沖田 英明 院長の独自取材記事
おきた内科クリニック
(広島市安佐北区/安芸矢口駅)
最終更新日:2025/03/24

安佐北区の県道37号線沿いにある「おきた内科クリニック」。丸みのある建物は通りからも目を引く。胃や大腸の内視鏡検査を早くから導入するほか、西洋医学と並び東洋医学も診療に取り入れているのが特徴だ。院長の沖田英明先生は、高校生の時にテレビで見た東洋医学の鍼治療から、東洋医学と西洋医学を併用する和漢診療に興味を持ち、富山医科薬科大学でその分野を専門的に学んだというドクター。2001年に開業してからは、西洋医学の治療以外に、漢方薬による治療にも取り組み、「西洋医学と東洋医学はそれぞれ長所が異なり、症状によって使い分けています」と話す。クリニックではAI技術の活用にも重点を置き、AI機能を搭載したさまざまな先進の機器を導入している。沖田院長に、力を入れている診療ついて話を聞いた。
(取材日2025年1月28日)
西洋医学と東洋医学の両方を取り入れる
富山医科薬科大学(現・富山大学)のご卒業ですが、地元広島から離れ遠方の大学に進まれたのですね。

もともとは物理学を専攻したいと考えていたのですが、高校生の時にテレビのニュースで鍼灸を知り、その内容に驚き鍼灸など和漢診療を学びたいと思うようになりました。その当時、富山医科薬科大学は、和漢診療を学べる国立大学だったんです。富山という土地柄も、薬に関して古い歴史があり、大学にはいろいろな種類の薬草畑もありました。そういった環境で和漢診療を本格的に学びたいと思い、富山医科薬科大学に進学しました。
その後は富山赤十字病院、大学附属病院を経て、地域のクリニックへ。
富山赤十字病院では消化器内科に所属し内視鏡検査や治療の技術を磨き、富山大学附属病院では循環器から血液、肝臓、消化器などの内科疾患の専門的治療に携わりました。大きな病院にいると、検査を経て体の異常がある程度明らかになった患者さんを診ることが多いんです。ところが、患者さんが最初に受診するかかりつけのクリニックでは、そうではありませんよね。なんとなく体調が悪いといったはっきりしない不調や違和感を抱えた患者さんが来院され、診療ではその原因を探ることから始まります。私は開業することが目的でしたから、患者さんが最初に訪れる地域のクリニックで経験を積みたいと思いました。大学附属病院を離れて近畿エリアのクリニックに勤務し、その後高齢者中心の病院で副院長を務めた後、2001年に地元広島で開業しました。
開業して西洋と東洋の両方の医学を実践されていますが、どういった観点で使い分けされていますか。

西洋医学は構造と機能が1対1に対応しているんです。こういう症状がある人はここが悪い、といったように、生理学、病理学、解剖学の知識をもとに症状を分析していきます。痛みや症状を素早くすっきり解消が期待できるのは、西洋医学のほうが適しています。それに対し、東洋医学は1対1の対応関係がはっきりせず、何かわからない症状のときに合致する場合があるんです。検査をして何も異常は出てこないのに咳が続いたり、頭痛が続いたり、足が冷える、なんとなく体がだるいなど、そういった場合には漢方薬を処方することが多いですね。そのほかに、風邪の初期症状にも漢方薬を処方しています。
AIを活用した内視鏡検査や姿勢分析に重点を置く
診療のポリシーを教えてください。

内科のかかりつけ医として生活習慣病の患者さんに向き合い、健康寿命の延伸と、患者さんの自立を支えていきたいですね。統計によると健康寿命は実際の寿命より10年ぐらい短かいんですが、高齢の方の寝たきりの時間をできるだけ少なくしていきたいです。そのためにリハビリテーションや姿勢の改善に力を入れています。患者さんの姿勢を撮影した画像をAIで解析すると、どこの筋肉が落ちているか、弱っているかを明らかにできるんです。AIにより足りない筋肉を鍛えるのに必要な運動メニューもデータとして出てくるので、患者さんには自宅でリハビリテーションに取り組んでもらっています。
内視鏡検査にもAIを活用されているそうですね。
胃と大腸の内視鏡検査は、クリニックではまだ珍しかった20年以上前から取り組んでいますが、AIシステムを取り入れることで期待できる部分は大きいですね。AIが病変を自動検知する際、多少過敏過ぎるところもありますが、人間の目で見つけにくい病変を発見するのには有用だと考えています。当院では内視鏡の検査は胃カメラだと5分から10分くらい、大腸カメラだと20分から30分くらい時間をかけて行っています。検査に来られている方は、健康診断で内視鏡検査を言われた方や、胃が痛い、重い、食欲がないと感じた方。大腸だと、便に血が混じる、便が細くなった、下痢と便秘を繰り返している方などがいらっしゃいます。胃がん、大腸がんの早期発見と予防のほか、大腸では潰瘍性大腸炎やクローン病が隠れている場合もありますから、症状のある方は検査をおすすめします。
内視鏡検査に踏み出せない方も多いのではと思います。

海外では大腸の内視鏡検査を全国民が受けるように国が補助をするところもあります。日本ではまだ、そこまで踏み込んだ取り組みはなされていないですが、40代を過ぎたら1回は内視鏡検査を行うのがいいと思いますね。当院の内視鏡検査では、鎮静剤を使っています。鎮静剤を使うと、ちょうど電車やバスの中でうとうとするような感覚になり、眠りに入った状態で検査を行います。検査が終わると、ぱっと目覚めやすく、鎮静剤は短時間でどんどん代謝されていきますから、うとうとが残っている感じはしないと思います。まずは恐怖心を除いて、検査の相談に来ていただきたいですね。
健康寿命を延ばす鍵となるのは筋肉
SNSでの予約ができるそうですね。

新型コロナウイルス感染症が流行したことをきっかけに、感染を少しでも防ぐために予約制にしました。問診もウェブサイトに記入してもらうようにしましたし、診療や内視鏡の予約はウェブサイトとSNSの両方からできるようにしています。今は60代以上の方でもSNSを使っている方は多いですね。お孫さんとのやりとりをSNSでされているらしく、使い慣れていらっしゃるようです。
今後の展望をお聞かせください。
これから社会はますます高齢化が進みますので、高齢者を支える医療を提供していきたいですね。まずめざしているのは健康寿命を延ばすことです。そのためには「貯筋」ですね。早い時期から筋肉を維持することを大事にしていただきたいです。例えば背中が曲がってしまうことも、骨だけの問題ではなく、筋肉が落ちている証拠なんですね。背中が曲がり前かがみの姿勢になると転びやすくなるほか、筋力が落ちるせいでお風呂から自力で出られなくなる人もいるなど、生活にさまざまな支障が出てきます。毎週筋力トレーニングを行っている患者さんは、背筋もしっかり伸びて、80代の方でも、60代ぐらいに見える方もいらっしゃいます。一旦筋肉が落ちてしまうと、体を動かすことがきつく疲れやすくなるので、早めに70歳前後ぐらいから、筋力トレーニングを行ってもらうといいと思いますね。
最後にメッセージをお願いします。

当院は明確なビジョンをもって患者さんの治療に臨んでいます。「かかりつけ医」として生活習慣病の検査や治療、予防に取り組むなかで、血液検査結果の改善だけでなく、合併症の予防として動脈硬化の予防、改善をめざします。こういった治療を通して、皆さまの健康寿命を少しでも延伸できればと思っております。また、内視鏡検査においても、誰もが快適に受けられるような苦痛の少ない検査を実施し、胃がんや大腸がんの早期発見、予防に努めてまいります。その他、関節の痛みを生じる疾患についても、先進の医療とともに和漢薬治療を駆使して治療を行い、疼痛で悩まれている方を少しでも痛みから解放できればと思っております。先進の医療とこれまでの経験で、どんなお悩みにも応えたいと思っていますので何か困っていることがあればご相談ください。