鼠径ヘルニアは何科にかかれば？
負担の少ない日帰り手術で治療を

検診・治療前の素朴な疑問を聞きました！

Q鼠径ヘルニアはどのような病気で何科に相談すれば良いですか？

A

鼠径ヘルニアとは、本来ならおなかの中にあるはずの腸や脂肪が、鼠径部の筋膜が弱くなって筋肉の隙間から皮膚の下に出てくる病気で、「脱腸」とも呼ばれています。自然に治ることはなく、多くの方が治療している一般的な疾患です。基本的には外科手術による治療しかありません。わが国でも非常に手術数が多い疾患で、年間手術数で比較すると虫垂炎手術数よりも多いです。鼠径部の膨らみに違和感や痛みがある方や、痛みはなくても膨らみが大きい方は外科や消化器外科にご相談ください。

Q具体的にどのような外科手術を行うのでしょうか？

A

アメリカ外科学会のゴールドスタンダードであり、世界標準の鼠径ヘルニア治療ガイドラインでも推奨されている方法であるリヒテンシュタイン法を行っています。鼠径部を約5cmほど切開し、2枚の腹斜筋の間にポリプロピレン製メッシュを挿入する方法です。メッシュは2枚の筋肉に挟まれるためずれにくく、現在最も再発しにくい手術法といわれています。1986年に米国で発表され、局所麻酔下の日帰り手術による早期社会復帰のため提唱された方法です。手術後の食事・運動制限もなく、数日間仕事を休む必要もありません。体に負担の少ない治療法だといえるでしょう。

Q患者さんにとって負担の少ない手法になっているんですね。

A

その大きな理由となっているのが麻酔法です。基幹病院などで鼠径ヘルニアの手術を受ける場合には全身麻酔や腰の麻酔などを行うケースが多く、3〜4日程度の入院を要するのが一般的ですが、当院では体に負担の少ない局所麻酔に加えて、コンピューター制御のTCIシステムによる軽い全身麻酔を行っています。そのため手術中は痛みの心配はなく、しかも麻酔からの回復が早いので、術後約1時間ほどで帰宅でき、すぐにお食事も可能です。加えて長時間の鎮痛効果が期待できる局所麻酔薬を使っているので、手術後の痛みが少なく、早期社会復帰ができることも特徴です。

検診・治療START！ステップで紹介します

1医師によるカウンセリングで病状を確認

初診時には、まず痛みや違和感があるか、いつから症状があるかなどのカウンセリングを受ける。鼠径ヘルニアをはじめ、前立腺がんの手術の有無といった既往歴や現病歴についても細かくヒアリングが行われる。

2超音波検査で手術有無が判断され、術前検査などに進む

立った状態と寝た状態での超音波検査を受けて、手術が必要かどうか医師からの診断を受ける。手術が必要な場合には手術日を決め、そのまま術前検査として心電図検査と血液検査を受ける。重い糖尿病が見つかった際には手術が延期されるケースもあるが、局所麻酔のため心肺機能低下・高度肝機能障害のある人や90歳以上の高齢者・高度精神障害の人も日帰り手術は可能だ。

3手術当日、事前説明を受け鼠径ヘルニアの手術へ

手術当日は病室に入って手術着に着替えた後、医師から術前検査の結果や手術の流れなどについて説明を受け、手術説明同意書にサイン。手術室に入りリヒテンシュタイン法による鼠径ヘルニアの手術を受ける。一般的に60〜70分ほどで手術は終わる。腰椎麻酔や全身麻酔で行われる術前の浣腸や尿道カテーテルの挿入は行われることはない。

4病室に戻って休息を取り、術後の説明を受ける

手術が終わったらそのまま病室へと歩いて戻り、コーヒーや茶などの水分を補給して少し休憩を取る。看護師より痛み止めの坐薬などについて服薬指導を受け、着替えを済ませた後、手術中の写真を見ながら医師より説明を受ける。希望すれば当日でもシャワーに入れるよう防水テープの処置を受けられる。

5術後の診察で傷跡などをチェック

手術翌日から3日以内に一度来院し、手術跡のガーゼを防水テープに取り換えてもらう。その後入浴が可能。一週間後にもう一度診察を受け、防水テープを外し、傷痕などをチェックして一連の治療は終了。