峯 尚志 院長の独自取材記事
峯クリニック
(茨木市/茨木駅)
最終更新日:2025/05/09

JR京都線茨木駅の西口から徒歩3分、駅前の便利な場所にある「峯クリニック」は漢方治療を専門に行っている。熊本大学医学部を卒業後、漢方治療を行っていた大阪市の加賀屋診療所(旧・加賀谷病院)で勤務し10年以上にわたって研鑽を積んだ峯尚志(みね・たかし)院長が、2004年に茨木で開業。2016年にこの場所に移転し9年目を迎えるが、今も新しくきれいなクリニックだ。ゆったりとした気持ちで治療を受けてほしいと、待合室は「森」をイメージ。奈良県吉野のヒノキの床とスギの壁板に囲まれた空間は、木の香りが漂い「自然」にこだわった落ち着いた雰囲気をつくっている。診療も患者の自然治癒力を最大限に生かすことを追求し患者と丁寧に向き合って各自に合った薬を処方する。患者にとって最善の治療をめざす峯院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2025年4月2日)
患者の自然治癒力を生かすため、漢方治療に注力
どのような患者さんが通院されていますか?

当院は漢方治療を得意とするクリニックですので、漢方を希望される方がほとんどです。風邪の方もいれば、体の不調を感じて病院に行っても異常なしで経過観察となっている方もいらっしゃいます。花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患や、頸椎症・腰痛などの整形外科症状、月経痛、月経前症候群、不妊症などの婦人科症状も多いです。一方で、がんや炎症性腸疾患、膠原病といった難病の方もおられます。赤ちゃんからお年寄りまで、年齢層も幅広いです。私が気になるのは、30代から40代の働く世代の人たちですね。子育てをしながら親の介護などの負担もあり、職場では中間管理職のような立場に立たされ、真面目な人ほど仕事を背負って疲弊しストレスを抱えている。体に症状が出て検査しても「異常なし」と言われ、困って当院に来られる方も多いと感じています。
漢方を中心とした診療をされているのはどのような考えからですか?
診療にあたって一番大切にしていることは、患者さんの治ろうとする力を邪魔しないことです。体にもともと備わっている治ろうとする力を引き出す手助けをするということですね。西洋医学の薬ではなかなか難しくても、漢方薬ではバランスの調整が期待できると考えています。人によって体質や症状の出方が違っていて、それぞれが生まれ持った自然治癒力を高めることは病気と向き合うのに重要なことです。生命力が弱ったときでも、その生命力を大切に支えながら、病気の勢いと自然治癒力とのバランスを取りながら治療を進めていくことが望めるのは漢方の良いところです。必要以上の薬は使わず、決して漢方薬だけにこだわるのではなく、患者さんの自然治癒力がより高まるような治療をめざします。
先生が漢方を専門にされるようになったきっかけを教えてください。

熊本大学時代の漢方に興味を持っていた友人が、患者さんを漢方治療に連れていくのに僕もついて行ったんです。その際の診療をとても興味深く感じ、また「患者さんとの距離が近くていいな」と思いました。そして大学卒業後、大阪市で漢方を専門にされていた加賀屋診療所(旧・加賀谷病院)の三谷和合先生に、いわゆる弟子入りをしたんです。漢方治療がまだあまり認められていない時代に、入院施設を持っていて最期まで漢方で治療し看取りを行うところでした。入院患者さんの食事も、食材をすべて吟味しながら「食養」という考え方で食事を出す、今考えるととてもぜいたくな環境で漢方を徹底的に学びました。
西洋医学も取り入れながら、患者に合う治療を
その後、開業なさるまでの経緯を詳しく教えてください。

漢方の師匠である三谷和合先生が亡くなった後、どうしようか迷っていたら、先生が夢枕に立って「君がしたいようにしたらいい」とおっしゃったんです。それで本場の治療を一度見てみたいと思い、退職後中国の上海中医薬大学に短期留学しました。帰国後は西日本各地で漢方専門の外来を担当し、5年くらいあちこちの病院を回っていました。開業を考えるようになり、地元の島原や福岡など、いろいろな町に行って悩みましたね。茨木を選んだのは、漢方の調剤薬局があったことと、電車の窓から山が見えてほっとする場所だったからです。2016年に現在の場所へ移転し、木のぬくもりを感じられるような院内デザインにしてもらいました。特に待合室は患者さんの滞在時間が長い場所でもあるため、カウンターを作ったり床暖房を導入したりと、こだわりの設計です。
西洋医学については、どのようなお考えですか?
東洋医学と西洋医学は、まったく違う考え方を持っていますが、実はとても相性がいいと考えています。西洋医学は、厳しい診断基準に基づいて情報を整理し、正確な診断と治療を行うことが得意です。ただ、決められた治療をきちんと行っても、うまく効果が出ないこともあります。西洋医学は、病気として形がはっきりしたものを見つけるのが得意ですが、漢方は「何となく不調」というような体の小さな変化を捉えるのが得意です。当院では、まず必要な検査や診断をしっかり行い、西洋医学の目で身体をきちんと確認した上で、さらに漢方の視点も加えて、一人ひとりに合った治療を一緒に考えていきます。どちらか一方だけではなく、両方の良さを生かして、患者さんにとってより良い治療をめざしています。
漢方との付き合い方について、先生のお考えをお聞かせください。

漢方との付き合い方で大切なのは、漢方を特別なものと思わず、普段の暮らしの延長として自然に取り入れることだと考えています。「医食同源」という言葉があるように、日々の食事にも体を整える力があり、その先に漢方薬があります。まずは、自分の体の声に耳を傾けること。不足を補い、余分なものを捨て、冷えれば温め、熱がこもれば冷ます。そんなふうに体のバランスを整えることで、「気」の巡りが良くなることが期待でき、少しずつ体調も整っていくようつなげられます。胃腸が弱く虚弱な方にはおなかを温めるための漢方を、だるさや痛みを訴える方には不要なものを排出するための漢方を使い分けます。また、女性には月経リズムを整えることが大切で、その人に合った漢方を選びます。体調に不安を感じたら、年齢や性別に関わらず、ぜひ気軽にご相談ください。日常にも元気のヒントはたくさんあります。
心強いスタッフとともに
スタッフさんについて教えてください。

当院では、医師だけでなく、看護師や事務スタッフも一緒に、患者さんの「治る力」を応援することを大切にしています。新型コロナウイルスが広がり始めた頃、多くの医療機関が発熱患者さんの受け入れを断る中で、私たちは感染対策をしっかり整えた上で診察を続けることを選びました。その際、「無理をしなくていいよ」と伝えたにもかかわらず、スタッフ全員が次の日も変わらず出勤してくれたことは、今でも忘れられません。「やっと診てもらえた」と感謝してくださる患者さんの声に、私たち自身も励まされ、みんなの絆がさらに深まりました。今でも、外来終了後に毎日カンファレンスを行い、情報を共有しています。診察中に話しにくいことがあれば、看護師や受付スタッフにも、ぜひ気軽に声をかけてくださいね
息子さんも外来を担当していると伺いました。
そうなんです。週に1日、循環器内科を専門にしている息子が外来を診てくれています。もちろん私も診療しているので、息子が来る日は二診制ですね。必要なときは息子とカルテのダブルチェックをすることもあります。特に循環器に関することは息子にアドバイスを求めることが多いですね。当院に通う患者さんを息子のクリニックに紹介するときは、その後の患者さんの様子を逐一尋ねるようにしています。循環器内科疾患をお持ちの患者さんには、特に心強い存在だと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ひとことで言えば、私たちがめざしているのは、患者さんのつらさが少しでも楽になり、心にふっと明かりが灯るようなクリニックです。安心して相談できる場所でありたいと、スタッフ一同、日々心を込めて診療にあたっています。たとえ検査では異常が見つからなくても、東洋医学の視点から見つめ直すことで、治療の糸口が見つかることもあります。「なんとなく体調が優れない」「どこに相談したらいいかわからない」と感じたときには、どうぞ気軽にご相談ください。