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倉本 恭成 院長の独自取材記事

本通くらもと心療内科

(広島市中区/立町駅)

最終更新日:2021/10/12

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科 main

広島の目抜き通りである本通商店街のビル3階に構える「本通くらもと心療内科」は、精神科・心療内科医師の倉本恭成先生が2003年に開業した。心療内科では、精神的な症状のうち軽症から中等症を対象としているそう。心の病気では、深刻化するか誰かに背中を押されないと受診したくないと考える人が多いが、倉本院長は「『ちょっとつらい』状態でも気軽に訪れることができるクリニックをめざしています。1人で悩むよりも一緒に考えませんか」と呼びかける。患者を温かく見守りながら、科学的な根拠と長年の経験に基づいた丁寧な治療を提供し続ける倉本院長に、診療方針や治療のポイントなどについて聞いた。

(取材日2020年12月4日)

患者と一緒にゴールに向かって進んでいく

開業までの経緯をお聞かせいただけますか?

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科1

愛媛大学医学部医学科卒業後、同大学医学部付属病院の、当時の神経精神医学教室で研修を受けました。神経精神医学では、精神科と神経内科の両方を学ばせていただき、現在に大きく役立っていますね。その後、広島県内のいくつかの病院で経験を積み、2003年に開業しました。当時、市内で精神科を前面に出したクリニックは数多くありましたが、院名に心療内科を掲げたクリニックは私の知る限り近辺にはありませんでした。今では心療内科を標榜するクリニックは増えつつあり、どこも多くの患者さんが来られていると聞きます。早期に市民の皆さんのニーズに応える存在であったかなと、この点は自負しています。

先生が精神科の領域に進まれたのはなぜですか?

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科2

大きく2つ理由があり、1つは治癒が期待できる疾患を扱う科だからです。まず、臓器別で考えて私が最も興味を持ったのが脳だったんです。脳に関する診療科には脳神経外科、脳神経内科、精神科などがありますが、このうち精神科は一部難しい方がおられるものの、適切な治療をすれば治癒を見込める可能性が高いんです。もう1つの理由は、意外に総合的に診る科だからです。まず内科的な視点で診て、病気がなければ精神的な領域に入る。これが基本的な診療の流れで、例えば、頭が痛いと来られたら体の状態を一通り調べて、病気が見つからなかったらようやく精神科の治療を始めるわけです。広く知っておかなければ対応ができない、そういったところも魅力に感じました。

相談として多いのが職場などでのパワーハラスメントと発達障害だそうですね。

パワハラは従来はある程度は仕方ないという風潮がありましたが、今では広く認識されるようになり、悩む患者さんも増えています。ただ、話を聞くとどちら側にも修正点があることも多く、線引きが難しいところがありますね。発達障害は特にADHDのご相談が多いです。かつては薬もなく診断をつけたら終わりという感じでしたが、現在は治療薬が開発されて社会的にも知られるようになり、ご自分でADHDではないかと受診される方が増えています。発達障害は決して悪いことではありませんが、周りの支援不足や自分自身を否定的に見ることで、落ち込んだり不登校になったり、家庭内暴力や犯罪被害につながったりして、生きづらさを感じてしまう場合があるんですね。ADHDの治療のゴールはその生きづらさを解消すること。薬ではADHDそのものを治すことはできませんので、患者さんと一緒にゴールに向かって工夫していくというスタンスで治療を進めています。

「安全で有用であること」を重視し、丁寧な診療を行う

睡眠障害については幅広く診ておられると聞きました。

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科3

睡眠障害には不眠症、睡眠相後退症候群、むずむず脚症候群などがありますが、当院ではほぼすべてを診療しています。中でも多いのは、眠れない、日中にぼんやりするといったお悩みですね。ただ、すぐに病気だと判断するのではなく、まずは話をお聞きして生活習慣の中に眠れない要因がないか探ります。要因と考えられることがあれば、生活習慣の改善から始めます。皆さん、学校や仕事など時間の枠がありますから、その枠の中でどうやって工夫しようかという相談が主になりますね。目標を決めて、薬を利用したほうがよければ使いますし、必要がなければ使わずに、お一人お一人に合わせた対応を行います。

診療方針について教えてください。

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科4

「安全で有効であること」を重視しています。治療行為によってかえって悪くなるなら治療しないほうがいいし、薬が合わなければ使わないほうがいい。まずは安全性、つまり、悪くしないことが大事だと思っています。でも、悪くはしないけれども良くもならないのも困りますから、有用性、つまり、役に立つということも重視しています。例えば、薬は使い方も大切ですが、やめ方も重要。薬を使ったけれども完全に良くなっていない、ケガならかさぶたがついているような状態で薬をやめてしまうと、また症状が出てきてしまいます。やめ方を失敗すると依存してしまうこともありますので、そうならないように根気よく丁寧にやめていくイメージですね。最初の時点でやめやすい薬を選ぶなどの工夫もしています。

診療の際、心がけているのはどんなことですか?

体の病気をきちんと診るということです。例えば、数ヵ月前から疲れて夜眠れないという若い方。仕事の時はつらいけれどもプライベートは元気だということで、一見仕事が合わないように見えますが、念のためと調べると血糖値が高かった。糖尿病だったんですね。こういった体の病気を見落とさないよう注意しています。また、間違いのない診断を心がけています。例えば、日中にだるくて眠いという方。よくよく聞くと、平日は5時間睡眠で休日は半日寝ているとおっしゃる。これは睡眠不足のサインで、間違えて病気だと判断すると当然よくありませんので、このあたりをきちんと見極めるよう努めています。

心療内科は「ちょっとつらい」ときに気軽に行ける場所

精神科と心療内科は、どのような違いがあるとお考えですか。

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科5

私なりに説明すると、精神科は、奇異な言動を取ったり入院が必要になったり、日常生活への支障が1年半以上続く場合など、重症を中心に診る科。心療内科は、調子が悪くても普通に話ができるし、一時的に休職しても入院までは必要がなく、日常生活への支障も1年半を超えることはないくらいの軽症から中等症を中心に診る科になります。つまり、「ちょっとつらい」という程度で受診していいのが心療内科と考えています。例えば、乗り物酔いの場合、酔い止めを使って楽になるなら薬を使えばいいし、病院に行くのもいいと思うんです。それと同じで、少しでもつらいことがあったら心療内科に来ていただければいいし、必要があれば薬も使えばいい。心療内科は、皆さんが思われるよりもっと気楽に来ていただいていいところなんですよ。

印象深い患者さんとのエピソードはありますか?

倉本恭成院長 本通くらもと心療内科6

心身の具合が悪く、将来に絶望していた女性の患者さんがおられたのですが、治療を終えた後、ある時街で偶然お会いして、「おかげさまでその後結婚して子どももできました。お世話になりました」と、ご自分から声をかけてくださったんですよ。精神科や心療内科への理解は深まってきているものの、偏見を持つ方もおられますので、私は患者さんに街でお会いしても声をかけることはしません。でも、その方は進んで声をかけてくださって、しかもお幸せそうで、良かったなと心から思いましたね。

読者へのメッセージをお願いします。

広島の多くの精神科や心療内科のクリニックは、仲が良く連携もしています。ご自分に合わなければ紹介状をお書きしますので、どこでも気楽に受診していただいたらと思います。医師が気を悪くすると思って紹介状なしに別のところに行かれる方もおられますが、そうすると、それまでに積み重ねてきた情報がゼロになってしまいます。「こんな治療をしたけれどもうまくいかなかった」という情報も、実はとても大事。次はその情報をもとに違う治療法を試してみればいいんです。ご本人がいいと思われるところで元気になってもらえたらと思いますね。当院は初診の方は受付時間内ならいつでも受診していただけます。少しでもつらい、苦しいと思われたら、遠慮なくお越しくださいね。

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