道野 博史 理事長の独自取材記事
みちのクリニック
(香芝市/近鉄下田駅)
最終更新日:2024/09/26
近鉄下田駅よりほど近い「みちのクリニック」。合計22台の専用駐車場も備え、車でも電車でも訪れやすい医院だ。総合診療を掲げ整形外科を中心に幅広い診療に対応。道野博史理事長は大柄な体格に穏やかな物腰で、いつでも患者のことを第一に考える優しい先生だ。「患者さんの困り事に対してやれることの引き出しが多いほうが良い」という思いから、救急での経験を生かした総合的な診療を実施。発熱症状専門の外来を開設するなど幅広い診察を行う。病診連携・診診連携による地域医療の向上にも尽力。「まずはこの医院に来れば何とかなる」という体制をめざす道野理事長に、地域でのチーム医療の大切さや患者への思いをじっくりと聞いた。
(取材日2024年6月3日)
いろいろな角度から患者を診る総合診療を実践
こちらの医院のコンセプトはありますか?
当院がめざすのは、患者さんが医療を受ける際の最初の窓口として「みちのクリニックに来れば何とかなる」と思っていただけること。そのために総合診療を実践しています。総合診療では、整形外科を中心に内科、小児科と幅広く診療しています。患者さんの症状をいろいろな角度から診ることも総合診療の特徴です。日々診療していて、ちょっとした症状の裏に危険な病気が隠れているケースがあります。例えば、睡眠時無呼吸症候群では、心臓と脳に負担がかかった結果、脳疾患や心臓疾患を発症することも。総合的な診断ではそういった危険な病気をいち早く発見して適切な医療機関につなげることをめざします。総合診療で役立っているのが、救急部で勤務して身についた「嗅覚」ですね。いろいろな症例を診ていた経験もあって「このままでは危ない」というような「におい」を察知する力がついたと思います。
先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
家族は皆商売などをしていて、医療関係の仕事をしている身内がいたわけではありません。代々、自分でやりたい道を探していく、自分で切り開いていくという家風だったんですね。将来何をするかを考えた時に、どうせなら人を助けることがしたいと医師をめざしました。祖父は父に医師になってほしかったようです。私からの国家試験合格の電話を受けた1時間後に亡くなりました。結果的に祖父の夢を私がかなえたかたちです。病に伏せながらも合格の電話にたまたま出てくれて、何か運命めいたものがありますよね。医師になるタイミングで開業は考えていました。開業することで、自分ならではの診療をしたいと思っていたんです。いろいろな症例を診ていたほうがいいと思い、救急部に勤めました。
どんな年代の患者さんが多いですか?
年齢層の幅が広く、新生児から100歳を超えるご年齢の患者さんまでいらっしゃいます。お孫さん、娘さん、お母さんの3世代で来てくれていた方に、ひ孫が生まれて4世代で来てくれるなんてこともあって、とてもうれしいですね。ご家族みんなのかかりつけ医院になれば、家族構成がわかるので、スムーズに患者さんの状況を理解できるのもメリットです。患者さんが年齢を重ねて介護が必要になるケースでも、訪問介護施設やご家族と連携を取り、ケアマネージャーとの相談にも対応しています。そうやって地域のつながりからまた新たな患者さんが来てくださって、ここまで医院を続けられたことに感謝しています。この感謝を、今度は地域や患者さんに恩返ししていかないといけないな、と身が引き締まる思いです。
病診連携・職種連携で、地域全体がチームになる医療を
先生はチーム医療を大切にされているそうですね。
はい。チーム医療には2つの意味があると考えていて、それが院内のチーム医療と、地域のチーム医療です。私は救急の医師として医療に携わっていたため、人一倍チーム医療の大切さを理解しているつもりです。院内では医師は私一人なのですが、事務も看護師もチームとして動いていて、実は1人で診療を行っているわけではないんですね。発熱症状を診る外来にしても、診療時間内で滞りなくできるのは、皆が連携して準備などをしてくれるからで、これも当院の魅力だと思っています。スタッフ全員で「みちのクリニック」なのです。スタッフは、時には患者さんの精神面や生活環境にも寄り添い、包括的なケアを心がけてくれていると思います。患者さんに貢献するには、スタッフ自身がしっかりと休むことも大切。医院としては柔軟なフレックスタイム制や有休がきちんと消化できる環境を整えて、スタッフの多様な働き方を応援しています。
他院との連携についてはいかがでしょう?
自分の専門外は他院の先生にお願いする病診連携や診診連携を積極的に推進しています。訪れた患者さんの症状を診て、一番ふさわしいと思えるところを紹介するわけですね。自院で抱えすぎず、病院や医院が垣根を越えて役割を分担し合う仕組みができれば、患者さんのためになります。地域全体で患者さんを支えることが望ましいと思いますし、当院には私の診療が必要な時に来てくれたらと思っています。時には専門外の症状で相談を受けることもありますから、地域の相談窓口として患者さんの診察をし、必要な場合は適切な地域の医療機関につなげています。この地域で開業して、やりがいがある仕事をさせてもらっている代わりに、自分は地域に対して何が貢献できるかも常に考えています。私にとってその答えの一つが、地域の医療機関と連携したチーム医療の実践でした。
診療で心がけていることはありますか?
お話を丁寧に聞きながら、患者さんに寄り添った柔軟な治療や薬の処方をしています。体の調子が悪かったりすると、心も落ち込んでくるもの。そんな患者さんの気持ちをくんでお話を聞くようにしています。更にお薬に関しては、当クリニックは院内処方のため患者さんの生活リズム、働き方、家族構成、服用しやすい工夫などを加味して対応しております。私は自分自身では聞き上手なタイプではないと思っていますが、そうやって診療を続けてきたからでしょうか。かかりつけとして長く通ってくださる方が多く、ありがたいですね。
アップデートを続け、患者と地域医療に貢献したい
救急での勤務が長いですが、現在もその経験が役立っていますか?
医師の世界は経験しないとわからないことが多いので、救急部でさまざまな経験を積めたことは、開業した今も自分の財産になっていると思います。医院というのは地域医療の窓口でもあるので、いろいろな方が来られるのですが、中には本当に急を要するケースもあるんです。腹痛でいらした患者さんをすぐに病院へ送って緊急手術というようなケースもありますから、スピード感が必要な診断というのは存在します。そういう場面で救急の経験が役立つのではないかと思いますね。
地域に定着した今も、常にアップデートを欠かさないのですね。
2003年の開業から20年以上になりますが、「継続する=同じことをし続ける」ではありません。良い方向にアップデートしていかないと、継続することもできませんからね。スタッフの知識や技術の向上はもちろん、IT化も含めて、患者さんにとって良い医院にしていくことが大切です。現在会長を務めている香芝市医師会でも専門の先生を呼んで勉強会を開催していますし、私個人も勉強会などに出向いて知識を取り入れています。治療の技術向上も大切です。例えばお子さんの外傷の治療一つにしても、親御さんの気持ちになると、傷痕ができるだけ目立たないように治してあげたいはずですから、外科的処置のクオリティーを上げ、いかにきれいに治せるかという点にこだわって治療しています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。
今後も、総合診療やチーム医療を実践して地域の患者さんに貢献できる医院でありたいです。発熱症状のための外来を早くから開設し、総合診療でいろいろな角度から患者さんを診てきたのも、私なりに「地域に貢献できることは何か?」と実直に考えた結果です。おかげさまでこうして地域のかかりつけ医院として信頼していただいていると思います。病診連携や診診連携もさらに強化していくので、どんな症状でも、困ったら気軽に相談してください。