子どもの感染症は早めの受診を
保護者が知っておきたい基礎知識
片瀬こどもクリニック
(藤沢市/湘南海岸公園駅)
最終更新日:2025/04/07


- 保険診療
新型コロナウイルス感染症の大流行は落ち着いてきたといわれている昨今。しかし小規模な流行は続いており、他にもインフルエンザや手足口病、マイコプラズマ肺炎などさまざまな感染症の流行も注目されている。特に、保育園や幼稚園に通う子どもは感染症にかかりやすく、時に重症になることもあるようだ。そこで「片瀬こどもクリニック」の片倉茂樹院長に、子どもの感染症について取材した。片倉院長は感染症やアレルギー疾患に詳しい専門家で、同院では通常の診察室の他、感染管理室を2室設置。患者の動線や空調も厳密に管理されており、感染症の患児、予防接種や乳児健診の子どものどちらもが安心して受診できるだろう 。地域の保護者に感染症やワクチンについて相談されることも多いという片倉院長の解説をぜひ参考にしてほしい。
(取材日2025年2月13日)
目次
ワクチンがある感染症はできるだけ接種を。発熱や消化器症状、気になる症状はなるべく早く小児科へ
- Q子どもがかかりやすい感染症について教えてください。
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A
▲子どもの体調に少しでも異変を感じたら相談してほしいと話す院長
子どもがかかりやすい感染症は多くありますが、2013年から公費で接種できるようになったワクチンが増えたことで発症は減少していて、例えばロタウイルスや水痘は激減しました。麻疹(はしか)も国内での発症はほとんどみられなくなりましたが、海外から流入することがあります。藤沢市でも発生したことがありますが、ワクチンを2回接種しているお子さんの発症はありませんでした。小児期におけるすべての感染症はできるだけ早期に診断を受け、必要な治療を始めることが大切です。
- Q新型コロナウイルス感染症の影響はまだあるのでしょうか。
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A
▲その年によって流行する症状はさまざま。常に予防の意識を持とう
流行は継続し、子どもたちも感染しています。ただ、ウイルス流行株が変異するたびに症状は軽くなる傾向です。1~2日で回復が見込まれ、小児の症状はコロナ禍前からあった「風邪のコロナウイルス感染症」とあまり変わらなくなりました。他方、コロナ禍では感染症対策により、新型コロナウイルス感染症以外の感染症はあまり流行しませんでした。最近は感染症対策が緩み、コロナ禍の5年間のブランクで抵抗力が低下したこともあり、マイコプラズマ肺炎や溶連菌感染症、ノロウイルス胃腸炎、手足口病などのコロナ禍前によく見られた感染症が流行しています。そのため体調を崩す子が増えたので、心配でしたら経験豊富な小児科医師にご相談ください。
- Qインフルエンザも流行しているので、心配です。
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A
▲保護者の話に耳を傾け、生活の中から原因を探る
インフルエンザは1週間ほど高熱が続きインフルエンザ脳症を引き起こす恐れもあるので子どもには怖い病気です。しかし、ワクチンと検査キット、治療薬が年々改良されており、これらをうまく使えば以前ほど怖い病気ではなくなっています。ワクチンは予防に有用です。 今シーズンの検査陽性者のほとんどが接種していなかったようでした。そして最近の検査キットは発熱から数時間で陽性と判定できる場合があります。ワクチンを接種していれば発症したとしても、迅速に診断を受け、ウイルスの増殖を防ぐための薬を早期服用することで、一晩くらいで回復が見込めるでしょう。発熱の時間を短くできればインフルエンザ脳症のリスク低減も期待できます。
- Qでは、気をつけるべき感染症や、注意点がありますか。
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A
▲不確かな情報に惑わされずに適切な情報を選択することが大切
特に気をつけたいのは、RSウイルス感染症と呼ばれる呼吸器系の感染症です。およそ4歳を超えたくらいの子どもでは咳や鼻汁など一般的な風邪症状とあまり変わりませんが、乳児から3歳くらいまでの子が初めて罹患したときには、気管支喘息のような咳を伴う強い症状が出ることがあります。最近、生まれてくる子どもの発症予防を目的に妊婦さんへのワクチン接種が認可されましたが、子どもに使えるワクチンがまだないので注意が必要です。また、インターネットで感染症など病気のことを調べる親御さんが多くなっていますが、正しくない情報も流れています。困ったときは専門家である小児科医師に相談してください。
- Q日常生活の中ではどのようなことを心がければ良いのでしょうか。
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A
▲毎日の生活リズムを整えることが第一だと話す院長
インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も、感染した後、発熱症状が出る1、2日前から感染力があります。マスクやうがい・手洗い、密を避けるといった感染対策は有用ですが、小さい子どもの場合はそれで感染を防ぐことは難しいでしょう。また、ある程度は感染症にかかったほうが、抵抗力がつき丈夫な体に育つことが見込めるので、すべての感染症を防ぐ必要はありません。予防できる病気はワクチン接種をして、発熱や嘔吐、下痢など感染症が疑われる症状がある場合は早めに小児科を受診して適切な診断を受けてください。そして、日頃から規則正しい食生活や十分な睡眠を心がけ、お子さんに心身ともに無理をさせないことが大切だと思います。