小野 渉 院長の独自取材記事
小野百合内科クリニック
(札幌市中央区/大通駅)
最終更新日:2024/02/27
札幌駅地下歩行空間7番出口前、札幌駅前大通りと北2条通りの交差点近くのビル7階にある「小野百合内科クリニック」は、糖尿病治療を中心に、甲状腺疾患などの内分泌疾患、生活習慣病、健康診断やワクチン接種を行うクリニックだ。開業は2004年。患者に寄り添う診療など、母である初代院長・小野百合先生の志を引き継ぎ、2022年に小野渉先生が院長に就任した。出勤前にも受診できるように早朝から診療開始したり、糖尿病の専門知識を持つ看護師や管理栄養士が患者のセルフケアを指導するなど、かねてからの取り組みを継承する一方、先進のデバイスを取り入れるなど、新たな試みにも積極的な小野院長。やわらかな口調ながら、その意気込みや医療にかける熱い想いが伝わってきた。
(取材日2023年4月3日)
患者に寄り添い、オーダーメイドの診療を
医師としての歩みをお聞かせください。
皮膚科医の父、内科医の母の背中を見て育ち、バリバリ働く姿がかっこ良くて、自分もあのようになりたいと思い、医師をめざしました。糖尿病治療を専門に選んだのは、母の影響もありますが、外科や救急などよりも治療が長期にわたり、患者さんの人生に長く寄り添える領域が自分に合っていると考えたからです。大学は弘前大学でしたが、卒業後は北海道に戻り、総合病院に勤務しました。釧路市や苫小牧市の病院では、病院や医師の数が多い札幌市とは違い、がんや消化器疾患など、専門分野以外も診療しました。幅広く診察に携われた経験は、現在、当院で対応できない疾患の患者さんが受診したとき、他の医療機関にご紹介する際の判断などに生かされると思います。その後、北海道大学病院で糖尿病や甲状腺疾患などの内分泌疾患を専門に診療し、当院を引き継ぐに至りました。
どのような患者さんが来院しますか。
糖尿病や甲状腺疾患といった内分泌疾患、脂質異常症や高血圧症などの生活習慣病の患者さんです。30代から50代の働き盛りの年代の方が多く、出勤前でも受診できるように、朝7時45分から受付を開始しています。バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患は女性に多いため、男女比では女性が多いかもしれません。また、当院では、基本的に風邪などの患者さんは診察していません。糖尿病の患者さんは免疫が低下しており、風邪などの感染症で重症化しやすいので、院内での接触を避けるためです。
診療の際に心がけていることを教えてください。
やはり、患者さんに寄り添うことですね。たとえ同じような病状でも、しっかりと通院して治療に集中できる状況の方、育児中や介護に追われている方など、生活背景によってアプローチも変わってきます。杓子定規というわけにはいかず、患者さんごとにオーダーメイドの治療が必要なのです。例えば、ある糖尿病患者さんが家族を亡くされた場合、無理に厳しい栄養指導をしたら治療をやめてしまうかもしれないため、治療継続を最優先に考え、一定期間、厳密に血糖コントロールを図ることを控えるようにします。また、当院では、患者さん1人あたりの診察時間を長めに設定し、患者さんのお話にきちんと耳を傾け、丁寧に説明することを心がけています。患者さんが求めていることと医師である僕がなすべきことをすり合わせ、最終的に同じ方向を見て治療に臨むためです。
糖尿病の専門知識を持つスタッフがセルフケアを指導
糖尿病の治療について教えてください。
糖尿病と一口に言っても、遺伝的要因が大きく、血糖を下げるためのインスリンを分泌する膵臓の細胞が自己免疫で破壊される1型、生活習慣の乱れなどでインスリンの分泌が低下したり効きが悪くなる2型、そして、妊婦さんが発症する妊娠糖尿病、さらに特殊な原因によるものもあります。糖尿病は、根本的には治癒に至らず、一生付き合っていかなくてはいけない病気です。問診や血液検査で詳しく原因や患者さんの状態を診察し、治療内容を検討します。可能な患者さんは“寛解”といって薬が必要ない状態を目標に、それが難しい患者さんは、血糖コントロールによって失明や人工透析、手足の壊死などの深刻な合併症にならないことを目標に治療を進めていきます。
血糖コントロールは、どのように行うのでしょう。
1型糖尿病にはインスリン治療が欠かせません。病状やライフスタイルによって、インスリン注射を用いて血糖のコントロールを図ります。また、血糖変動をモニタリングする機器を装着し、適切な血糖コントロールになるようサポートしたり、摂取する炭水化物の量に応じたインスリン量調整も行います。2型糖尿病は、食事指導と運動指導が中心で、飲み薬や、場合によってはインスリン注射が必要な場合もあります。また、当院では、糖尿病の専門知識を持つ看護師と管理栄養士がセルフケア指導を行います。指導は、完全防音の栄養相談室で実施しますので、他の患者さんに相談内容が聞かれる心配はありません。
健康診断や予防接種も実施しているのですね。
生活習慣病や感染症は、まずは予防が大切ですから、健康診断や予防接種に力を入れていきたいと考えています。当院では、企業健診にも対応した各種健康診断を行っており、札幌市国民健康保険に加入している40歳以上の方を対象にした札幌市国民健康保険特定健診、通称「とくとく健診」も実施しています。また、職場の健診や人間ドックなどを受けた方の診断後のご相談や2次検査にも対応していますので、ご相談ください。予防接種は、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、水痘・帯状疱疹ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、風疹ワクチン、日本脳炎ワクチン、麻疹風疹ワクチンを実施しています。
先進の医療を提供するために努力を惜しまない
どのようなときに医師としてやりがいを感じますか。
大学病院では難しい症例が多く、例えば、甲状腺疾患の珍しい症例の患者さんを担当したときなど、やりがいを感じました。でも、クリニックでは、疾患よりも患者さんを診る部分が大きく、患者さんに寄り添う医療ならではのやりがいがあるのです。例えば、ご自身の病気や治療に対してネガティブな感情を持っていた患者さんが、診療を通じて、病気と向き合い、前向きに治療に取り組むようになってくださったら、心からうれしく感じます。それから、当院を引き継ぐにあたり、正直、プレッシャーもありますので、以前から通院しておられる患者さんから、僕が新たに始めたことについて、お褒めの言葉をいただけると、うれしいですね。
今後の展望をお聞かせください。
できるだけ先進の医療を患者さんに提供したいと考えています。勉強会に参加して情報のアップデートを図ったり、どんどん技術も進歩して新しい薬やデバイスが登場するので、積極的に取り入れていきたいです。専用の臨床検査室では、高い精度管理を行い、院内で必要な検査を行っており、基本的には、糖尿病に関するヘモグロビンA1cは約2分、血糖は約10分で結果が判明し、末梢血、肝機能や腎機能などの生化学検査、炎症反応も即日で対応可能です。さらに精密で迅速な機器の導入も検討しています。
最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
当院は、札幌駅からのアクセスも良く、早い時間や土曜日にも診察しているので、出勤前だとか札幌に遊びに来るついでに、気軽に受診していただきたいです。また、SNSで情報発信も行っています。休診日などクリニックに関する情報だけでなく、脂質異常症や高血圧症、糖尿病、甲状腺疾患などの病気に関する情報、食事や運動のアドバイスなど、医師として正しい情報を提供していきたいと考えていますので、ご覧いただけたら幸いです。