堀 篤史 院長の独自取材記事
IGTクリニック
(泉佐野市/りんくうタウン駅)
最終更新日:2026/06/30
関西国際空港から程近い、りんくうタウン駅より徒歩10分。全国各地から数多くの患者が足を運ぶ「IGTクリニック」は、がん治療を専門とするクリニックだ。とりわけ注力する血管内治療は、手術が困難な患者や全身化学療法が難しい患者、治療の選択肢がないと告げられた患者にとって、人生の時間や希望を生み出すための現実的な選択肢となり得る方法の一つ。院長を務める堀篤史先生は「耳なじみのない治療かもしれませんが、健康保険適用ですし、古くから研究されてきた治療法です」とほほ笑む。今回はそんな堀院長に、美しい海を望む入院施設や先進の機器を備えた血管内治療室を備え、患者の状態に合わせた治療の提供をめざす同院の取り組みや、血管内治療の可能性について話を聞いた。
(取材日2026年6月9日)
血管内治療を行う、がん治療専門のクリニック
まずはクリニックの概要から聞かせてください。

当院の前身である「ゲートタワーIGTクリニック」は、2002年にカテーテルを用いた血管内治療によるがん治療を専門とするクリニックとして設立されました。当初はタワーの11階に位置し、温熱治療を行う「りんくう出島クリニック」と協力しながら役目を果たしていたのですが、その後、患者さんにも医療者にもより良い環境を求めて2016年に移転。質を追求したがん治療を提供するために、2つのクリニックを統合して「IGTクリニック」として新たにスタートしました。現在は海や夜景を望む入院施設に加え、血管内治療室2室、温熱治療室、CTなどを備え、がん患者さんのQOL(生活の質)の向上をめざして治療を行っています。移転から10年ほどがたち、現在では関西圏にとどまらず全国から多くの患者さんにお越しいただいています。
血管内治療とは、どのような治療法なのですか?
血管内治療とは、カテーテルと呼ばれる細い管を血管の中に通し、がん病巣の近くまで進めて薬剤を届ける治療です。健康な組織への影響をできるだけ抑えながら必要な部位に直接アプローチできるため、患者さんの体への負担軽減が期待できます。実は古くから行われている治療法ですが、残念ながら今も標準的ながん治療とはされていません。ただ、標準治療を受けることができない方々や、外科治療・放射線治療・全身化学療法といった「がん三大治療」が奏功しない状態にある患者さんにとって、希望となる治療法だと思います。標準治療ではないというと「怪しい治療なのではないか」と身構えてしまうかもしれませんが、健康保険適用の診療ですのでご心配なさらないでください。
治療を勧めないケースもありますか?

例えば、標準治療によって十分な治療効果が期待できる場合には、まずはそちらをお勧めします。ただ、患者さんにもよくお話しするのは、「どんな治療法もチーズのようなものだ」ということです。チーズには穴がありますよね。同じように、どのような治療にも得意な部分と苦手な部分があり、万能な治療法は存在しません。だからこそ、それぞれの治療法の特徴を理解した上で、どうすればその“穴”を埋められるかを考えるのが医師の役目であり、医師としてのやりがいだと思います。科学的なエビデンスはもちろん、患者さん一人ひとりに合わせて柔軟に対応するよう心がけています。
血管内治療の可能性にチャレンジ
具体的にどのような相談が寄せられるのでしょうか?

がんと診断されたばかりの方や、標準治療を受けている、あるいは治療を終えたものの今後の方向性に悩まれている方からのご相談ですね。「本当にこの治療でいいのだろうか」「これから自分の病気とどのように向き合っていけばいいのか」と、不安や迷いを抱えて来院される患者さんが中心です。ですから当院の診療は、最初から血管内治療ありきでお話を進めるのではなく、まずは現在の病状やこれまでの治療経過、患者さんご本人やご家族のお考えを丁寧に伺い、一緒に状況を整理することからスタートします。その結果、血管内治療をご提案することもあれば、標準治療を継続したほうが良いとお伝えすることもあります。私たちの役割は治療を提供することだけではなく、その方にとって適切な選択肢を一緒に考えることなのです。
患者さんと接する上で大切にしていることは何ですか?
患者さんと一緒に考える時間を十分に確保することです。一方的に説明して終わりにするのではなく、患者さんやご家族の思いを聞き、疑問があれば丁寧に解決して、納得できるまで話し合うよう心がけています。そのために、当院ではスタッフ間の連携をとても重視しています。限られた診療時間を有効に使えるよう診察前には看護師が丁寧に問診を行い、必要な情報を整理した上で私に共有してくれます。そのおかげで、診察室では病状や治療方針といった本題について、患者さんとじっくり向き合う時間を確保することができます。チーム全員で患者さんを支え、一緒に良い方法を考えるのが当院の診療スタイルです。
血管内治療の可能性については、どのように考えていますか?

血管内治療という手技そのものは完成された技術だと考えています。しかし、それを支えるカテーテルなどの医療機器は日々進化を続け、以前は到達が難しかった約1mm程度の血管にも治療の対象としてアプローチできるようになりました。そうした技術の進歩によって、がん治療の可能性はもちろん、今後はがん以外のさまざまな疾患にも応用できる可能性が広がるだろうと期待しています。血管内治療は、子宮筋腫の治療や肝硬変治療にも活用されていますので、当院でも順次対応する準備を進めています。一方で、どれほど技術が進歩しても、血管内治療だけですべてを解決できるわけではありません。大切なのは、その可能性と限界を正しく理解し、一人ひとりの患者さんにとって本当に役立つ形で活用していくことだと思います。
ともに未来をつくっていけるクリニックでありたい
どのような患者さんに相談してほしいですか?

局所の病変で困っている方には、ぜひ一度ご相談いただきたいですね。早めに相談していただければ、私たちが介入する適切なタイミングを見極められますし、治療の選択肢を広げられる可能性もあります。当院は、血管内治療以外はお断りというクリニックではありませんし、温熱療法など他の治療の選択肢にも対応可能です。必要に応じて他の医療機関と連携することもでき、現在受けている治療について一緒に整理したり、今後どのような選択肢が考えられるのかをお話ししたりすることもできます。主治医のもとで検査を受け、詳しい説明だけしてほしいと定期的に来院される患者さんもいらっしゃいます。かしこまる必要はありませんので、まずは気軽に来院いただければうれしいです。
そもそも、血管内治療に取り組もうと思ったのはなぜですか?
私は当院の理事長である父のもとで育ちましたので、幼い頃からカテーテルがとても身近な存在でした。小学生の頃には、家にあったカテーテルの部品を切ったりつないだりして遊んでいたくらいです(笑)もともと何かを作ることが好きで、将来は宮大工になりたいと思っていた時期もありました。しかし成長するにつれ医師という仕事を意識するようになり、父が取り組んでいた血管内治療に「物作り」に通じる面白さを感じるようになりました。血管は一人ひとり形が異なりますし、どうすれば目的の場所まで安全かつ確実にカテーテルを届けられるのかを考える過程には、創意工夫の余地がたくさんあります。さらに、患者さんの体への負担軽減が期待できる低侵襲な医療であることにも、大きな魅力を感じました。
最後に、院長のめざすIGTクリニックの未来像についても聞かせてください。

私の根底にあるのは「困っている患者さんをサポートしたい」という思いです。病気を治療することはもちろん大切ですが、患者さんやご家族が安心し、納得して治療に向き合える環境の提供も同じくらい大切だと考えています。私は放射線医としても研鑽を積んできましたので、画像を読み解き、病状を客観的に評価しながら、わかりやすく丁寧に説明することが得意です。疑問や不安があれば、どのようなことでも遠慮なく質問してくださいね。また、私は「医学はサイエンス、医療はアート」だと考えています。科学的根拠を大切にしながらも、一人ひとりの病状や価値観に合わせて創意工夫を重ね、適切な道を一緒に考えていくことが私が考える医療の本質です。これからも患者さんと同じ方向を向き、ともに未来という唯一のアートを描けるクリニックであり続けたいです。

