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大瀧 和男 院長の独自取材記事

かずおメンタルクリニック

(豊橋市/南栄駅)

最終更新日:2021/10/12

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック main

豊橋鉄道渥美線南栄駅から車で10分、住宅地の中に立つ「かずおメンタルクリニック」は外来診療とデイケアを併せ持つクリニックだ。大瀧和男院長は、「子どもや保護者が通いやすいクリニック」をめざし、2003年に同院を開業。子どもたちの年齢に合わせて診療内容を工夫し、デイケアやナイトケアを取り入れながら、それぞれの子どもたちが「自分らしさ」を見つけられるように支援している。母親相談会など家族への支援もきめ細かい。学童期の子どもたちが多く通うため、教育機関との連携も積極的に行っている。優しい眼差しと穏やかな話し方の大瀧院長に、開業までの経緯やクリニックでの取り組みについてじっくり話を聞いた。

(取材日2020年1月28日)

子どもや保護者が通いやすいクリニックづくりを

先生が精神科の医師になられようと思ったのは、どのような経緯からでしょうか?

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック1

僕は小説家の北杜夫先生が好きで、彼が東北大学の医学部出身だったのでどうしてもそこへ行きたかったんです。紆余曲折を経て、北海道大学の医学部に入り、卒業後は脳神経に興味があり、神経内科を志望しました。研修病院では脳外科の先生に誘われて医局に遊びに行くうちに脳外科が面白くなってそちらを専門にしていくことになりました。新米の頃はまだ手術はできないので、患者さんのご家族の悩みや相談を聞くような仕事が多かったんですが、そういう経験をしているうちに、自分は脳外科より精神科のほうが向いているのではないかと思いました。考えてみれば、北杜夫も精神科の医者なんですよね。回り道をしながらさまざまな経験を積んだからこそわかることも多く、今この道を選んで良かったと思います。

開業までの経緯とクリニックのコンセプトをお聞かせください。

開業前は大学病院や関連病院で勤務をしていました。病院の精神科は大人の患者さんが多いですし重い症状の方もいるので、お子さんの患者さんはハードルが高くて通いにくさを感じているなと思ったんです。親御さんも連れて来づらいというか。そんな様子を見て、子どもやその親御さんが通いやすいクリニックをつくりたいと思い、こちらを開業しました。受付を中心に外来とデイケアに分かれていますが、木を使った広がりのある空間にしたいと思い、どちらも木の梁が見える吹き抜けになっています。デイケアは2階も使っていますが、下からも上からも見通しが良く、開放感がありますね。クリニックには診察室の他に、プレイルームやカウンセリングの部屋、デイケアには畳敷きの静養室や楽器室などさまざまな部屋を用意しています。

患者層と主訴を教えてください。

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック2

現在は1歳から原則19歳までの患者さんを診療しています。といっても、ずっと当院へ通われているお子さんが成長されて、現在も続けて通われている方もいますし、患者さんが親になられて、お子さんと一緒に通われているという例もあります。相談内容は、発達障害でないかと悩まれて、来院される方が多いですね。年齢が低いお子さんたちは、発達障害の特徴を持っていてそれが気になるということが多いですが、小学校の中学年以降になると、二次障害というか発達障害の問題に絡んで、例えば不登校になっているとか。単純に発達障害だけでなくそれに絡んだ問題が出ていることも多いです。田原、蒲郡、新城、湖西など豊橋以外の市から通われている方も多いですね。

デイケアやナイトケアなど、年齢に合わせたサポートを

患者の年齢によって診療方法は変わるのでしょうか?

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック3

当院では、年齢によって診療の仕方を工夫しています。幼児期というのは、本人もですが、親御さんに対しての対応指導が中心になります。カウンセラーが、遊戯療法といってお子さんと一緒に遊んだり、親御さんに対しては、お子さんに対して「こういう対応が良いのでは」といった心理教育を行います。小学生くらいになると、本人の困っていることがはっきりしてくるので、患者本人との面談が増えますね。対話だけでは難しい時は、遊びを取り入れながらセラピーを行います。中学生以降は対話を中心に治療を進めます。また、学校不適応のお子さんたちには、デイケアの通所なども提案しています。ここでは、ゲームやインターネットに頼るのではなく、集団療法やスポーツを通して直接人との関わり方を学んでいきます。

診療時に心がけていらっしゃることはありますか?

親御さんの中には「診断名をつけられたくない」という方もいれば、「診断名がついてほっとした。今まで原因が分からず自分を責めていた」という方もいらっしゃいます。ですから、診療は診断名を告げるのではなく、「この子はこういうことに苦しんでいて、こういうことに困っているよ」と、親御さんに説明し共有するようにしています。皆さん、病名がつくとそれ一色になってしまいがちなんです。例えば、「自閉症」と診断された10人の患者さんも、皆さんそれぞれ違うんですね。その部分を明らかにし、「この子はここで立ち止まっている」と一つ一つのケースについて親御さんが納得できるように話しています。診断名だけが独り歩きしてしまわないように気をつけています。

先ほどお話にあったデイケア・ナイトケアについて教えてください。

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック4

不登校のお子さんたちに「デイケアでみんなと一緒に過ごしてみない?」とお誘いします。そういうお子さんたちは、「自分だけが学校へ行けない」と思い込んでしまう傾向があります。ここに来ることで「自分以外にも仲間がいる」ということがわかり、社会性を身につけるトレーニングや遊び、運動、勉強を通し人との関わり持っていきます。また、以前から通っていて少し元気になっている子どもたちと一緒に行動することで、励みになったり力をもらったりできるんです。ナイトケアはもう少し大きなお子さんが多く、高校に通っていたり働いている方が夕方から来て、同じような立場の人たちと話したりする社交の場というか、大きな家族と過ごせるような場になっています。

子どもに関わる機関と連携して支援する

ご家族への支援はどのようにされているのでしょうか?

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック5

20代、30代のお母さんたちから「自分は育てられた感覚があまりない」という話をよく聞くんですね。この世代の親御さんは共働きが多くなった時代に育ったため、両親と触れ合う時間が少なく、自分がどう子育てをしたら良いのかわからないと。親御さんはまだ現役で働いており、子育てを手伝ってもらうのも難しく、お母さんが孤立してしまい、子育てについての不安や戸惑いがすごく大きいです。ですから、まずはお子さんの特徴を十分知ってもらった上で、「これからの対応を一緒に考えていきましょう」とお話しします。母親相談会といって、同じような悩みをもったお母さんたちが何人か集まり、みんなで子育ての疑問や体験を話し相談したりする会も設けていますので、興味のある方は参加してみるのもいいと思いますよ。

学校との連携も積極的にされているとお聞きしました。

親御さんから「わが子が学校生活で困っている」という相談を受けることが多いので、当院ではケースワーカーが学校へ出向き、実際にその子が教室でどんな様子なのか、授業態度はどうなのか、先生の対応はどうなのかを見せてもらい、学校側と一緒に対応を考えていきます。時には、学校からご相談を受けることもありますね。豊橋市以外の学校からの要望もあります。学校での様子を見させてもらうと、親御さんが語るお子さん、先生が語るお子さん、当院のケースワーカーが見ているお子さんの姿が違うことが多いんです。そういうことを理解した上で、お子さんと学校の間に入りつなげていくような役割をしていければと思います。

今後の目標と読者の方へのメッセージをお願いします。

大瀧和男院長 かずおメンタルクリニック6

今行っていることを今後も充実させていきたいと考えています。発達障害も体の病気と同じで、できるだけ早い段階で何らかの支援をしていくことが大事です。しかし予防という意味では、クリニックだけでできることは限られてしまうので、子どもたちを見守る立場にある方々、福祉や保健関係、教育関係、行政の方たちと一緒に支援をしていくことが大切だと感じ、講演会や勉強の場を設ける取り組みも10年以上続けています。一般の方には精神科というのは敷居が高く来院をためらっている方もいると聞きますが、そのお子さんが何に困っていてどこでつまずいているのかを早い段階で知ってもらうことが大事で、それを知り今後に生かすと考えていただき、気軽に来院してもらえると良いなと思います。

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