全国のドクター9,201人の想いを取材
クリニック・病院 158,634件の情報を掲載(2024年4月24日現在)

  1. TOP
  2. 大阪府
  3. 枚方市
  4. 枚方市駅
  5. 医療法人亀寿会 亀岡内科
  6. 亀岡 慶一 院長

亀岡 慶一 院長の独自取材記事

亀岡内科

(枚方市/枚方市駅)

最終更新日:2023/01/16

亀岡慶一院長 亀岡内科 main

京阪本線枚方市駅から徒歩6分、携帯電話ショップ・眼鏡ショップの隣にある「亀岡内科」。日本糖尿病学会糖尿病専門医の亀岡慶一院長が、糖尿病をはじめとした生活習慣病の治療をメインに据え、日々多くの患者の診療を行っている。また、訪問診療にも力を入れており、その豊富な経験から「糖尿病には減量が必要」という定説が必ずしも当てはまらないことを実感。年齢別の理想的なBMI値を基準とした指導を実施している。さらに基準に満たない患者には「太ること」を推奨するなど、糖尿病治療のエキスパートならではの新しい知見を盛り込んだ治療を提供してきた。そんな亀岡院長に、開業に至った経緯や糖尿病治療について、患者に接する際に大切にしていること、24時間365日体制の訪問診療、今後力を入れていきたいことなど、幅広く話を聞いた。

(取材日2022年12月4日)

より多くの患者を救うため、糖尿病を専門に

これまでのご経歴と、開業に至った経緯を教えてください。

亀岡慶一院長 亀岡内科1

大学を卒業後、母校である大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)の附属病院で臨床について学び、住友病院や市立枚方市民病院(現・市立ひらかた病院)での勤務や東京大学第三内科での研究生活などを経て、2002年に開業しました。開業に至った理由の一つには、私の専門とする糖尿病の治療が、開業医院でも病院でも「できることの差が少ない」ということが挙げられます。他の分野での開業とは異なり、対応可能な範囲が狭まることがほとんどなく、自分の思う治療に取り組むことができる点に魅力を感じて開業を選択しました。

糖尿病を専門とした理由は何だったのですか。

住友病院勤務時代に、ある先生に「専門の医師とそうでない医師が診た場合、予後(治療後の経過)に最も差がある疾患は何ですか?」と質問したところ、「糖尿病あるいはパーキンソン病」だと答えられました。そこで、より医師として貢献できるよう、患者数の多い糖尿病を専門にすることに決めたのです。今現在、診察時間が足りないほど非常に多くの患者さんにお越しいただいていますし、日々診療に没頭できることにやりがいを感じています。当院の患者さんの8~9割が糖尿病を理由に受診されており、またその多くがご高齢の方です。

現在の糖尿病治療について教えてください。

亀岡慶一院長 亀岡内科2

糖尿病患者の通院率が低いといわれた平成の初めと比べると、現在は通院率も上がり、比較的初期の段階から通院を継続される方が増えてきたようです。服薬すべき薬の量には差があるものの、1~2年程度継続して通院すれば、血糖値のコントロールも難しくなく、腎症・網膜症・神経障害など糖尿病の三大合併症の抑制にもつながります。また、早期から通院すれば、糖尿病があっても長生きできる時代になってきたように感じます。しかし、何事もなく長生きすることは難しく、「がん・寝たきり・認知症」には特に注意が必要です。もし長生きできても、高齢期に痩せていると、寝たきりや認知症リスクが高まると考えられます。今では90歳を超える方も多いのですが、血糖コントロールのために痩せることが時にデメリットとなることもあるのです。そこで、当院では年齢ごとに理想的なBMI値を設定し、それより高い方は減らすよう、低い方は増やすよう指導しています。

健康寿命の観点から行う「痩せない」糖尿病治療

こちらではどのような糖尿病治療に取り組まれているのですか。

亀岡慶一院長 亀岡内科3

先に申し上げたとおり、今や長寿が期待できる時代ですし、糖尿病をはじめとする生活習慣病の診療は分岐点を迎えていると思います。継続通院していただければ、血糖コントロールは難しくありませんので、そういった方は「がん・寝たきり・認知症」を抑えるための治療がメインとなります。当院はご高齢の患者さんが多いのですが、減量・食事制限にメリットがあると考えられる患者さんは1~2割程度です。また、前期高齢者において肥満に分類されるBMI26前後の人であっても、死亡リスクや要介護リスクは低いとされており、しかもその値に満たない患者さんのほうが多数です。食べられる量が減っていく高齢者ならば、なおさら食事量の制限を必要としない人がほとんどではないでしょうか。「なるべく長生きして、なおかつ人の世話になりたくない」と考える人は、きっと少なくないでしょう。それならば、しっかり食べて運動も頑張るべきなのです。

患者さんと接する際に心がけていることはありますか。

毎日多くの方にお越しいただいているため、十分な診療時間が取れず患者さんの思いに寄り添えているかはわかりませんが、一緒に治療に取り組んでいくにあたり「ごまかしだけは良くない」と思っております。専門職である医師は、正しいことを伝えて、患者さんにご判断いただくのが仕事だと考えているのです。患者さんはわからなくても、私たち糖尿病専門医は「この飲み薬を続けても、いずれ効かなくなりインスリン注射が必要になる」などかなり先の将来を見通すことができます。最後までごまかし続けて、いよいよの段階で告げるのではなく、その前段階で「いずれはこういう対処が必要になる」と、正直に見通しをお伝えして、患者さんと相談して治療方法を決めていくよう心がけています。

独自の「私のカルテ」、手作りの冊子なども興味深い取り組みですね。

亀岡慶一院長 亀岡内科4

患者さんにお渡しする「私のカルテ」には、その方の検査データを貼りつけたり、診察室で説明した内容を書き込んだりして、いつでもご自宅でご自身の病状を確認できるようにしています。受診時に毎回ご持参いただけば、私がどこまで説明したかに加え、今回はこの症状についての解説が必要だというのがひと目でわかるため、お話が重複することもありません。冊子については、私の勉強と趣味を兼ねたもので、新たに学んだ知見を記憶に定着させるために資料作成という形をとっています。私は看護師・保健師・ケアマネジャー・製薬会社などを対象とした講義を行う機会が年6回ほどあり、その際に講義資料として使用し、その後、患者さんにわかりやすいように冊子に変換してお渡ししています。

訪問診療にも注力。老化・フレイルへのアプローチも

訪問診療にも力を入れていると伺いました。

亀岡慶一院長 亀岡内科5

人間には永遠の命はなく、病気にならなくとも必ず老化しいずれ最期を迎えます。自宅での最期こそクオリティー・オブ・デス(終末期の質)が高いというのが私の考え。近年は数多くの老人ホームができ、その波に押されているとは思いますが、多くの方がご自宅で最期を迎えられるように、これからも努めていきたいですね。また私が在宅での看取りまでしていたことが「痩せていること」の危険性に比較的早く気づくきっかけとなりました。訪問診療の経験は現在の糖尿病治療にも影響を与えており、最近ではカロリー制限を指導する患者さんの減少にも役立っていると思います。

今後、力を入れていきたい取り組みなどはありますか。

「老化を遅らせる」ためのアプローチです。老化は健康寿命に影響を与えるといわれます。例えるならスキーのジャンプ競技で、どんなにうまく飛んでも選手間に飛距離の差が出るのと同じです。そこで今、老化制御に強力に関わる体内物質・NADに注目しています。NADは加齢により減少しますが、脂肪組織がつくる酵素から合成されるので加齢に合わせて太れば減りにくいとされているのです。また運動すると筋肉がNADをつくることもわかってきました。もし総コレステロールが300mg/dlあり、それを放置するとすれば、死亡リスクが3割ほど上がるといわれますが、20歳と50歳では上昇率も違います。老化を遅らせることができれば、健康寿命を延ばすことにつながるはずです。また加齢に伴い心身が衰える「フレイル」の予防のため、食事や筋力トレーニングなどを指導する専門の外来を立ち上げ、ご自宅で過ごせる時間を長くできるよう取り組んでいます。

読者へのメッセージをお願いします。

亀岡慶一院長 亀岡内科6

糖尿病とわかっていながら通院しない、ということだけは避けてください。早期の段階で受診されれば、糖尿病で寿命を縮めたり合併症が出たりするリスクはかなり低くなるはずです。もし血糖コントロールが良好になれば、通院や検査の間隔を延ばすこともできると思います。早めに治療したほうが医療費の負担も少なく、患者さんの努力も少なくて済むケースがほとんどです。当院では患者さんのQOL(生活の質)を第一に考えた診療を重視しております。今後も目の前の血糖値やHbA1c値を下げていくことだけでなく、どのようにしたら健康寿命が延びるのかを考えた治療を心がけていきます。

Access