原 功哉 院長の独自取材記事
原内科クリニック
(福岡市南区/博多南駅)
最終更新日:2024/08/09

老松神社前バス停留所からすぐの場所にある「原内科クリニック」。前身である「原内科・放射線科医院」から2024年5月に現在のクリニック名へと変わり、糖尿病内科を専門とする原功哉先生が2代目院長に就任した。「私の専門は糖尿病治療ですが、町のかかりつけ医として幅広い内科疾患に対応できるのでは、と考えたからこそ選んだ道でもあります。困ったときに最初に受診する場所、気軽に相談できるクリニックをめざしています」と話すとおり、院長の雰囲気はとてもフランクで話しやすい。特に糖尿病治療では患者との対話が重要で、かつポジティブな気持ちが大切だと院長は語る。そんな院長に同院が行っている糖尿病治療の具体的な考え方、スタッフとの関係性などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年6月24日)
努力が報われやすい糖尿病治療。前向きに臨んでほしい
2024年5月にクリニック名を新しくされたそうですね。

当院は父が開業したクリニックで、もともとは「原内科・放射線科医院」という名称でした。ただ私は糖尿病内科が専門です。放射線科の名前とはミスマッチが起きてしまう恐れもありましたので、現在の「原内科クリニック」としました。ただ、糖尿病内科を専門としているのは間違いないですが、父の頃からの患者さんもおられますし、何より街のかかりつけ医として一般内科の疾患も幅広く診て、緊急時には然るべき医療機関につなぐのが大きな役割の一つだと考えています。そのため「内科」という名称であれば、どんな方でも通いやすいのではないかと考えました。
ご専門である糖尿病内科の治療の特徴を教えてください。
まずは、糖尿病治療は、患者さんが頑張った分が報われやすい治療だということです。もちろん患者さんによって適した治療、そうではない治療はあり、完治するものではなく、一生付き合っていくものにはなりますが、うまく付き合っていくことができる疾患だとも言えるのが糖尿病なんです。また糖尿病治療では画一的な治療はありません。患者さんお一人お一人の体型、年齢、肝臓や腎臓の数値、血液検査の細かい数値、皮膚疾患・眼科疾患などの合併症の有無、そして生活スタイルやお仕事の内容などを考慮したオーダーメイド治療です。「この方は痩せ型だけど、肝臓の数値が気になるからこのお薬がいいな」など、その方にとってぴったりなものをパズルのように探していくのが、糖尿病治療の特徴の一つだと感じています。
患者さんとのお付き合いを重ねながら、より良い治療を探していくのですね。

患者さんお一人お一人のキャラクターがあって、対話をしながらその方の生活スタイルや考え方などの理解を深めていくのがとても興味深いんです。そういうこともあって、私は、糖尿病治療はネガティブにやってもうまくいかないと考えています。糖尿病治療では、一つのアプローチが駄目でも違うアプローチを考えることができます。だから診察室でも患者さんとの会話で笑いが起きるくらいにポジティブな心持ちのほうが治療がうまくいくと考えています。「お正月にお客さんが来たので、ついおいしいものをたくさん食べちゃいました」と笑って話せるくらいの関係が、治療にもいい効果をもたらすのだと思いますよ。
まずは通院を続けることが第一。そのための土日診療も
お薬の処方も患者さんによって異なるのでしょうか?

もちろんです。糖尿病のお薬は本当に種類が豊富で、同じ糖尿病であっても人によって処方するお薬が異なるのも大きな特徴ですね。例えば扁桃炎を起こして喉が痛いのであれば、ほぼお薬の処方は決まっていて、誰にとってもほぼその選択が正解と言えるでしょう。しかし糖尿病治療には“全員に通用する正解”はありません。肥満気味である、汗をかきやすい、お昼ご飯の時間がまちまちである……そういうことにも柔軟に対応しながら処方できるのが糖尿病治療です。糖尿病内科に関わらずどの治療も医師と患者さんの「二人三脚」であることは間違いないですが、より糖尿病治療ではその色合いが濃いのではないかと感じています。
一方で、糖尿病治療はドロップアウトしやすいとも聞きます。
糖尿病治療の一面であり、最大の課題ですね。理由はやはり、自覚症状がないからでしょう。どこかが痛かったりすれば、通う必要を感じるでしょうけれど、そういうわかりやすいものがないからこそ、治療が途絶えがちです。しかしそうやって1年後に久しぶりに受診した方の症状が一気に悪化していたり、脳梗塞や心筋梗塞などを発症して救急搬送されたりすることも少なくないのです。だから患者さんに言いたいのは、とにかくまずは通院してほしいということ。薬が飲みづらい、薬の数が多いなどがあれば調整しますから、まずはそれを言いに来てほしいのです。それに、通院したいけれど時間が合わないというケースもありますよね。そこで土日の診療にも対応することにしました。実際に「平日は診療時間に間に合わないので助かります」というお声もいただいていて、今後も通いやすい環境づくりへの工夫を続けていきたいと考えています。
先生が診察の時に心がけていることは何でしょうか?

糖尿病内科を専門とする医師として、その方にとってのベストだと思う治療は必ず提示します。ですが、それを患者さんに押しつけることはしません。例えばAという治療が糖尿病治療専門の医師としてベストだと考えられるとしても、患者さんのご希望がBの治療であるならばそちらで処方します。もちろんその際に考えられるリスクなどは説明し、それらを患者さんがしっかり理解された上で「どちらが良いですか?」とお尋ねして選んでいただきます。期待できる治療の効果はやや薄れるかもしれませんが、そうしたほうが「押しつけられた」感じがなくて、患者さんも続けやすいですよね。また糖尿病治療の最初の一歩は、やはり食事と運動。20〜50代の若い方にはいきなり服薬治療を行うのではなく、まず運動と食事の見直しから入ります。
どんな症状でも早めに来て、笑顔になって帰ってほしい
糖尿病治療では食事と運動は外せないのですね。

糖尿病治療で最も大事なのは食事と運動の改善です。80代くらいの方が食事をいきなり変えるのは難しいので、血糖値を下げるためのお薬と同時に運動・食事指導を行うこともあります。ですが、やっぱりお薬は飲まずに済むならそのほうがいいですよね。お薬を飲むこと自体に抵抗感がある方もおられ、それが治療をドロップアウトしてしまう一因でもありますから。特に20〜50代の若い方だとどうしても食事・運動と糖尿病治療は切り離せないですから、お仕事などで忙しくとも、「こういう運動をしてみませんか?」「この食事は見直してみましょう」と、どこかに頑張れることがあるのではないかと話し合うように心がけています。それでも改善が難しければ服薬、というふうに段階を踏んでいくのが糖尿病治療なのです。
スタッフの皆さんはお父さまの頃から在籍されているのでしょうか?
皆さん父の代からのスタッフで、ベテランばかりなのでとても心強いです。私はまだ30代の若造で、特に開業医としてのあれこれがまだまだ身についていないところも多くて。しかも全スタッフの中で私が一番年下なので、こんな若造に仕事の指示をされるのは嫌なのでは……などとつい考えたりもしてしまいます(笑)。ですが本当に感謝していますね。ただ、その気持ちをどう伝えたらいいのかわからないところがあるので、距離もさらに詰めていきたいなと思っています。当院は街のクリニックですから、医師、看護師、事務など、肩書にとらわれる必要はないでしょう。お互いにリスペクトしつつ、思ったことは何でも言い合える関係を築いていきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

糖尿病に関わらず、症状があったら遠慮なく相談にいらしてください。たまに「1〜2週間咳が続いているんです」という方がいらっしゃいますが、おつらいのでしたら我慢する必要はまったくありません。そういう何げない症状の中に、ごくまれにですが、すぐに救急搬送が必要なほど重大な疾患が隠れていることもあり得るのです。大きな病気にならないようにいつでも相談できる相手として、町のかかりつけ医である私たちがいます。当院は予約制ではないですし、なんなら話をするだけで「もう大丈夫です」と笑顔で帰っていく方もおられるくらいですから(笑)。通院を面倒がらずに、ぜひ気軽に、ふらっと立ち寄るくらいのお気持ちでいらしてくださいね。