新米ママ・パパに知ってほしい
離乳食から始める口腔環境づくり
井尻歯科クリニック
(神戸市北区/鈴蘭台駅)
最終更新日:2022/05/09


- 保険診療
1990年の開業から、数多くの子どもたちを診療してきた「井尻歯科クリニック」。同院が地域の子どもたちの健康を願い、力を入れてきたことの一つに新米ママ・パパに向けた離乳食講座がある。「特別な方法は必要ありません。正しい離乳食の食べさせ方をしていれば、赤ちゃんも正しい食事の飲み込み方と舌の位置が身について、自然ときれいな歯並びに近づいていくと考えられます」と話すのは院長の井尻利枝子先生。まだ歯が生えそろう前の乳児期の離乳食の段階から積極的に関わり、正しい嚥下や咀嚼を習得することで少しでも歯列矯正を必要としない健康的な口腔環境づくりをめざしている。「ただし、ちょっとしたこつは必要」という井尻院長に、具体的にいつから、またどのように行うのか、離乳食の進め方について詳しく解説してもらった。
(取材日2022年4月18日)
目次
乳児期から積極的にアプローチ。正しい離乳食の方法を知ることで、きれいな歯並びや口腔機能向上をめざそう
- Q離乳食を始める時期はいつ頃からですか?
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A
▲手作りのスライドショーで絵や写真、動画も交えて説明を行う院長
一般的に、離乳食を始める時期は生後5~6ヵ月とされています。しかし、赤ちゃんの成長には個人差がありますから、月齢にとらわれることなく、まずはご自身の赤ちゃんを観察してみることが大事です。赤ちゃんがおもちゃなど手にしたものをなめだす、首が据わって少しの支えがあれば座ることができる、大人の食事に興味を示すといった様子が見られたら離乳食のスタート時期だと考えましょう。また、指しゃぶりも離乳食開始のサインの一つです。歯並びへの影響が心配かもしれませんが、この時期の指しゃぶりは、自分の手や口の大きさを認識したり、離乳食を食べる練習になったりしているといわれます。無理にやめさせないようにしましょう。
- Q離乳食の際にやってはいけないことはありますか?
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A
▲離乳食を食べる・食べないには個人差があり、焦る必要はないそう
赤ちゃんが食べてくれないからと、スプーンを上あごにこすりつけたり、無理やり口の中に押し込だりしてはいけません。最初は1日1回、1さじで構いません。下唇の上にスプーンをのせて、上唇が閉じるのをそっと待ちます。この時、お口に入った食事を舌で押し戻すことがありますが、それはおっぱいを吸う時に身につけた反射行為です。気にする必要はありませんが、あまり反射が多い場合は4~5日待ってから離乳食を再開するといいでしょう。また、赤ちゃんは初めての離乳食に興味津々です。食事の味や舌触りはもちろん、スプーンに触れるのも初めての体験ですから、ママやパパも一緒に楽しむつもりでスタートしましょう。
- Q離乳食をあげる際のコツはありますか?
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A
▲乳児期の「食べる練習」が健康的な口腔環境づくりにつながる
離乳食をあげる時のこつは、子どもからお口で迎えに来て食べてもらうように誘導していくこと。具体的には、スプーンをお口の前に持っていき、すぐにあげるのではなくじっくりと待ち、「あーむ」と上唇でくわえてお口が閉じるのを待ってスプーンを引き抜きます。そして、飲み込んだのを確認してから、次の一口をあげるようにしてください。基本的に、初期の離乳食は栄養を補うためではなく、「食べる」という行為を練習するためのものです。お口をしっかりと閉じて飲み込むという動作がきちんと習得できると、将来的にくちゃくちゃ音をたてて食べたり、お口ポカンになったりすることも減ると考えられています。
- Q初めの頃は噛まずに飲み込んでいても大丈夫なのですか?
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A
▲同院では幼児の「お口ポカン」の悩みに測定やトレーニングも対応
初めは噛まずに飲み込むだけで大丈夫です。むしろ初期の段階ではまだ噛むことはできません。生後7~8ヵ月頃から舌の上下運動ができるようになり、生後9~11ヵ月頃から左右にも動くようになってようやく咀嚼できるようになります。子どもの様子を見ながら食材を徐々に固形に近づけていきますが、まだまだ大人のように噛むことはできません。指で軽く押しつぶせるくらいの硬さが目安です。それでもなかなか飲み込めないようなら、丸飲みや流し込みをさせないようやわらかいものに戻します。また、ストローは再び舌を出す動作を引き起こしやすいため、離乳食の進みが後戻りしてしまうことも。飲み物はまずはコップから習得しましょう。
- Q手づかみ食べもしていいのですか?
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A
▲離乳食に悩むママ世代の力になりたいと語る井尻院長
1歳を過ぎるとようやく奥歯が生え始め、噛むことができるようになってきます。この頃に始まる手づかみ食べは「食べる」意欲を育てる大切な行為です。汚してもいいように準備をして十分にさせてあげましょう。この時のこつは、親が一口大の食事を作ったり、量を調節したりしないこと。トライアンドエラーを繰り返しながら、子ども自身が一口量を覚えたり、前歯を使ってかじり取って食べたりすることが重要なので、ある程度大きさのある赤ちゃん用のせんべいやパンやおにぎりなどを用意します。ただし、丸のみしたり、お口に入れ過ぎたりすると危ないこともあるので、必ず見守りながら進めるようにしてください。