堀 篤史 院長の独自取材記事
IGTクリニック
(泉佐野市/りんくうタウン駅)
最終更新日:2026/04/09
関西国際空港から程近い、りんくうタウン駅より徒歩10分。全国各地から数多くの患者が足を運ぶ「IGTクリニック」は、がん治療を専門とするクリニックだ。とりわけ血管内治療に注力。手術が困難な患者や全身化学療法が難しい患者、治療の選択肢がないと告げられた患者にとって、血管内治療は人生の時間や希望を生み出すための現実的な選択肢となり得る方法だ。院長を務める堀篤史先生は「耳なじみのない治療かもしれませんが、健康保険適用ですし、古くから研究されてきた治療法です。決して怪しい治療ではありません」とほほ笑む。美しい海を望む入院施設や先進の機器を備えた血管内治療室を整え、患者の状態に合わせた治療の提供をめざす同院の取り組みや、血管内治療の可能性について話を聞いた。
(取材日2026年2月20日)
血管内治療を行う、がん治療専門クリニック
まずはクリニックの概要から聞かせてください。

当院は、2002年にカテーテルの技術を使ったがんの治療をするクリニックとして設立されました。当初は南大阪で一番高いタワーの11階にあり、温熱治療を行う「りんくう出島クリニック」と協力しながら役目を果たしていました。その後、患者さんにも医療者にもより良い環境を求めて、2016年に現在のりんくうエリアに移転。より質の高いがん治療を提供するために、2つのクリニックを統合して「IGTクリニック」として新たにスタートしました。海や夜景を望む入院施設に加え、血管内治療室2室、温熱治療室、CTなどを備え、がん患者さんのQOLの向上をめざして治療を行っています。移転から10年ほどがたち、現在では関西圏にとどまらず、全国から多くの患者さんにお越しいただいています。
血管内治療とはどんな治療法なのですか?
血管内治療とは、カテーテルという直径約1mmの細い管をがん病巣のすぐ近くまで挿入し、健康な細胞を傷つけないよう、がんのある部分にのみ薬剤を注入する治療法です。がん細胞に対して高濃度の薬剤を直接投与することができるため、使用する薬剤の量を抑えることができ、全身化学療法と比較して副作用が少ないことが特徴です。残念ながら今も標準的ながん治療とはされていませんが、標準治療を受けることができない方々や、外科治療・放射線治療・全身化学療法といった「がん三大治療」が奏功せず、医療機関から半ば見放された状態にある患者さんにとって希望となる治療法です。標準治療ではないというと「怪しい治療なのではないか」と身構えてしまうかもしれませんが、健康保険適用の診療ですので怪しいものではないんですよ。
誰もが受けられる治療なのでしょうか?

治療には適応条件がありますので、すべての人が対象というわけではありません。例えば、手術可能な早期がんや他の治療で完治が望めるがんは適応外になります。なぜなら、われわれが提供する血管内治療は、がんを根絶するための治療ではなく、命をつなげていくための治療だからです。がんに苦しむ人たちの病巣を少しでも小さくするよう図り症状を和らげるようつなげ、臓器の働きを良くするようめざすことで、少しでも快適に自分らしく生きるためのサポートをすることこそが、われわれの使命です。治療のために体を大きく切る必要もなく、大腿部の動脈から細いカテーテルを血管内に挿入するだけなので体の負担も少なく、1回の治療は3泊4日が基本。日本ではまだ実施施設が限られていますが、必要とする方に届けていきたいと考えています。
コミュニケーションを大切に、安心できる時間を提供
患者さんと接する際、心がけていることはありますか?

先ほどもお話ししたとおり、血管内治療を実施する施設は全国でも多くなく、実施している機関も大きな病院であることがほとんどです。その点、当院はクリニックですから小回りが利きます。当院にたどり着くまでに、患者さんやそのご家族はさまざまな思いをしてきたはずですので、当院ではとにかくじっくりと話し合う時間を大切にしています。治療方針について1時間以上話すこともありますし、入院生活や自宅療養のことについてもスタッフ全員でサポートしています。病院なら地域連携室がありますが、当院では全員がその役割を果たすべく知恵を振り絞っています。大阪は人と人の距離が近い温かみのある街です。その良さを感じながら、当院での時間を過ごしていただけたらと思っています。
患者さんとのコミュニケーションを大切にされているのですね。
当院に初めて来院される患者さんの多くは、血管内治療への不安や疑問を抱えて、それでも希望を抱いて足を運んでくださっています。だからこそ「何をされているのかわからないまま治療を受ける」という状況はあってはならないと考えています。わからないことは、誰にとっても怖いものですから、当院で行う治療の内容はもちろん、治療の目的や治療後の見通し、そしてリスクや限界についても率直にお伝えし、十分に理解・納得していただけるよう努めています。私自身も患者さんやご家族とお話しする時間がとても好きですし、スタッフも同じ思いで日々向き合ってくれています。定期的に来院される患者さんとは自然と信頼関係が築かれて、家族みたいに皆でワイワイやっています。お互いに冗談を言いながら「安心して笑える時間」を提供することも、私たちの大切な役割です。
カテーテル治療の際、特に気をつけていることはありますか?

最も大切にしているのは、適切な位置に、できるだけ速やかにカテーテルを挿入することです。血管内治療は非常に繊細な手技であり、がんに栄養を送っている血管を見極め、目的の部位へ確実に到達させられるかが治療効果を左右します。そのため、事前の画像診断で血管の走行や分岐を詳細に把握し、綿密なシミュレーションを行った上で治療に臨んでいます。同時に、患者さんへの負担を最小限に抑えることも大切にしています。無駄のないカテーテル操作を心がけ、被ばくや造影剤の使用量にも配慮しながら、できるだけ安全に短時間で治療を行うことを常に意識しています。ここは知識や経験が問われる部分ですから、研鑽を怠らず一つ一つを丁寧に積み重ねて、最良の結果をめざしています。
血管内治療の可能性にチャレンジを
そもそも、血管内治療に取り組もうと思ったのはなぜですか?

私は当院の理事長である父のもとで育ちましたので、小学生の頃には、家にあったカテーテルの部品を切ったりつないだりして遊んでいたんです。もともと何かを作ることが好きだったので、将来の夢は宮大工。そのくらい、ものづくりへの興味が強かったんです。しかし中学生、高校生と成長し、自分の将来をより具体的に考えるようになると、次第に医師という仕事に魅力を感じるようになりました。中でも、父が取り組んでいたカテーテル治療は、私にとって最も身近な医療技術であると同時に、創造性を掻き立てられる仕事なのではと考えるようになったんです。実際に血管内治療について学んでいくと、繊細な手技を極めていくことにもやりがいを感じますし、何よりも低侵襲でありながらしっかり回復につなげていける、その可能性に大きな魅力と将来性を感じたことも大きかったです。
血管内治療のどんなところにやりがいを感じますか?
血管内治療の大きな魅力は、手術が難しい方や全身化学療法の副作用に苦しんでいる方、あるいは他に治療の選択肢がないと言われた方に対して、一つの現実的な選択肢を提供できるところにあります。決して万能な治療法ではありませんが、患者さんの状態に合わせて適切に選択し、丁寧に治療を行うことで、人生に新たな時間や希望を生み出すことができます。患者さんやご家族の笑顔や安心した表情を見れたら、それが、医師としてのやりがいや喜びを最も強く感じる瞬間ですね。少しでも役に立てるように、治療に取り組んでいきたいです。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

まず、血管内治療の存在をより多くの方に知ってもらい、標準治療などでは対応できず医療機関を転々とし続けるがん患者さんが一人でも少なくなるようにしたいです。そのためにも、患者さん一人ひとりの思いをしっかりと受け止め、応えられる施設にしていきたいです。また、血管内治療の技術は今後もさらに可能性を広げていくと思います。今後も医療の研究が進み、がんだけでなく、心臓や脳、肝臓などさまざまな臓器の病気に応用できる道も開けるかもしれません。必要な方へより多くの選択肢を届けられるよう、今後も研鑽を重ねていきたいと思います。

