鈴木 成典 院長の独自取材記事
鈴木整形外科
(松本市/大庭駅)
最終更新日:2024/04/19
周囲に水田が広がる島立地区に建つ「鈴木整形外科」。手や足、腰などの病気やけが、スポーツ外傷、リウマチなどを対象に幅広く診療を行う。にこやかに出迎えてくれた鈴木成典院長は東筑摩郡山形村出身。複数の病院勤務を経て、身近な「かかりつけ医」として地域医療に貢献したいと思い開業したという。以来25年間、地域密着型のクリニックとして患者に寄り添い信頼関係を築き上げてきた。2024年4月からは新たに理学療法士を迎え、運動器リハビリテーションにも力を入れる。高齢化が進む地域にあって「骨粗しょう症の予防や日常生活動作の訓練を重点的に行いたい」と今後の展望を胸に抱く。地域に根を張り、末永く患者を支えたいと願う鈴木院長の思いについてさまざま聞いた。
(取材日2024年1月25日)
くつろげる環境で長年の経験を生かし幅広く診療
院内は温かみがあるデザインですね。開業した経緯やこだわりを教えてください。
私は大学卒業後、信州大学医学部附属病院はじめ複数の病院の整形外科に勤務しました。開業前には松本市本庄にある相澤病院にいましたが、お世話になった恩師が退官されることになり、それを機に自分も地元に戻って地域医療に貢献しようと1999年に開業しました。院内は2023年にリニューアルしてきれいになりましたね。大きな一枚板を受付カウンターに使い、待合室の長椅子の座面もオーダーメイドの一枚板を選びました。長椅子の背もたれは窓から見える山並みを表した曲線なんです。壁には和紙を貼りましたので、旅館のようだとおっしゃる方もいますね。患者さんには診察までの間、くつろいで過ごしていただきたいです。
先生のご専門や、来院される患者層について教えてください。
病院勤務時は、クリニックから紹介されてきた難症例の患者さんを多く診ていました。整形外科の中でも私は脊椎が専門で、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、頸椎症などの手術にも多く携わりました。開業後は経験を生かして幅広く診療しています。患者さんは松本市内はもちろん安曇野市、塩尻市などから来られることも。小さかった患者さんが成長して来てくれたり、お子さんを連れて来てくれたりすることもあり、そうした再会は懐かしくうれしいですね。主訴は腰痛や膝痛をはじめ、スポーツ外傷、リウマチ性疾患、骨粗しょう症などです。赤ちゃんやお子さん、若い患者さんも来院されますが、最近では高齢の方が増えてきました。
腰痛や膝痛にはどのように対応されていますか?
まず痛みの症状や普段の生活についてお聞きし、痛みの原因を探るためにエックス線撮影を行います。原因が明確になれば内服薬など薬物療法に進みます。痛みがひどい場合やさらに詳しく調べる必要があると考えられる場合は近隣の病院でMRI検査を受けていただき結果を評価して、ブロック注射や手術を行うこともあります。ブロック注射は勤務医時代に多くの症例を経験しました。当院でも行っている治療ですが、その際感染症の予防に配慮しながら取り組んでいます。滅菌消毒した手袋を使用したり、注射をする部位は消毒液を複数回塗ったりする対応を取ります。注射する部位を誤ると神経まひを起こすリスクがあり、注射する位置を適切に把握するよう留意しています。
笑顔で患者を迎え、ポジティブな言葉をかける
スポーツ外傷についても教えてください。
スポーツ外傷とはスポーツ時にある部位に強い力が加わったことで生じるけがのことです。サッカー、バスケットボール、バレーボールをしている方が多く、他にも野球や陸上競技などに取り組む患者さんが見られますね。目立つ症状は指の骨折です。主な治療はシーネ固定といって骨折部位を固定した状態を3週間ほど続け、その間スポーツは全面的に休みます。「少しぐらいは」と許可すると、お子さんの場合はまた違う指を骨折してしまうこともあります。そのため「スポーツはできないけれど、腹筋や背筋など違う部位をトレーニングしよう」とアドバイスしています。
診察で心がけていらっしゃるのはどんなことですか?
まずは言葉を選ぶことです。患者さんは痛みや不安を抱えていらっしゃるので、傷つけないようにネガティブな言葉ではなく、ポジティブな言葉をかけるようにしています。きつい言葉を口にしてしまうと、患者さんの心がもっとつらくなってしまうと思うのです。もう一つは、笑顔を絶やさないことですね。これは病院勤務時代の恩師からの受け売りです。恩師は私たちには厳しくも、患者さんには優しい人でした。私も笑顔で温かく迎えるように心がけています。他には、症状の原因を明確にするよう努めることです。例えば「腰が痛い」と訴える患者さんの症状を年のせいにするのではなく、何か病気が隠れていないか必要な検査を行うようにしています。実際、勤務医時代に、ただの腰痛だと思っていたらMRI検査でがんが見つかった患者さんもいました。見落としがないようにお話をしっかり聞き、表情や動きにも注意して原因を突き止めた上で、適した治療をしたいですね。
力を入れられていることはありますか?
先ほどお話ししたように高齢の方が多くなっていることもあり、骨粗しょう症の治療と予防に力を入れています。高齢になると骨が弱り、いつの間にか骨折している圧迫骨折の懸念が出てきます。そのため、骨を強化するための薬を処方し、骨折を予防したいと考えているのです。圧迫骨折の治療にはコルセットの装着や注射療法を行います。できれば予防のためにも、日頃から骨が弱くならないように意識して過ごしていただきたいですね。具体的には、牛乳や小魚などカルシウムを多く含む食品を摂取することや、日光を浴びて歩くことなどです。患者さんには健康寿命を延ばし、いつまでも元気でいていただきたいと思います。
治療だけでなくリハビリテーションにも注力
先生が医師をめざし、整形外科をご専門にされたのはなぜですか?
高校生の頃、社会貢献できる仕事がしたいと考えたことが医師をめざしたきっかけでしょうか。大学では硬式テニスをしていたので、自然と整形外科が身近な診療科となり、選びました。整形外科は痛みを取ることをめざす診療科です。痛みは患者さんの心や生活に直結しますから、痛みが軽減されたりなくなったりすれば、患者さんにとって大きな喜びとなると思います。患者さんの笑顔がやりがいとなりますので、そんな医療の提供をめざして診療にあたっています。今の私はテニスではなくてマラソンに励んでいます。以前は毎日10キロ走っていたのですが、60歳を超えた今は週末に10キロ走ります。大事なのは走る前の準備運動、そして走った後のクールダウンです。時間をかけて行うことで、けがのリスクや体への負担の減少につながります。
2024年4月から運動器リハビリテーションを始めると伺いました。
はい。現在は低周波治療器などの医療機器を利用したリハビリテーションを行っています。4月から理学療法士3人を迎え、運動器のリハビリテーションにも対応する予定です。けがなどの治療をすれば痛みの軽減が期待できますが、治療後も高齢の方は日常生活動作がうまくできず、また転んだり打ったりして違う箇所を痛めてしまうこともあります。その予防のための筋力強化やストレッチ、関節の可動域を広げるための運動によって、日常生活での体の動きがスムーズになればと思います。今後は病気の治療だけではなく、予防も重点的に行いたいですね。理学療法士は男性2人に女性1人で年齢は20~30代。明るい人がそろったので、患者さんにも前向きにリハビリテーションに取り組んでいただきたいです。
今後の展望や読者へのメッセージなどをお願いします。
開業して25年になりますが、当院は長く勤めてくれているスタッフが多く、いつも感謝しています。私が笑顔を心がけているように、スタッフも笑顔でよく患者さんに声をかけてくれていますね。これまでどおりみんなで協力し合って、安心感のある医療を提供するクリニックでありたいです。当院のホームページには、病気の症状についての情報を載せています。つい我慢してしまう些細な症状や痛みも重い病気の可能性があります。ホームページを見て「もしかして」と、受診のきっかけにしていただければと思います。病気やけがは初期の段階であれば選択肢が多かったり、早期の改善が望めたりすることもありますが、進行してからでは治療法が手術しか残されていないこともあります。何か少しでもおかしいな、不安だなと思われたら早めに受診されることをお勧めしたいですね。