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前田 憲志 院長の独自取材記事

大幸砂田橋クリニック

(名古屋市東区/砂田橋駅)

最終更新日:2021/10/12

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市営地下鉄名城線砂田橋駅から徒歩3分。在宅医療や訪問看護といった高齢者向け医療、人工透析治療、一般内科を診ている「大幸砂田橋クリニック」は2002年の開業以来、「医療」「福祉」「生活」を一体化させた患者支援に力を入れている。御年77歳になる前田憲志院長ははつらつとして年齢を感じさせないベテランドクター。専門である腎疾患治療をきっかけに高齢者医療に取り組むようになった背景とその現状、今後の展望などを伺いながら、高齢者とその家族がより良い暮らしを送るための医療のあり方とヒントを教えてもらった。

(取材日2016年1月21日)

大学病院時代から切望していた高齢者医療にまい進

もともと腎疾患がご専門だそうですね。

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名古屋大学病院の分院にいた若い頃、上司の専門が腎臓で、毎日腎不全の患者さんが山のように入ってきて、次から次へと亡くなっていくのを目の当たりにしました。非常にショックでしたね。医師として「これは何とかしなくてはいけない」と思い、私も腎疾患の道を進み50年になります。その間、人工腎臓は目覚しい進化を遂げ、昔なら亡くなっていたケースが、今は助かるようになりました。当時16歳だった患者さんから毎年年賀状が届くのですが、今年「あれから46年経ちました」と書かれているのを見て感慨深いものがありました。

高齢者医療に取り組むきっかけは何だったのでしょう?

名古屋大学病院の分院に初めて「在宅管理医療部」ができ、その当時の経験が今日の在宅医療につながっています。高齢社会が進み、それまで病院中心だった医療の在り方も変わりました。今は「医療」「福祉」「生活」が一体となった支援を地域活動の中で有機的に機能させる「Community Based Medicine(CBM)」が重要です。2025年を目処に準備が進む地域包括ケアシステムがまさにそれで、システムが整えば医療費を抑えることができ、ひいては介護にかかる費用も抑えることができると期待されています。名古屋市ではそのための枠組みづくりが早かったので、われわれ医療従事者はそこに「魂」を入れなければなりません。

魂を入れるとは具体的に?

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高齢の患者さんにとって何が必要なのかを見つける努力を惜しまないことです。患者さんの要望にしっかりと耳を傾ける、患者さんの生きがいを尊重するなど、その方法は一つではありません。ただ長年、高齢者医療に関わってきて思うのは在宅医療に入る前の段階で出来ることがあるということ。それは自分で歩いて自分で行動できる元気な状態を維持して差し上げることです。そこで当院では通院段階から骨折防止や筋肉量の低下防止、食欲増進などに力を入れ、そのためのノウハウを持つ人材育成にも取り組んでいます。これからのクリニックの使命だと思いますね。

多元的な老化には複数のアプローチが必要

一般的な医療と高齢者医療の違いは何でしょう?

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老化というのはとても多元的で複数の機能が同時に衰えてくるのが特徴なので、一つの病気を治していく医療とはかなり違います。しかも、ポイントに沿って治療していかないと効果が得られません。例えば骨折の話だと、クリニックでは超音波を使って骨量を測るのが一般的ですが、当院では骨密度測定装置を導入しDEXA法によって精密な数値を出します。その上で具体的な目標設定をして骨折を防いでいるのです。ただ漠然と治療をしていると、ある日突然骨折して病院に運ばれ、そのまま寝たきりになってしまうケースがたくさんあります。それではダメだと、在宅医療を始めた当初に痛感しました。

どのような方法で骨折予防をするのですか?

主に薬と筋肉を維持するための運動です。運動はごく軽いものでいいんですよ。仰向けに寝て両足を上げ自転車こぎをするのも効果があります。食事も大事ですね。やはり食べなければ元気な状態は保てません。もう一つは良質な睡眠です。こちらも薬を使いますが、本来の薬効ではなく副反応を利用します。医療先進国の米国でも主流になっている方法です。睡眠をしっかりと取ると成長ホルモンが出て、翌朝は食欲が出ます。薬に関しては進化が目覚しく、最近では筑波大学で発見されたオレキシンなどは覚醒の物質として睡眠障害の治療に使われようとしています。このオレキシンを老化防止に使えば元気なお年寄りが増えるかもしれません。そんなふうにできるだけ新しい治験も取り入れ、いろいろな技術をお持ちの地域のクリニックの先生方とネットワークを作りながら、高齢化へ向かう過程を上手く制御していきたいと考えています。

体力は何歳ぐらいから目に見えて衰えていくものでしょう?

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60代はまだ運動によって筋肉量が増える年代で、70歳を過ぎると衰えが始まり、自分の力だけでは体力を維持できなくなる傾向にあります。そして70代後半から80歳にかけて急速に衰えていきます。最近は超人的なご老人もいらっしゃいますが、だいたいがそのような段階を踏んでいきます。日本でも基礎研究が進み、老化のメカニズムもだいぶ解明されてきていて、私も老化に作用するホルモンに注目し、今後は高齢者の内分泌にも力を入れたいと考えているところです。

患者が自立できる高齢者医療をめざして

高齢者医療にあたりどんなことを大切にされていますか?

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あまり早い段階で介護を入れないようにしています。人に任せきりになり体力・気力ともに落ちて、自立できなくなってしまうためです。あと患者さんの「興味」を大切にしていますね。患者さんにはなるべく好きなことを楽しんでいただくようしています。すると脳の扁桃核という部分が刺激されて満足感が得られるからです。私の患者さんに写真が好きな男性がいまして、いろいろな所へ出かけては風景写真を撮って見せてくださいます。それをスタッフと一緒に、「いいですね、素晴らしいですね」と申し上げるのです。あるいはかつて少年野球チームの監督をされていた患者さんは、教え子にプロ野球選手もいて、それをとても誇りにされているので、昔の思い出に耳を傾けます。病気を診てもらうためだけの通院など気が滅入ってしまうでしょう? 楽しみのない通院は高齢者には合わないと思うのです

看取りもされていますね。

看取りはご家族の希望をできるだけ聞きながらやっていきます。在宅医療の場合、ご家族との信頼関係が非常に大事で、看護師の力がとても大きいですね。医師よりも患者さんの生活のことをよく把握していますので、とても頼りになります。当院には名古屋がんセンターに長くいた緩和ケアのプロがいまして、薬のことをよくわかっています。看取りには自然に逝かれる場合と苦しんで逝かれる場合とがあり、前者なら家族も「よかったね」と納得されますが、後者は何度立ち会ってもつらいものです。最近の緩和ケアはただ痛みを和らげるだけでなく、薬の副反応で精神的な満足感も得られる方法もありますので、当院のスタッフも名古屋がんセンターに通い最新の情報に触れて勉強を重ねています。こじんまりした内科医院ながら、ここ4、5年はチーム医療体制がかなり整ってきて、スタッフ全員が共通の課題認識を持って頑張ってくれています。

先生はおいくつになられるのでしょう。とてもはつらつとされていますが、元気の秘訣は何ですか?

今年77歳になりますが、大きな病気はしたことがありません。普段心がけているのは食事を美味しくいただくことと、6~7時間の睡眠、早起きです。5時には起きて仕事をしていますよ。朝は集中力が高く、昼間の半分の時間で仕事が片付きます。あとは写真を撮るのが楽しみですね。風景でも人でも何でも撮ります。当院の待合室で毎年クリスマスに患者会の方がミニコンサートを開くのですが、その様子を撮るのも楽しみの一つです。使うのは未だにフィルム。デジタル写真とはきめの細かさが違います。休日は家族と出かけたりもしますが、頭のどこかに医療のことがあって、本を読んだり調べ物をしたりしていますね。初めはばらばらなパーツが、どこかでつながるのが面白くてたまりません。

どんなときにこの仕事をして良かったなと思いますか?

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医師になって半世紀、医学がここまで進歩するとは想像していませんでした。世界中で努力に努力を重ねている人たちの成果ですね。そこに思いを馳せると自分も医師であることを誇りに思います。私が医師になった理由は、物心つく前に父が亡くなり、母がものすごい苦労をして私と姉を育ててくれたことにあります。もうひとつは戦争体験ですね。栄養失調や病気で亡くなる方が後を絶たない悲惨な時代を経験しました。私も決して体が丈夫なほうじゃなかったので、健康に対する興味は子どもの頃からあって、中学生の頃には医師になろうと決めていました。医学のますますの進歩は疑う余地のないことです。患者さんやご家族の皆さんには、どうか希望を捨てないでくださいと申し上げたいです。ひとつひとつ試していけば良い方向へ進んでいく可能性は高いので、私どもはできるだけ患者さんに楽しんで治療を受けていただける環境を充実させたいと思っています。

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