北西 剛 院長の独自取材記事
きたにし耳鼻咽喉科
(守口市/守口駅)
最終更新日:2025/04/15

大阪メトロ谷町線の守口駅または大日駅から徒歩15分、八雲小学校バス停からすぐのところにある「きたにし耳鼻咽喉科」は2005年に開業。耳鳴りやめまいなどを中心とし、風邪など一般的な症状から花粉症や睡眠時無呼吸症候群などまで、耳鼻咽喉科疾患全般に対応している。北西剛(きたにし・つよし)院長は本の出版などを通して積極的に情報発信を行い、同院には地域住民だけでなく遠方からも患者の来院があるそうだ。西洋医学に加え、東洋医学や統合医療など幅広く知識を深め、患者が悩む症状が少しでも改善するよう取り組む北西院長に、現在、そして今後の診療方針などじっくりと話を聞いた。
(取材日2018年3月7日)
出身の守口市で開業し診療を続けながら医学博士号取得
医師の道へ進んだ経緯を教えてください。

親に聞くと、小学校2年生の時の作文に「医者になりたい」と書いていたそうなんです。その頃から考えていたようですね。自分一人でできる仕事をという気持ちがあり、英語が好きだったこともあり、自分の中では英語教師になるか、医師になるか、という選択肢でした。耳鼻咽喉科は診療範囲が広く、めまいなど内科的な疾患もありながら、手術など外科的な治療も行う科であることが魅力に感じました。
開業後の医学博士号の取得は大変だったのではないですか。
滋賀医科大学を卒業後、同大学の耳鼻咽喉科に入局。豊郷病院や彦根市立病院などで勤務し、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、甲状腺などの手術も多く経験してきました。研究が好きで続けたい気持ちもあったのですが、学んだことを生かし患者さんの力になりたいと考え、開業しました。開業後に、母校である滋賀医科大学に通い、難聴や耳鳴りなど聴覚の研究で博士号を取得しました。診療を続けながらの研究生活は大変でしたが、お世話になった先生方が、開業しても博士号が取れるようにと、熱心にサポートしてくださったおかげだと思っています。
出身地である守口市で開業されたんですね。

私は守口市出身で、この医院の前の通り沿いにある産婦人科で生まれました。ただ、開業場所を守口市で探していたわけではなく、ご紹介いただいた場所が偶然この場所でとても驚きました。耳鼻咽喉科は一般的にお子さんが多いのですが、当院は比較的高齢者の割合が多いように感じます。認知症状の入り口として、匂いがわかりにくい、耳が聞こえにくいなど耳鼻科の症状が出てくることがあります。懸念があれば、認知症チェックなどもこちらで実施しています。地域住民の方だけでなく、関東や四国など遠方から来院されている患者さんも多くいらっしゃいますよ。
慢性疾患が多い耳鼻咽喉科で幅広い選択肢を
どういう症状の方が多く来られていますか。

風邪や花粉症、アレルギー鼻炎、副鼻腔炎のほか、喉の違和感や後鼻漏などを訴える慢性上咽頭炎、ストレスによる低音障害型難聴、突発性難聴も増えていますね。花粉症には舌下免疫療法、レーザー治療を実施しています。また、睡眠時無呼吸症候群の方にはCPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)も導入しています。内科で睡眠時無呼吸症候群の検査をして、CPAP導入前に耳鼻科の診断を仰ぐため、紹介を受けて来院される方も多いです。耳鼻咽喉科は慢性疾患がとても多く、治療が長期化するケースもたくさんあります。耳鳴りやふらつき、めまいの訴えも多く、内科や脳神経外科などで問題がないと診断され、耳鼻咽喉科にたどり着かれるケースもあります。
耳鳴りの治療に補聴器を使われていると伺いました。
難聴が原因で、音が聞こえにくい、言葉がわかりにくい、耳鳴りがするなどの症状を、補聴器を補うことで軽減していこうとするものです。聞こえにくい状況のまま過ごし、脳が疲れてしまったことで、耳鳴りを発症している方にお勧めですね。目で例えると、物が見えにくい状況だと体に不調を来すことがありますよね。そこで眼鏡やコンタクトレンズで視力を補うということに似ているかもしれません。この治療法は普及しつつありますが、きっちりとした補聴器調整をやっていただける耳鼻咽喉科の医院はまだ多くはないようです。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

患者さんにすべて話をしてもらうこと。そのためには否定せず、医師の考えを押しつけず、「ゼロの状態」で話を聞くよう心がけています。困られている内容などじっくりと話を聞くだけでも症状が緩和する方も少なくありません。そして、患者さんが困っていることを把握することです。治療したいという方もいれば、症状が緩和すればそれで良いという方もいます。診断は人間が勝手に病名をつけて分類しているだけなんです。すでに存在している病名にあてはまらない方もいます。診断をつけて薬を出すだけが医師の仕事ではありません。同じ病名でも、人それぞれ困っていることは違っているんですよね。
患者の話を否定せず「ゼロの状態」で聞くことを大切に
症状の改善のために、さまざまな勉強をしているそうですね。

大学卒業後、耳鼻咽喉科で勤務を続け、近代西洋医学を中心に治療にあたってきました。難病を患う友人がいたのですが、当時はまだ治療方法は少なく、投薬治療でとても苦しんでいる様子を目の当たりにしたんです。また、耳鼻咽喉科のがん患者さんは、患部がお顔周辺にあり、言葉を失ったり、顎の形が変わったりすることがあり、つらい思いをされる方も少なくなかったんです。そういう方々を診ていて、もっと何かできることはないか、気持ちや体を楽にしてもらう方法はないかと思うようになり、近代西洋医学を突き詰めるだけでなく、補完的に行える統合医療などについても学びの幅を広げるようになったんです。
今後の診療方針についてお聞かせください。
西洋医学と統合医療、どちらか一方に重きを置くことはせず、上手にバランスを取っていきたいですね。病気を治すというよりも、その方に適した対応方法を検討していきたいんです。私の家族も大病を患いましたが、標準治療とされる西洋医学での治療を受けることができました。こうやって西洋医学を受けられる場合はそれでいいのですが、難しい方もたくさんいます。対処ができず困っている方々に対して、何ができるのかを常に考えていきたいです。現在はヨガ教室を開催したり、森林など自然にふれに出かけたりと、レクリエーション的なものにも取り組んでいます。実施するだけでなく、その場で患者さんからお話を伺うこともでき、大切な機会だと感じています。他には、今後は遠方の患者さんやご高齢の方へ、スマートフォンなどを使った遠隔診療も導入を予定しています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

めまいや耳鳴りのほか、喉の違和感、鼻水が喉に流れる後鼻漏や咳などの症状は、食生活や疲労、ストレス、睡眠も原因となる可能性があるとされています。中でも食事は非常に重要だと思っています。例えば、一夜漬けで勉強すると、とりあえずの試験対策ができるのと同じで、薬を使えば、とりあえずの症状を抑えることは望めます。しかし、日々コツコツとやる勉強でないと身につかないのと同じで、毎日の生活習慣、食生活、気持ちの持ち方が、本当の健康につなげてくれます。病気を治して健康になるのではなく、健康に・元気になれば病気は治ることが期待できることに気づいてもらいたいと思います。当院では、西洋医学での治療だけでなく、つらい症状の緩和をめざす、さまざまな取り組みも補完的に行っています。医療だけの枠にとらわれず、患者さんのつらい気持ちに寄り添える存在でありたいと思っています。