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伊達 久 院長の独自取材記事

仙台ペインクリニック

(仙台市宮城野区/小鶴新田駅)

最終更新日:2021/11/02

伊達久院長 仙台ペインクリニック main

仙台市と石巻市をつなぐJR仙石線の小鶴新田駅から徒歩2分。「仙台ペインクリニック」は2005年に開業した、痛みに対する専門的な治療を行うクリニックだ。同院は、院長の伊達久先生の「外来だけではできない、プラスアルファの治療を提供したい」との思いから入院設備を備え、つらい痛みを抱えた患者が県内外から訪れている。「臨床の場であると同時に、後進育成を行い、日本のペインクリニックに貢献したいです」と語る伊達先生。エネルギッシュで、ジムに通い体調管理を行いながら日々忙しく診療にあたる。そんな伊達先生に、開業に至るまでの思いや、普段あまりなじみのないペインクリニックという領域などについて話を聞いた。

(取材日2021年9月24日)

プラスアルファの治療を行う有床のペインクリニック

開業の経緯をお聞かせください。

伊達久院長 仙台ペインクリニック1

2005年に当院を開業する以前は、「石巻赤十字病院」「石巻市立病院」の麻酔科に合わせて10年近く勤務していました。石巻市立病院でもペインクリニックの外来を開設していたのですが、麻酔科ですから、当然ICUや手術など麻酔の仕事もしなければいけません。他に人員がいればまた違ったかもしれませんが、後半は一人医長だったので365日24時間待機状態でした。次第にペインクリニックに専従したいという思いが募り、開業を決意。この場所を選んだのは、利便性を考えてのこと。石巻で診ていた患者さんが通いやすいように、沿線にある駅前でと、当地に開業したわけです。

入院設備がありますが、外来のみの治療とはどのような違いがありますか?

例えば神経ブロック療法にしても、痛みがひどい人は入院をすれば毎日神経ブロック療法ができますし強い薬を用いた神経ブロックなども行えます。また場合によってはカテーテルを入れる選択もできます。これは入院しなければできない治療です。開業した当時は全国的にも有床のペインクリニックは見当たらなかったのですが、外来だけの治療では限界があると考えています。今までの治療にプラスアルファのことができる場所にしたいと、有床のクリニックを立ち上げました。またペインクリニックに特化したクリニックとして、患者さんとしっかりコミュニケーションをとって希望を伺い、さまざまな治療のメニューを提供できるよう心がけています。

どのようなコンセプトで開業されましたか?

伊達久院長 仙台ペインクリニック2

当院はペインクリニックの治療ができる臨床の場であるとともに、教育施設でもあります。ペインクリニックは、大学病院などでもなかなか後進育成が進んでいない分野です。私自身は、関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)のペインクリニックで勉強をさせてもらいましたが、当時は無給でした。しかしその条件では若い医師たちには厳しいです。同年代の医師たちと同程度の給与を保証して、育成できる研修施設がなければ後進は育たないでしょう。臨床をしっかりと行いつつ、なおかつ次世代のペインクリニックの医師を育てられる教育施設にしたいという思いで、当院を開業しました。

急性から慢性まで、あらゆる痛みに対応

ペインクリニックとは、どのような診療科ですか?

伊達久院長 仙台ペインクリニック3

内科や整形外科など、一般の診療科では改善につながらないような痛みを診るのがペインクリニックです。たくさん検査をして、いろいろな診療科を回り、原因がはっきりしない、それでも痛みは良くならないというような慢性疼痛から、ぎっくり腰のような急性の痛みやがんによる強い痛みまで、さまざまな痛みに対応して診療します。患者さんの訴える痛みは、腰痛、帯状疱疹、ひざ・肩痛など多様です。それから頭痛や肩こりなどの日常的痛みで困って来る方も多いです。顔面神経麻痺の方や、がんによる痛みの患者さんも多くいらっしゃいますね。

慢性の痛みに対して、原因はどのように探っていくのですか?

慢性疼痛の場合、痛みの原因を明らかにすることは難しいです。また検査をしてわかるような痛みであっても通常の治療では対応できない痛みの治療を行います。慢性化した痛みの原因は器質的な理由もあれば、心理的・社会的な因子が関係していることもあり、さまざまな要素が複雑に絡み合い、慢性的な痛みを生み出していることが多いです。例えば骨が変形していても、それがすべての原因とは限らないのです。エコーやエックス線、MRIなど、さまざまな検査機器をそろえてますが、「この検査をすれば原因がわかる」というようなセオリー的なものはありませんから、トータルで診ていくことを重視しています。当院には臨床心理士、理学療法士のほか、内科、整形外科などいろいろな診療科の医師が在籍し、多方面から評価して治療を進めていきます。もちろん原因が明らかでも、痛みが強い場合や早く痛みを取りたい場合でも対応できるのがペインクリニックの強みです。

患者さんに必ずお伝えしていることはありますか?

伊達久院長 仙台ペインクリニック4

慢性疼痛の患者さんは、ずっと痛みに悩まされ続けていますから、「痛みをゼロにしてほしい」と訴える方がほとんどです。しかし私たちがお伝えしたいのは、「痛みとうまく付き合う」ということ。痛みとうまく付き合って、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)の向上を目標としています。とはいえ、いきなりこんなことを言っても患者さんには受け入れがたいことは重々承知しています。ただ、他の診療科と異なるのは、一時的に痛みを取り除くことが図れるということ。痛みを取るための処置を繰り返しながら、患者さんとコミュニケーションを重ねて少しずつ理解をしていただいています。痛みと付き合えるようになり、できることが増えてくると、多くの方は症状が良い方向に向かっていきます。

地域へ、そして日本のプライマリケアに貢献したい

先生はなぜペインクリニックを専門に選ばれたのでしょうか?

伊達久院長 仙台ペインクリニック5

私は自治医科大学の出身なのですが、同大では卒業後は出身都道府県に戻り、へき地の公的医療機関に勤務することが定められています。私も卒業後、へき地の病院や診療所などを回りましたが、田舎で診療をしていると、高齢の患者さんたちがあちこちが痛いと訴えて受診されます。「患者さんたちが困っている痛みをどうにかしてあげたい」と、臨床の中で感じたことがきっかけで、ペインクリニックを勉強するようになりました。ペインクリニックは臓器別ではなくて、痛みやしびれといった症状から診る医学です。その意味で、私自身は究極のプライマリケアだと思っています。

これまでの医師人生で、思い出深いエピソードを教えてください。

前任者が30年以上一人で診てきたような、小さな村の医療機関に赴任することになったのですが、そこは心電図以外の検査機器がなく、薬も錠剤がなく粉薬しか処方できないような本当に田舎の診療所でした。勤務した4年の間、いろいろなシステムをつくって、地域の人たちとたくさんコミュニケーションを取って本音を聞かせてもらいました。訪問診療と訪問看護、訪問リハビリテーションを始めたり、社会福祉協議会の車を借り上げて、役場のOBに運転手をお願いし、地域の人の交通の足にしてもらったりと、いろいろな取り組みをしました。こうした経験を通じて、患者さんとしっかりコミュニケーションを取り、その立場から物事を見ることが重要だなと学ばせてもらいました。

今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

伊達久院長 仙台ペインクリニック6

まずは後進育成の面で、日本のペインクリニックに貢献をしていきたいです。各地から学びに来てくれているので、いろいろな先生方とコミュニケーションを取りながら、ペインクリニックのすそ野を広げていきたいですね。以前は全国に目を向けていたのですが、東日本大震災を機に、考えが変わりました。私が以前勤務していた石巻は相当な被害を受け、今までの恩を少しでも返したいとの思いで、石巻に分院をつくりました。地域に貢献しつつ、全国にも目を向けた医療を展開していきたいです。また、ペインクリニックは、一般の方にも医師の間でもなかなか知られていない領域ですが、私たちがもっと教育や広報、啓発に力を入れなければと思っています。日本人は我慢強い人が多いですが、気軽に来ていただけるとうれしいです。「もっと早く来れば良かった」と言われることのないよう、私たちも努力をしていきます。

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