら、幅広い臨床経験を積みました。中でも市立豊中病院では、専門としていた消化器・内分泌疾患以外にも脳症、心疾患、神経疾患など多くの患者さんを診る機会があり、一番多くのことを学ばせてもらった場所です。その後、2005年に三国で開業しました。当時この周辺は小児科が少なく、駅からも近いことから地域の方に通っていただきやすいと感じ、この場所に決めました。
クリニックの特徴や設備について教えてください。

開業時はスケルトンの状態から院内を作り上げました。スペースの関係で紙カルテを置く場所が確保できなかったため、当時はまだ少なかった電子カルテを最初から導入し、LANの配線や薬の登録設定もすべて自分で行ったんですよ。設備面では、先輩の開業医から助言を受けながら、院内検査機器を導入しました。検血、電解質、血糖、ALT、BUN、アミラーゼなど複数の項目をその場で測定できる体制を整えています。お子さんは待てませんし、体調が急に変わることもありますから、すぐに結果がわかることが大切です。例えばALTの上昇からサイトメガロウイルス肝炎の診断に行き着いたことがあります。電解質、BUNは脱水症の評価に重要です。また、発熱のある患者さんは別の入り口から直接感染症用の部屋に入れるよう、動線を分けています。
必要な薬だけを見極め、子どもの心にも寄り添う
お薬の処方について、先生のお考えをお聞かせください。

基本的な考えは、出さなくていい薬は出さないということです。例えば咳止めは、病気そのものを治すための薬ではありません。咳がつらいときに使う程度でよく、サボっても構わないとお伝えするようにしています。保育園に通うお子さんは昼に薬を飲めないことが多いですが、期待される効果がすぐ切れる恐れのある薬を朝晩に分けて倍量にしても意味がないんですよね。処方にあたってはガイドラインや学会の見解を常に確認し、薬の期待されるメリットとリスクをてんびんにかけて判断します。インフルエンザの治療薬についても、日本小児科学会は「幼児、基礎疾患のある児、呼吸器症状のひどい児を除いて多くは自然に治るため投与は必須ではない」としており、抗ウイルス薬を使用するメリットとデメリットを説明しています。
お子さんを診察する際に工夫されていることはありますか。
予防接種では、ワクチンを溶解するときに使用した針から、より細い針につけかえて接種するようにしています。手間はかかりますが、そのほうが痛みに配慮できますから。「1、2、3」と声をかけて気をそらしながら素早く打つ工夫もしています。大事にしているのは、検査や注射の後に「よく頑張ったね」としっかり褒めることです。心理学の研究でも、つらさの軽減をすると、思い出す記憶が和らぐとされています。逆に「痛くない痛くない」と言うと、お子さんは自分の感覚を否定されたように感じ、心の発達に良くない影響が出ることがあります。痛いときは痛いと認め、「痛いの痛いの飛んでけ」と共感してあげることが大切です。
保護者の方に対して大切にされていることを教えてください。

先ほどのお話とも重なりますが、親御さんには、薬の期待できる効果だけでなく副作用やリスクについても、ガイドラインなどの根拠を示しながら丁寧にご説明するようにしています。「出しておけば安心」という処方はせず、なぜこの薬が必要か、あるいは必要でないのかをお伝えすることが信頼関係の第一歩だと考えています。また当院は、かかりつけとして気楽にご相談いただける場でありたいと思っています。私の専門外だったり、精密な検査が必要だと判断した場合には専門病院をご紹介します。
子どもの力を信じ、成長を見守るかかりつけ医
院内の温かな雰囲気が印象的ですが、スタッフの方々について教えてください。

受付が3人、看護師が3人、それに妻が看護助手として院内を支えてくれています。待合室の壁面を彩るキャラクターなどの装飾は、受付スタッフが保育園向けの本を参考に手作りしてくれたものです。勤務表の作成なども任せていて、スタッフに支えられて成り立っているクリニックだと感じています。当院のひよこのロゴは、大学時代のクラブの知人のお子さんがデザインしてくれました。院外では野中小学校と三国小学校の校医、三国保育所の嘱託医も務めており、長年にわたり3歳児健診にも毎月携わってきました。三国は駅前が整備されて暮らしやすくなり、工場跡地が住宅に変わって若い世代の方も増えています。子育てファミリーが多く住む地域で、身近なかかりつけとしてお役に立てればと思っています。
長年の診療を通じて、医療の変化を感じることはありますか。
長い年月の中で、病気の在り方そのものが変わったと実感しています。例えばヒブや肺炎球菌のワクチンが普及し、細菌性の髄膜炎は大幅な減少が見込めるようになり、以前は必須だった検査をほとんど行わなくなりました。一方、新型コロナウイルス感染症の流行による自粛で感染症にかかる機会が減った結果、その後にさまざまな感染症が大流行しましたね。ある程度かかりながら免疫をつけていくことの大切さも、身をもって知っています。こうした変化に対応するため、新生児医療に携わっていた頃から続く文献を読む習慣は今も変わりません。学会の見解やガイドラインを確認し、ブログでも情報を発信しています。
子育て中の読者へメッセージをお願いします。

私が一番お伝えしたいのは、「子どもの力を信じて」ということです。科学者でもスポーツ選手でも、どんな道であれ、その子に合った形で立派な大人になってほしいと願っています。どのお子さんにも無限の可能性があると、私は信じています。子育ての時期は本当に大変で、体調が悪いと不安になることも多いでしょう。そんなとき、かかりつけ医としてそばで支えることができれば、少し安心していただけるのではないかと思います。必要な薬は使い、必要でないものは使わない。お子さんの痛みには共感し、頑張りをしっかり認めてあげる。そうした積み重ねが、健やかな成長につながると考えています。子育ての大変な時期をご家族と一緒に歩みながら、お子さんの成長を見守り続けていきたいと思っています。

