全国のドクター8,992人の想いを取材
クリニック・病院 161,454件の情報を掲載(2020年2月23日現在)

  1. TOP
  2. 愛知県
  3. 稲沢市
  4. 国府宮駅
  5. 医療法人あおぞら 癒やしの森メンタルクリニック
  6. 武藤 太 院長

武藤 太 院長の独自取材記事

癒やしの森メンタルクリニック

(稲沢市/国府宮駅)

最終更新日:2019/08/28

20180507 %e3%83%90%e3%83%8a%e3%83%bc

名鉄本線・国府宮駅から徒歩1分の「癒やしの森メンタルクリニック」。軒のあるれんが張りの玄関を入ると、しっくい風の壁がやわらかくカーブした落ち着いた空間が広がる。来院者同士、なるべく視線が交わらないようにとの配慮で、待合室には1人がけの椅子が坪庭に向けて2列に並べられており、患者は番号で呼ばれてから、背後にある小診察室や奥の診察室に入っていく。武藤太院長は「一人で悩まないで気楽に来院していただきたいと思います。専門家と一緒に問題を整理していく共同作業が大事なんですよ」と穏やかにほほ笑む。患者の繊細な悩みや病気に時間をかけて向き合う毎日だ。その真摯な心構えや工夫について、さまざまな話を聞いた。
(取材日2018年2月22日)

幅広い年齢層が通う一軒家のような「癒やし」の空間

アプローチから、まさに「癒やし」の空間ですね。クリニック名や設計について教えてください。

1

開業したのは2005年で、当時「癒やし」という言葉を使うのには勇気がいりましたが、何かメッセージ性を持たせたいと考えました。ここへ来られる方々は、森の中で迷っているような状態です。そんな心を癒やし、明るいところまで道を案内して差し上げたいという気持ちでクリニック名を決めました。トレードマークは「森の知恵者」といわれるフクロウで、案内人の意味も込めています。診察室は対面ではなく90度で向き合うような配置で、入り口と出口は別々に、会計は待合室に入らずに済ませられるよう“一方通行”の造りになっています。小さな工夫ですが、人の目を気にせず少しでも居心地良く過ごしていただきたいと思いました。

患者さんはどんな方々が来られるのでしょうか?

不登校に悩む中高生から、大学生、会社員、主婦の方、高齢の方まで本当に幅広く、男女比は半々でしょうか。症状は、うつ病やパニック障害、何らかの依存症、またご家庭や職場環境、人間関係のお悩みなどさまざまです。私が医師になった30年前は「精神科」というと敷居が高くて行きにくいところでしたが、最近は軽い症状の方でも来ていただけるようになりました。当院は駅前の便利な場所にありますが、朝、開院前からお並びいただいていることもあるほどで、来やすいと思われているとしたらありがたいですね。

昔に比べ、精神科や心療内科が身近になったのでしょうか?

2

1995年の阪神・淡路大震災が一つの節目だったと思います。メディアの報道もあってPTSD(心的外傷後ストレス障害)がクローズアップされ、心に強い衝撃を受けたことでその後も苦しみが続くことへの対策が重視されるようになりました。精神科の医師の間でも大変なことが起こったという認識があり、当時私は静岡にいて研修医でしたが、若かったこともあって病院に働きかけ、第一陣の医療班のメンバーとして現地に赴きました。静岡県は土地柄、地震に対する意識が高く、全国に先駆けて動き出したと思います。避難所となっている体育館のそばの物置のようなところで1週間ほど寝泊まりして活動しました。任務終了後、県知事に直接お会いして活動の報告や避難所の工夫などの提言もさせていただきました。今思えば試行錯誤で最善のことができたかどうかわかりませんが、医師として貴重な経験でした。

患者の状況を分析して一緒に問題を把握

先生が医師をめざされた理由やご経歴について教えてください。

3

私の兄弟が小さい頃からよく病院に行っていたため、医療の仕事には特別な思いを持っていました。医師となり精神科を専門にしたのは純粋に学問的な興味からです。臨床を経験するうちにその奥深さを徐々に知るようになりました。浜松医科大学を卒業後、故郷である名古屋市内の総合病院で2年間の全科研修を終え、名古屋大学医学部附属病院精神科、その後、静岡県立こころの医療センター、そして一宮市立市民病院今伊勢分院に勤務し、精神科部長を務めるに至りました。年齢とともに管理職としての仕事が増えてきたのですが、やはり患者さんとふれあう臨床をしたいという気持ちが強くなり、開業しました。

こちらでの治療の流れについて教えてください。

ケースバイケースですが、多くの方は何らかの危機的状況になり、心や体にSOSのサインが出て当院に来られます。落ち着きがなくなったり不安になったり、息苦しくなったり泣けてきたり。ですからまずその危機的状況を分析し、そのもととなっているものを把握することが一番大切です。当院では臨床心理士あるいは看護師が、予診といって小診察室で1時間ほどかけてお話を伺います。部屋は窓がありやわらかい光が入り込むようになっています。動転していてうまく話がまとまらない方でも丁寧にお聞きしていると次第に冷静になり、私が診察室のドアを開けてお呼びする時には随分すっきりされて、診察がスムーズに進むことも多いです。ほとんどの方は自己回復力を持っていますので、問題を把握し、周りの環境も整えていくと、その力で良い方向に行くようになります。薬はそれを助けるために有効な場合のみ最小限のものを使います。

話を聞くことをとても大切にされているのですね。

4

はい。軽度から中度の方に対しては、重症の方のように薬か入院かではなく、一緒にお話をしながら解決法を見出していく治療の進め方になりますので、開業医としてやりがいがありますね。診療中、私はパソコンではなく患者さんのほうを見てメモをとりながらお話を聞き、それを改めて自分で見直しつつさらに打ち込んでいきます。夜遅くまでかかるのですが、実はこれが患者さんについての復習と予習になっているわけです。次に患者さんが来られたときに蓄積されたお話が頭に入っているので、濃密な診察時間にすることができます。この方法を医師仲間にも勧めているのですが、大変だといって誰も真似をしてくれません。確かに昼食の時間がなくなるときもありますが、体のために20分の昼寝は確保しています(笑)。

身近にいる専門家として社会貢献

これまで大変だったこと、喜びを感じたことについてお聞かせください。

5

若い頃は、難しい症状でなかなか良くならない場合、患者さんの側に問題があるのだろうと思っていました。でもそうではないんですね。振り返ると、ただ単に自分の患者さんへの理解が不十分であったり、自分の勉強不足をどこかで患者さんのせいにしていることに気づきました。つまり医師として未熟だったのです。今はどんな患者さんとも謙虚かつ真摯に向き合い、患者さんとともに病気や問題を考えていくことを目標としています。いい回答者である以上に信頼される伴走者でありたいと考えるようになりました。喜びはやはり、患者さんの表情が明るく変わり、当院を“卒業”されるときでしょうか。徐々に来院回数が減り、必要なワンポイントアドバイスをするだけのこともあります。中には治っても来られる方もあり、雑談だけで終わることも。「ここに来ると安心します」とのことで、お役に立てているのかなと思います。

読者へのメッセージをお願いします。

心が苦しい時、一人で抱え込まないで、諦めないで、専門の医師にまず相談していただきたいですね。医師と一緒に問題の本質を見つけていく共同作業が重要なのです。今はインターネットに情報があふれていますが、それをうのみにして自分で判断しないでほしいです。例えば、うつ病というのは誰もがなりうる病気で、心が元気なときはアクセルが踏まれている状態で適宜ブレーキがかかりますが、危機的状態になるとブレーキがかかりすぎ、戻らなくなる場合もあります。専門の医師は、その人の置かれた環境や考え方の偏りなども併せて冷静に判断していくことができるスペシャリストです。また心の病気だと思っても、実は体の病気が隠れていることもあります。代表的なのは甲状腺の病気ですが、その見極めのためにも受診をしていただきたいですね。

今後どんなクリニックにしていきたいですか?

6

最初に言いましたように、悩んでいる方のための道案内人でいたいと思っていますので、身近にあって、いつでも気楽に相談しやすい場所だと認識していただけるとうれしいですね。これまでの経験や知識を踏まえて、その方にとって一番適切で、正しい方向性を一緒に考えていけたらと思います。当院には臨床心理士2人と、看護師が3人いますが、皆ベテランで患者さんのことを第一に考え、一生懸命サポートしています。誰でも年を重ねると「社会貢献をしたい」という気持ちになりますが、この仕事自体が皆さんのお役に立ち、社会貢献につながれば本望ですね。

Access