山口 眞人 院長の独自取材記事
やまぐちクリニック
(茅ヶ崎市/辻堂駅)
最終更新日:2024/10/15
辻堂駅西口改札から海側へ徒歩約3分。幼稚園に隣接し「やまぐちクリニック」はある。山口眞人先生が院長を務める同院は、ペインクリニックとプライマリケアを中心に多様な診療を提供する。山口院長は、母校の大学病院や関連病院の麻酔科勤務を経て、2003年に海老名でクリニックを開業し、2010年に辻堂に移転した。さまざまな急性痛、複雑化した慢性痛、付随する心身機能の衰えや自律神経の機能異常等には痛みの専門家として、日常的な内科疾患や不調、小さなケガ等にはプライマリケアの観点で、それぞれ対応する。山口院長にクリニックの特徴、痛みの診療などについて話を聞いた。
(取材日2024年8月15日)
ペインクリニックとプライマリケア
どのような診療を行われているのですか?
当院の最大の特色は「ペインクリニック」です。私は「痛みの総合診療」と表現していますが、頭から足先までのさまざまな痛みから、痛みに伴う自律神経の機能異常や身体機能低下による全人的な衰えまで広く対応することをめざしています。全国的にもペインクリニックの数が少ないためか、湘南地域だけでなく県内の広域から患者さんが来られます。各地の医療機関との連携にも力を入れており、診療科を問わず多くのご紹介をいただいています。もう一つは「プライマリケア」です。地域のかかりつけ医の役割ですが、風邪や何らかの不調、小さなケガなどの日常的なトラブルから高血圧、脂質異常、糖尿病等の生活習慣病、気管支喘息などの慢性疾患、健康診断、予防接種まで「近所の身近なお医者さん」としてお役に立ちたいと思います。ペインクリニックを専門としつつ、プライマリケアで地域の多様な健康問題に対応できるクリニックでありたいと考えています。
診療の流れは?
基本的な診療の流れは他の診療科と同じです。初めに症状と診療歴、既往歴などを伺いますが、ペインクリニックでは複数の医療機関や診療科を経由して受診する方が多くおられますので、その情報を患者さん自身とも共有することが大切になります。前医からの診療情報提供書が望ましいのですが、ご自身で整理されたものでも構いませんので、できるだけご用意いただければと思います。診療歴の情報とともに、見て聴いて触れることも大切にしています。会話をしながら体に触れることで多くの情報が得られます。これらをもとに病態の仮説を立て、効果が期待できる可能性がある薬や神経ブロックなどの処置の効果を確認しながら、更に状況の解明と治療とを進めていきます。他科でも同様と思います。
痛みの放置は、慢性通の原因に。早めの受診を
痛みにはどのようなものがありますか?
まず、痛みには急性痛と慢性痛とがありますが、それぞれで対応が違います。急性痛の多くは、痛みの原因である疾患やケガが回復するまでの一過性の痛みです。原因を特定し適切に対応すれば、患者さん自身の自然治癒力と適切な医療的介入により、多くは自然に回復していくものと思われます。「体が勝手に回復に向かうので過度に心配しないで」と説明しています。過剰な心配や安静は、経過を長引かせ症状をこじらせるリスクになります。一方で慢性痛はもう少し複雑です。単に急性痛の回復に時間がかかっているだけの場合もありますが、少々こじらせてしまい、自律神経の異常や心身機能の衰え、心や環境の問題などを併発し、痛みの感受性の変調を生じてしまうケースなどもあります。国際的にも、慢性疼痛という独立した疾患概念として取り扱われています。
こじらせた慢性痛には、どのようにアプローチするのですか?
「こじらせた慢性痛」の場合には、長引くつらい痛みにより、仕事、娯楽、食事、睡眠等の基本的な生活が妨げられ、栄養状態が低下し、身体機能が衰え、心理的にも社会的にも消耗し、本来の生活を送れなくなってしまう方もおられます。原因となる痛みをゼロにできれば良いのですが、難しい場合には、まずは基本的な生活を取り戻すことを当座の目標とします。治療法の正解は未だありませんが、当院では、通常の痛み対策と並行して、慢性痛の多くの方が陥る心身の過剰な緊張状態を緩和し、食事・睡眠の改善、運動の導入、心身機能と日常生活の回復をめざします。「元の生活を取り戻す過程で、こじれた痛みも徐々に軽くなる」ことをわれわれは知っていますので、患者さんには、小さな成功体験を積み重ねながら、回復への希望と勇気をもって挑戦していただきたいと期待しています。痛みや病気などの不自由を抱えつつも、自分らしい生活を送ることが大切だと思います。
こじれた痛みの患者さんを診療されるのには、広範な知識が必要でしょうね。
僕はもともと麻酔科が専門なのですが、麻酔科学は関連領域が広いので、診療科横断的に幅広く学びトレーニングする機会に恵まれました。麻酔科の医師は、大病院での手術麻酔を中心に、手術前後の管理、集中治療、痛みの外来、緩和医療などを担当しています。いずれの場合にも、担当患者さんのカルテを読み込み医療情報を把握しますが、そういった日々の研鑽を経て、すべてを専門家並みにとはいきませんが、診療科の垣根を超えて幅広い知識と技術を自然に身につけるのだと思います。「痛みの総合診療」に携わる基本的な力が養われたと思います。
もう一つの柱としてプライマリケアを掲げていらっしゃいますね。
前述したような麻酔科医としての修行を通じ、プライマリケアの基礎力も鍛えられたと思います。以前、ある先輩内科開業医に、麻酔科医が内科をできるのか?と疑義を唱えられたことがありますが、その答えは、「麻酔科医はプライマリケアの現場でも輝く」です。麻酔科の若い医師たちに伝えたいことの一つです。
痛みの総合診療と地域の健康基地をめざす
受診のきっかけは?
近隣の皆さんは、患者さん同士や近医のご紹介が多いようです。内科も見られる便利な整形外科クリニックと思われている方も多いかもしれません。ご高齢者には、内科的持病と整形外科的な痛みや機能低下を併せ持つ方が多いので、そういった多くの皆さんが通院されています。日常的なさまざまな不調に対し、プライマリケアの広い視点を心がけ患者さんを拝見させていただきます。各診療科での専門的診療が必要と判断した場合には、速やかに専門の医師につなげます。受診する診療科を迷う場合などにも、ご相談いただければと思います。ペインクリニックをめざして受診される方も、やはり医療機関や患者さんからのご紹介が多いと思います。最近、ようやくインターネット予約を導入いたしましたので、そこからの予約受診も増えてきました。動画配信も始めましたので、ぜひ検索してみてください。当院のホームページからもアクセスいただけます。
診療外のプログラムにも力を入れていらっしゃるそうですね。
加齢や病気を契機に心身の働きが低下し日常生活が失われてしまった多くの患者さんを診てきましたので、心身の機能維持や向上を目的とした診療外のプログラムを用意し、それぞれ腕利きの専門家が担当しております。ご興味のある方はお声がけください。医療機関で提供しているため、体調不良にも速やかに対応できますし、持病がある方でも安心して取り組んでいただけるはずです。自宅に籠らず、運動やコミュニケーション、心身のメンテナンスの機会としてご活用ください。
多職種のスタッフとさまざまな機器を備えているのですね。
私自身の非力さを補うために一つ一つ足していき、今のような陣容となりました。私が「痛みと共存しながら生活の質を上げましょう」と言っても、患者さんはごまかされたような気分になってしまうかもしれませんが、看護師、理学療法士、各種セラピスト、心理士、栄養士、リハビリテーション助手、受付などの多職種のスタッフが、患者さん目線で自然体で支援する中で、診察室では話せないような会話をしてみたり、他愛もないことで笑いあったり、無理だと思い込んでいた運動もサポートがあれば意外にできたり、そのような経験を積み重ね、患者さん自身が受け身ではなく主体的に回復に挑戦してゆく気力を取り戻していただきたいのです。「心が体を動かし、体も心を動かす」。主役は患者さん自身であり、われわれはサポーターに過ぎませんので。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
近隣地域の皆さんにとっては、痛みも、一般的なケガや体調不良も、よくわからない不調も、相談できる健康基地をめざし、頑固な痛みに苦しむ皆さんにとっては、日常生活を取り戻す希望でありたいと願っています。優しく頼りになるスタッフとともにお待ちしております。