中村 治夫 院長の独自取材記事
なかむらクリニック
(八尾市/高安駅)
最終更新日:2024/12/23

2020年に開院した「なかむらクリニック」は、八尾市刑部の閑静な住宅街にある。院長を務める中村治夫先生は、勤務医時代、心筋梗塞や狭心症といった病気に対し救急のカテーテル治療を多数経験した日本循環器学会認定の循環器専門医。これまでの豊富な経験と知見を生かし、循環器の疾患から一般内科まで、幅広く対応している。中でも力を入れているのが心臓リハビリテーション。心機能が低下した患者に対し、理学療法士と看護師が心拍数や心電図などをモニタリングしながらリハビリテーションを行うもので、地元だけでなく離れたところからも患者が受診する。穏やかで物腰がやわらかい中村院長が心に秘める地域医療への思い、心臓リハビリテーションへの思いについて、詳しく話を聞いた。
(取材日2024年9月13日)
心臓リハビリテーションに力を入れる
クリニックの特徴を教えてください。

長年地域の皆さんに寄り添って診療されてきた「はしもと診療所」を2020年に引き継ぎ、開院しました。私の専門は循環器ですが、地域の皆さんの健康を支えるために幅広く対応したいと思っています。風邪や頭痛といった不調はもちろん、生活習慣病の管理など、日常の内科的な疾患で通院していただくことも大歓迎です。一つ特徴を挙げるなら、心臓リハビリテーションでしょうか。心臓機能の向上をめざし心疾患の再発・再入院を防ぐことを目的としています。最近取り組まれるようになった治療なので、ご存じない方がいらっしゃるかもしれませんね。今、当クリニックで力を入れている治療です。
心臓リハビリテーションは、具体的には何を行うのでしょうか。
理学療法士や看護師が患者さんの心拍数や心電図、血中の酸素量をモニタリングしながら、患者さんに運動を行ってもらいます。自転車型のリハビリテーション機器を使っての有酸素運動やゴムバンドを利用した筋力トレーニングを組み合わせて行いますが、患者さんのその時の心拍数などに合わせて運動メニューを決めていくので、メニューの内容は個人個人違っています。スタッフが常に側にいて、運動中の患者さんを見守っていますので、運動が苦手な方や自信がないという方もご安心いただけると思います。
心臓リハビリテーションの対象となる方はどういった方々ですか。

心筋梗塞を経験されたり、何かの心臓疾患で入院されたことがある方はもちろん、心不全と診断された方であれば入院治療を受けたことがない方でも対象になってきます。心臓リハビリテーションを通し、運動を習慣にしていただき心機能を高めていただくことが目的です。症状が安定している方は、外来で診て運動指導だけ行い、自宅でご自身で行っていただくこともできます。当クリニックで定期的に心臓リハビリテーションを行う方は、スタッフがむくみが出ていないか、息切れがひどくなっていないかなど、心不全の状態を確認しながら、アドバイスを行います。患者さんは、1回1時間を週に1度というかたちで希望する方が多いですね。
クリニック主催のイベントを行い地域に貢献したい
患者さんは、どういった方々が多いですか。

開業当初は近くにお住まいの方が多かったのですが、患者さんがクチコミで広げてくださっているようで、最近は「循環器を診てください」という患者さんが、遠くからもやって来られるようになりました。また、インターネットで「心臓リハビリテーション」と検索して受診される方も増えています。そのほか、心機能が落ちている患者さんを病院やクリニックから紹介されることもあります。そういったケースでは、普段の薬はこれまでのかかりつけの医院で処方してもらっている方もいらっしゃいますので、心臓リハビリテーションの治療だけでも気兼ねなく来ていただきたいですね。一般内科にも対応していますので、風邪の方や生活習慣病の方もいらっしゃいます。生活習慣病の中では、血圧やコレステロール値といった血管部に関連する問題を抱える患者さんが多いかなという印象です。
クリニックの理念について教えてください。
「患者さんが笑顔になって帰るクリニック」を理念にしています。患者さんが笑顔になって帰るためには、治療に満足していただくほかに、例えば、患者さんの待ち時間を減らしたり、また来たいと思えるような環境をつくるということにもつながってくると思います。スタッフも、患者さんにどう接したら笑顔になってもらえるか、常に考えていれば居心地のいいクリニックになると思うんですね。心臓リハビリテーションに週に1回来ていただきながら笑顔になってもらい、ひいてはそれが再発予防につながり最終的に健康寿命につながればと思っています。
地域へ向けた活動もなさっているそうですね。

最近は、当クリニックが循環器、心臓、血管を専門とするクリニックというのは、ある程度認知していただけたかなと思うので、次なる課題はそこでさらにどれだけ地域に貢献できるかというところだと考えています。先日は、小学校3年生の教室に出張授業に行き、クリニックの地域での役割についてなど話をしました。そして今度、うちのクリニックが年1回行っているイベントを開催します。地域の方に来ていただいて、骨密度を測ったり、心臓リハビリテーションやストレッチを体験していただくといった内容を予定しています。いつも来ていただいている地域の皆さんに、何かちょっとしたお返しができればと思いまして、今後もそういった皆さんとふれあえる場を提供していきたいですね。
地域住民の健康寿命を延ばしたい
先生が医師をめざし、循環器を専門にしたのはなぜですか。

子どもの頃から医師に憧れ、めざして頑張ってきたというわけではなく、医学部に入学した兄を見て「負けたくない」と思ったからなんですね。意外と負けず嫌いなんですよ(笑)。循環器を選んだのは、心臓カテーテルに夢中になったからです。実際に医師になり、専門を選ぶ時、最初は整形外科にしようと思っていたんです。体の機能の回復を図っていくことで、人が元気になっていくようサポートすることに魅力を感じたからです。でも、心臓カテーテルの治療も、動きが悪くなった心臓を回復させていくことをめざすものです。そこから、とにかく夢中でカテーテルの治療を行ってきました。
開業のきっかけを教えてください。
大きな病院でカテーテル治療のような緊急の治療に数多く携わってきて、治療後に再発を繰り返す患者さんも数多く目にしてきました。命を救うための治療はもちろん大切なのですが、再発させないためにどうすればいいのかという部分に興味を持ったんですね。そんな中で再発を予防するために心機能を高めることを目的とした心臓リハビリテーションを学び、もっと広めたいという思いが芽生えました。さらに、できることなら一人の患者さんと長く付き合いながら治療をしていきたいと考えるようになりました。大きな病院では、一人の患者さんの予後を診続けることは難しいので、そうであるならば開業して患者さんとお付き合いしていきたいと思いました。物件を探している中でこの場所に出合い、2020年に引き継ぐことになりました。自分にとってはすごくいい出合いだったと思っています。
今後の展望をお聞かせください。

新型コロナウイルス感染症の対応で多忙だった時期が落ち着いてきて、力を入れてきた心臓リハビリテーションも患者さんが増えてきました。そうして、この地域の心疾患の患者さんをできるだけ減らしていくことに取り組んでいます。次なる目標は、再発予防の前段階にあたる健康診断を充実させることですね。当クリニックでは、午前に受ければ午後に結果がわかるという即日健診を行っています。3次予防である心臓リハビリテーションから、2次予防、1次予防と少しずつ前段階へ広げていき、最終目的である地域の皆さんの健康寿命を延ばすということにつなげていきたいですね。